先進諸国におけるエイズ発生動向、調査体制、対策の分析に関する研究

文献情報

文献番号
200629004A
報告書区分
総括
研究課題名
先進諸国におけるエイズ発生動向、調査体制、対策の分析に関する研究
課題番号
H16-エイズ-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
鎌倉 光宏(慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 池上 清子(国連人口基金東京事務所)
  • 木村 和子(金沢大学大学院自然科学研究科)
  • 野内 英樹((財)結核予防会結核研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は世界の先進諸国の発生動向、動向調査、調査体制について、その特徴や過去の経緯・教訓を明らかにすること、さらに実施された対策とその後の発生動向との関連を可能な限り探り、わが国における効果的かつ効率的な動向調査体制の確立と対策の立案および今後の施策に資することを目的とする。
研究方法
(1)先進諸国におけるHIV/AIDSの発生動向の研究を国際機関および各国の発生動向報告書、websiteの情報等を活用し、疫学の細分化のレベル、患者・感染者の属性の分類、報告継続期間等に注意して、比較対照の際の信頼性についても検討を行った。
(2)先進諸国における感染経路別の対策と評価の研究に関して、各種施策集団ごとの対策とその評価を行った。平成18年度は、カナダ・ドイツ・オーストラリアの事例をもとに、若年者・MSM・薬物使用者・移民等に対するエイズ対策を検討した。
結果と考察
本年度対象としたカナダの事例では、HIV/AIDSが長期的課題として認識された時点で、HIV/AIDS戦略に対する連邦政府予算は年間予算から長期予算へと移行され、政府の各省庁と各機関による国際イニシアティブにも予算が割り当てられていた。様々なパートナーの取り組みに協調し、有効な協働方法を構築して得た同国の教訓は他諸国にも有益な手引きとなるであろう。ドイツでは連邦政府が過去約20年間にわたってHIV予防キャンペーンを継続的に実施しており、保健省の直下にHIV予防専門機関を設置し、政府のHIV予防活動指針とその理念を明確に打ち出すことによって対策を実施している。オーストラリアの予防対策に大きな貢献をしたのはMSM団体を主とする市民団体であり、対策の牽引力として大きく機能している。
結論
カナダの効果的な予防対策は社会の性質や課題と評価の継続の強調に取り組める包括的で参加型の構造、コミュニティと政府代表者と市民に広く影響を与える報告書を生産した結果だと考えられる。ドイツにおけるHIV予防キャンペーン実施の最大の特徴は各州政府や国内の医療機関、民間営利団体および非営利団体などとの協力関係であり、これは政府予算を抑える効果だけでなく、地域社会における予防教育活動の活性化をももたらしているものと考えられ、日本における予防活動への参考となる。オーストラリアでは、地域レベルで常に地道に、確実に、HIV予防活動やエイズ教育、またPLWHAへの支援活動が行われてきたことがエイズ対策が一定の効果をこれまで現してきた大きな要因だと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200629004B
報告書区分
総合
研究課題名
先進諸国におけるエイズ発生動向、調査体制、対策の分析に関する研究
課題番号
H16-エイズ-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
鎌倉 光宏(慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 池上 清子(国連人口基金東京事務所)
  • 木村 和子(金沢大学大学院自然科学研究科)
  • 野内 英樹((財)結核予防会結核研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は先進諸国のHIV/AIDS発生動向とその調査体制および対策について情報を収集・分析し、その特徴や教訓を明らかにすること、さらに実施された対策とその後の発生動向との関連を探り、わが国の今後の施策に資することを目的とした。
研究方法
(1)先進諸国におけるHIV/AIDSの発生動向の研究を国際機関および各国の発生動向報告書、websiteの情報等を活用し、とくに1980年代中期以降のHIV/AIDSの発生動向を比較検討することによってその変遷に注目した分析を行った。先進諸国間でも得られる疫学の細分化のレベル、患者・感染者の属性の分類、報告継続期間等がかなり異なるので、比較対照の際の信頼性についても検討を行った。
(2)先進諸国における感染経路別の対策と評価の研究に関して、各種施策集団ごとの対策とその評価を行った。その効果評価についての判定指標について情報を集積し、成功事例と不成功事例の検討・分析を行った。
結果と考察
先進諸国間においてもサーベイランス体制、とくにHIV感染者に対する報告制度・サーベイランスにはかなりの質的相違があり、それぞれが必ずしも有効に機能しているとは限らず、また捕捉率に関するデータも十分ではない。わが国のサーベイランスのシステム上の大きな問題は病変とくにAIDS死亡に関するデータが不足しており、薬剤の客観的な治療効果判定を行うことが不可能である点である。届出事項については、生年月日など人権・守秘を配慮した個人識別指標の導入が今後の疫学情報の質を確保するために必要であるものと考えられる。多くの先進国ではリスク行動に関しての情報が時系列で得られ、行動の変化に応じて適切な介入をタイミングよく実施することや、その後の変化を明らかにすることが一定の水準で可能であった。わが国においても体系的な情報を入手し、より効果的な対策を推進し、それを評価するための行動サーベイランスの仕組みを設立する必要性が高いと考えられる。
結論
多くの対策事例の分析から、今後わが国においては(1)地域/コミュニティの現実を重視した敏感な対策、計画立案・予算計上の脱中央集権化、地域/コミュニティでの対策立案・実施・モニタリングに対する技術・財政支援(2)国家の役割の明確化:種々の対策のより効果的な調整、AIDS対策の強化、根拠に基づく資金提供、脱中央集権化、公衆衛生セクターを越えた政府機関、地方自治体、NGOの動員 (3)サーベイランス・システムを通じた正確かつ適切な情報収集・分析の継続および、感染の社会・経済・文化的な側面に対する調査、などが求められるものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200629004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
cross-sectional studyの結果も含め先進諸国のHIV/AIDS発生動向、調査体制、対策を分析し、わが国への応用適応が可能な幾つかの具体的改善項目を指摘し、わが国で得られる疫学指標の限界と改良すべき点についても各機関からの質問に応じ、提言を行った。 先進国のサーべイランスシステム等の相互比較を行った研究は少なく、本研究の成果は先進国を対象としてその各種予防対策の相互補完の資料としての活用が期待される。
臨床的観点からの成果
臨床に直結した研究ではないが、初診において指標疾患を有し感染者との診断を受けることがなく最初からAIDS患者として診断される症例について、諸先進国の登録システム、発生状況を整理・分析し、国内の状況との比較を行った。また、サーベイランスシステムの届出内容との比較を行い、その特徴と限界を示した。
ガイドライン等の開発
課題の性質上、ガイドランの開発に直接結び付くものはないが、今後の施行細則などに参考となる内容を含んでいる。
その他行政的観点からの成果
世界の先進諸国のサーベイランスシステム、特に個人識別指標に関する資料を作成し、法改正に係わる基礎的データを提出した。
その他のインパクト
エイズ予防財団等を通じて研究所、新聞社からの問い合わせに応じ、資料を提供した。世界のHIV/AIDSの現況に関わる質問が多く、先進国の中でわが国が置かれている状況の分析も求められ、報告書内容の一部を提供した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
24件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kamakura M. in MAP Network
A comprehensive alysis of the AIDS epidemics in Asia
AIDS in Asia, Face the Facts , 1-129  (2004)
原著論文2
Kamakura M. in MAP Network
Male-Male Sex and HIV/AIDS in Asia
MAP Report 205 , 1-20  (2005)
原著論文3
Kamakura M. in MAP Network
Drug Injection and HIV/AIDS in Asi
MAP Report 205 , 1-18  (2005)
原著論文4
Kamakura M. in MAP Network
Sex Work and HIV/AIDS in Asi
MAP Report 205 , 1-22  (2005)
原著論文5
山川朋子、木村和子、小野俊介 他
石川県の病院・診療所におけるHIV抗体検査 の実態と初期対応
日本エイズ学会誌 , 8 (3) , 163-168  (2006)
原著論文6
本間隆之、田邉貴幸、木村和子 他
エイズ診療拠点病院に勤務す る薬剤師の意識調査
日本エイズ学会誌 , 8 (4) , 342-343  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-