ヒト人工染色体ベクターを用いた血友病の新遺伝子治療法の開発

文献情報

文献番号
200629011A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト人工染色体ベクターを用いた血友病の新遺伝子治療法の開発
課題番号
H18-エイズ-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
押村 光雄(鳥取大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 谷口 英樹(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 落谷 孝広(国立がんセンター研究所)
  • 香月 康宏(鳥取大学大学院医学系研究科 )
  • 井上 敏昭(鳥取大学医学部)
  • 加藤 基伸(鳥取大学医学部)
  • 武谷 浩之(鳥取大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々はヒト人工染色体(HAC: Human Artificial Chromosome)ベクターの開発に成功した。カセット方式で遺伝子導入できるこのベクターは自律複製する極小染色体であるがゆえ遺伝子搭載サイズに制限なく、またベクターと名のつくとおりあらゆる細胞に移入することが可能である。このHACベクターの利点を生かし、持続的改善と患者の経済的肉体的負担の大幅軽減をもたらす血友病治療法をマウスで検証する。それはFactor VIII発現ユニット多コピーをHACに搭載し、自己間葉系幹細胞及び皮膚線維芽細胞に導入、皮下移植するという最少数自己移植細胞による補充療法である。 
研究方法
HACの利点を生かした血友病の安全な遺伝子治療を目指し、Factor VIII cDNAを多数タンデムにHACベクター上に搭載し、ヒト間葉系幹細胞及び皮膚由来線維芽細胞に導入し高効率発現システムを構築する。モデル系としてこれをマウス皮下に移植し、発現を定量化し、最少数の移植細胞による長期補充療法を検証する。さらにクラニアルウインドウ法にてリアルタイムで細胞生着のプロセス、細胞動態、Factor VIIIの分泌動態を長期にわたり解析し、安全性・機能性を評価する。
結果と考察
本年度はFactor VIII cDNAを1-4コピー搭載した人工染色体の構築をCHO細胞内で行った。染色体解析の結果、これらHACは独立したミニ染色体として安定に保持されていた。これらの細胞クローンではFactor VIIIのコピー数依存的な発現、そしてクローンに寄らない均一な発現を確認できた。これらの細胞は今後間葉系幹細胞、線維芽細胞へ微小核融合法でHAC移入するためのドナーとして利用できる。
安全性評価のための系であるクラニアルウインドウ(透明窓)法についてはヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)とマウス間葉系前駆細胞株(C3H10T1/2)をコラーゲンゲル中で共培養した後、NOD/scidマウス頭部のクラニアルウインドウへ移植することにより、レシピエント側血流を伴った血管ネットワーク構造の再構成が可能であることを確認した。


結論
多コピーの発現ユニットを搭載でき、ミニ染色体として安定に保持され、安定した発現を保障するというHACの特性が十分に生かされたと言え、予想通りの結果が得られていると言える。血友病の新規治療法としてのHACの将来的な利用に目処がつき、次年度の研究(構築したHACの間葉系幹細胞への移入、皮下移植、効果と安全性の検証)に向けての準備が整った。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
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