文献情報
文献番号
200629012A
報告書区分
総括
研究課題名
血友病の治療とその合併症の克服に関する研究
課題番号
H18-エイズ-一般-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
坂田 洋一(自治医科大学医学部分子病態治療研究センター分子病態研究部)
研究分担者(所属機関)
- 小澤 敬也(自治医科大学医学部分子病態治療研究センター遺伝子治療研究部)
- 吉岡 章(奈良県立医科大学小児科学教室)
- 小林 英司(自治医科大学医学部分子病態治療研究センター臓器置換研究部)
- 長谷川 護(ディナベック株式会社)
- 天野 景裕(東京医科大学臨床検査医学講座)
- 小田原 隆(東京大学医科学研究所附属病院感染免疫内科)
- 瀧 正志(聖マリアンナ医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
70,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
血友病は凝固第VIII、(FVIII)或いはIX因子(FIX)遺伝子異常による先天性出血性疾患である。患者QOL向上を目指して、治癒をもたらし、製剤使用量を激減させて経済効果も期待できる遺伝子治療と、血友病インヒビタ対策と、血友病における社会的諸問題の調査を目的に研究を展開した。
研究方法
体内直接投与治療遺伝子搭載ウイルスベクターとしてアデノ随伴ウイルスベクター(AAVV)を、体外で幹細胞に遺伝子を導入し、再移植する場合には染色体特定領域に組み込み可能なAAV-Rep遺伝子或いはサルレンチウイルスベクター(SIVV)を用いた。染色体組み込みに対する安全性をインシュレーター導入で検討した。マウスで基礎的検討を繰り返し、成果をサルで確認するという方針で進めた。研究は、各大学の動物実験指針規定に従い、文科省・厚労省告示の倫理指針を遵守して施行した。探索的検討として、相同組み換えや、ES細胞利用と血友病ブタ作製の基礎実験を進めた。
結果と考察
マウスでは、治療レベル血友病因子の長期発現が免疫抑制剤なしで可能になった。サルでは、FIX cDNAをAAV1Vで筋肉に、或いはAAV9Vで肝臓に投与し、治療レベル因子発現が長期間観察されている。治療効率を上げるには、既存の抗AAV抗体への対処が重要である。血小板にGPIb プロモータを利用してFVIIIを発現させ、出血部位へ運搬させることは、理に適っている。活性化に伴い因子が放出され、凝固時間を短縮し、血友病マウスの出血抑制に効果的でありインヒビタの影響も受けにくいことが示唆された。インシュレータ組み込みは、一定の機能を果たすことが確認され安全性も一歩前進した。胸腺組織へのFVIII暴露で抗原特異的免疫寛容が誘導され、Th1応答性低下とFVIII特異的制御性T細胞誘導が確認された。調査研究案が完成した。ウエブ利用などを通して、質を高めていく必要がある。
結論
遺伝子治療技術はマウスレベルでは確立出来た。安全性確保のための基礎的実験はなお必要である。サルを用いた前臨床試験の充実がヒト臨床応用開始に不可欠であるが、克服は時間の問題である。患者QOL向上のための調査研究も一歩を踏み出した。
公開日・更新日
公開日
2007-04-10
更新日
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