周産期・小児・生殖医療におけるHIV感染対策に関する集学的研究

文献情報

文献番号
200629013A
報告書区分
総括
研究課題名
周産期・小児・生殖医療におけるHIV感染対策に関する集学的研究
課題番号
H18-エイズ-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
稲葉 憲之(獨協医科大学 大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 和田 裕一(国立病院機構仙台医療センター 総合育成部)
  • 喜多 恒和(防衛医科大学校病院 産婦人科)
  • 外川 正生(大阪市立総合医療センター 小児科兼小児救急科)
  • 塚原 優己(国立成育医療センター 周産期診療部産科)
  • 名取 道也(国立成育医療センター 副院長)
  • 大島 教子(獨協医科大学 産科婦人科学教室)
  • 田中 憲一(新潟大学教育研究院医歯学系 産科婦人科学教室)
  • 五味淵 秀人(国立国際医療センター 産婦人科)
  • 牛島 廣治(東京大学大学院医学系研究科 国際保健学専攻発達医科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
80,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV母子感染対策の構築、感染妊婦・褥婦・出生児のQOL向上、感染夫妻における安全な生殖医療の提供、胎内感染メカニズムの解明を目指すと共に、研究成果公開の推進、を目的とした。
研究方法
周産・小児医療領域:全国の産科及び小児科施設にアンケート調査と後方視的追跡調査を行い、妊婦HIVスクリーニング実施率、陽性妊婦・児の予後、ART・分娩様式、母子感染率などを調査、社会医学領域:感染妊婦・褥婦・出生児のQOL向上を目指して、母乳哺育と経膣分娩の実現を検討、生殖医療領域:陽性男性・陰性女性間における安全な生殖補助療法の改善に努めると共に感染女性の「妊娠・挙児」に対する当事者及び医療従事者の意識調査を実施、基礎研究領域:胎盤絨毛細胞におけるHIV感染の有無を分子病理学的に検索し、得られた研究成果は広報・啓発・教育活動により広く国民に公開する。
結果と考察
 妊婦HIVスクリーニング率は95%を超え、(病院)、新たな感染妊婦は日本国籍を中心に漸増しているが、妊婦へのART及び選択的帝切により母子感染率は0.5%に止まることや適切な治療により4歳を超えて病状が安定している感染児の増加などが判明し、「先ず、スクリーニングありき」という班是を支持する結果が得られた。また、酸化チタン処理・直径8μmフィルター付き特殊搾乳瓶の開発と頸管粘液におけるHIV量測定により母乳哺育と経膣分娩の実現化、ひいては感染妊婦・出生児のQOL向上と医療経済効果の改善が示唆された。更に、HIV陽性男性・陰性女性夫婦におけるHIV除去精子による体外受精・胚移植は累積55症例、妊娠成立率67%に達し、安全性が担保されつつある。20代感染女性の半数以上が挙児希望、エイズ拠点病院の63%強がそれを支持する結果も得られた。基礎研究領域では陣痛による胎盤バリアーの破綻以外に胎盤感染による母子感染の可能性が示唆された。以上の結果は研究成果発表会、学会報告、論文、新聞・雑誌・テレビ等のマスコミにより国民に公開され、医療者向けマニュアルの第4版改訂に反映された。
結論
HIV母子感染対策は全妊婦HIVスクリーニングと「教育」が最高のワクチンである。感染妊婦、夫、出生児のQOL向上の観点より二次感染無しの生殖医療の提供、経膣分娩選択基準の設定と母乳哺育の実現化に一定の成果を残した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-12-14
更新日
-