文献情報
文献番号
200629002A
報告書区分
総括
研究課題名
新作用機序の抗HIV-1薬剤の開発に関する研究
課題番号
H16-エイズ-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 誠治(熊本大学 エイズ学研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 鈴 伸也(熊本大学 エイズ学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、薬剤耐性HIV-1の克服を目標とし、重要な病原性因子の一つであるNef蛋白によってエイズ発症に至る分子機序を解明し、その作用点特異的な新たな作用機序を持つ抗HIV-1薬の開発を目指す事である。
研究方法
1)単球系細胞株TF-1とTF-1-fmsにエストロジェン受容体と融合させたNef蛋白質を発現させた安定細胞株を合成エストロジェン4-HTで活性化を誘導して単球・マクロファージの生物活性へとM-CSF及びGM-CSFを介したシグナル伝達に及ぼす影響をフローサイトメトリー、免疫沈降法等を用いて解析した。また、293T細胞にM-CSFR, Nef, Hckを遺伝子導入し、その作用をウエスタンブロット法と免疫染色により解析した。2)TF-1-fms-Nef-ER細胞の増殖を指標にNefの機能阻害作用を有する物質のスクリーニングを行った。3)免疫不全マウスにヒト臍帯血由来の単核球または造血幹細胞の移植を行った。構築の有無は、フローサイトメトリーと免疫組織染色により解析した。更に作製したマウスにHIV-1の感染実験を行った。
結果と考察
1)Nefの活性化によりマクロファージのM-CSF受容体を介したシグナル伝達系の抑制が認められた。その分子機序とのひとつとしてNefがERK活性化を修飾することを証明した。また、Nefが存在するとM-CSF受容体は、ゴルジ体において成熟が障害されて細胞表面に行きにくくなることが判明した。2)Nefの機能阻害作用を有する物質のスクリーニングにより、数種類の候補物質を同定した。その一部には、HckとNefの結合阻害作用があることを証明した。これらの物質は、Nefを標的とした新規薬剤のリードとして期待できる。3)帯血単核球を移植したNOD/Scid/Jak-3欠損マウスにおいて、ヒトT細胞の増殖とHIV-1の記憶CD4陽性T細胞とCD4を発現する活性化CD8陽性T細胞への感染が認められた。NOD/Scid/Jak-欠欠損マウスにヒト造血幹細胞を移植したところ、T細胞を含めたヒト免疫系細胞の構築が認められ、更にこのマウスへのHIV-1の感染成立を確認した。
結論
Nefを標的とした新作用機序の抗HIV-1薬の開発とHIV-1モデルマウスの薬剤開発への応用が期待できる。
公開日・更新日
公開日
2007-04-18
更新日
-