文献情報
文献番号
199700224A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における保健医療福祉の連携に関する研究 -ターミナルがん患者の在宅を例として-
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 直幸(神奈川県立がんセンター)
研究分担者(所属機関)
- 馬嶋正剛(神奈川県医師会)
- 玉地任子(ゆめクリニック)
- 山下浩介(神奈川県立がんセンター)
- 村上賢二(厚木保健福祉事務所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 保健医療福祉地域総合調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
4,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
人口の老齢化に伴い「がん」患者の急激な増加が問題視されている。しかし、その適切な対応策や解決方法は未だなく、とくにターミナルの場合はがん治療施設のベッド数の限界と患者のQOLの観点から、自宅でのケアの必要性が叫ばれている。しかし、がんの場合、現状では適切なシステムがないため、われわれは需要供給調査を行い、適切なシステムの構築を試みた。
研究方法
神奈川県医師会の協力を得て、県内の全病院ならびに看護部(356施設)、内科あるいは外科を標榜する診療所(2,589施設)の計2,945施設、平成7年末以前の開設の訪問看護ステーション35施設に対し、在宅ケアに関するアンケートを平成9年3月中旬に発送し、同年5月末日まで回収を行った。アンケートの内容は、「在宅医療」実施の有無、対象疾患(ターミナルの場合)、スタッフ(医師、看護婦、その他)、医療処置の内容、訪問看護ステーションへの指示の有無、紹介する日常支援サービスの内容、指示の医療内容、他の施設との協力関係、今後の在宅医療の可能性について質問を行った。
結果と考察
アンケートの回収は病院39.9%(142施設)うち在宅医療実施病院の看護部66施設、診療所40.3%(1,043施設)、訪問看護ステーション77.1%(27施設)であった。病院、診療所の回収率が低かったのは精神病院が含まれていることと、企業開設の健康管理センターや精神科/整形外科などのクリニックが含まれていたためと思われる。在宅医療の実施施設は病院48.6%(69施設)、診療所41.3%(431施設)、訪問看護ステーション(以下、訪ステと称す)への指示は病院47.9%(68施設)、診療所43.4(453施設)であった。いずれも未実施は病院30.3%、診療所46.0%であった。在宅診療の依頼は病院では「主治医の判断」が88.2%ともっとも高く、診療所では「家族からの依頼」が80.8%もっとも高かった。訪ステへの指示は、診療所の場合同系列の訪ステへの指示が36.4%ともっとも多く、病院ではいずれの訪ステへも指示が44.9%でった。また、在宅医療を実施している病院の看護部に対するアンケートより43施設(65.2%)が24時間対応をしており、60%が訪ステや市町村、保健所、社会福祉協議会等との連携を行っていた。また、在宅医療の対象患者にがん患者を含んでいる施設が74.2%であった。訪ステの調査からは、1施設を除く全施設ががん患者も対象としており、年平均50人、月平均4.2人の訪問を実施していることが判った。訪ステで医師よりの指示があれば可能である処置については、「気管カニューレの交換」「持続皮下注入ポンプ管理」「CAPD管理」について10施設(37%)が可能とした以外は、ほとんどの処置が可能という回答であった。
以上の結果より、約半数の医療施設でがん患者やターミナル期の患者の対応が可能であること、また、医師の指示があればほとんどの訪ステで医療処置が可能であることも示された。さらに、在宅医療実施の病院の看護部や訪ステでは、他の保健、医療、福祉関連の施設が提供する在宅サービスをがん患者に紹介していることから、今後の在宅ケアシステムの確立に関して、充分な支援体制がとれるものと思われた。
以上の結果より、約半数の医療施設でがん患者やターミナル期の患者の対応が可能であること、また、医師の指示があればほとんどの訪ステで医療処置が可能であることも示された。さらに、在宅医療実施の病院の看護部や訪ステでは、他の保健、医療、福祉関連の施設が提供する在宅サービスをがん患者に紹介していることから、今後の在宅ケアシステムの確立に関して、充分な支援体制がとれるものと思われた。
結論
本調査により、がん患者の在宅支援の方法として1つのシステムが有るのではなく、少なくとも5つのケアシステムが考えられた。
1.現在、高齢者や寝たきりの老人を対象として稼働している医師会を中心とした診療所 グループの場合
2.在宅医療専門の医師が単独で実施する場合
3.訪問医療セクションを有する病院の場合
4.訪問看護ステーションに依頼する病院の場合
5.専門病院より紹介元医療機関やかかりつけ医へ移行する場合
いずれの場合も、それぞれの特徴を有しており、適切な在宅ケアのシステムと考えられ、このシステムに保健、福祉を組み合わせることにより、がん患者のQOL向上を目指した在宅ケアが提供できると思われる。このシステムの適切な運用のためには、MSWや訪問看護ステーションの管理者などコーディネートできる人材の確保が重要である思われた。
1.現在、高齢者や寝たきりの老人を対象として稼働している医師会を中心とした診療所 グループの場合
2.在宅医療専門の医師が単独で実施する場合
3.訪問医療セクションを有する病院の場合
4.訪問看護ステーションに依頼する病院の場合
5.専門病院より紹介元医療機関やかかりつけ医へ移行する場合
いずれの場合も、それぞれの特徴を有しており、適切な在宅ケアのシステムと考えられ、このシステムに保健、福祉を組み合わせることにより、がん患者のQOL向上を目指した在宅ケアが提供できると思われる。このシステムの適切な運用のためには、MSWや訪問看護ステーションの管理者などコーディネートできる人材の確保が重要である思われた。
公開日・更新日
公開日
-
更新日
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