インタ-ネットを利用した地域医療福祉サービスに関する研究ーてんかんの外科治療をモデルとしてー     

文献情報

文献番号
199700223A
報告書区分
総括
研究課題名
インタ-ネットを利用した地域医療福祉サービスに関する研究ーてんかんの外科治療をモデルとしてー     
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
大槻 泰介(国立療養所宮城病院)
研究分担者(所属機関)
  • 飯沼一宇(東北大学医学部小児科教授)
  • 佐藤光源(東北大学医学部精神科)
  • 岩崎祐三(国療宮城病院)
  • 伊東宗行(国療釜石病院)
  • 木村格(国療山形病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 保健医療福祉地域総合調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治てんかんの診療のような専門性が高い一方で経済効率の低い医療分野においては、公的なセンターを地域ごとに設立し集中的な診療をおこなう必要がある。しかし現実には、各地域に疾患別の専門施設を設立することは経済的に困難であり、そこで散在する既存の医療資源をいかに効果的に利用するかの方策を考える必要性が生ずる。
本研究は、散在する人的及び物的資源を統合し、専門性の高い医療サービスを広い地域において実現させることを目的として、インターネット通信網を利用して東北地方の各てんかん診療施設と専門医を結ぶことにより、「仮想の高次てんかんセンター」の構築を試みる。
研究方法
1)てんかん治療ネットワークの整備と拡充:これまで東北地方の国立療養所を中心として整備してきたてんかん診療支援ネットワーク「みちのくてんかん治療懇話会」を母体とし、更に大学及び民間のてんかん診療施設の参加をつのりネットワークの拡充を行う。2)インターネットを通じた医療福祉情報の交換:インターネット上に専用のホームページを開催し、各施設がこのホームページを利用することにより、「仮想の高次てんかんセンター」の構築を試みる。この仮想てんかんセンターでは、発作ビデオ、脳波、医用画像、病理などの医用情報のマルチメディア通信を可能とし、コンピュ-タ-上で症例検討会議を開催することにより、難治例の診断や、外科治療を要する患者の選択などの診療援助をおこなう。また患者の社会復帰や生活援助を支援するための情報を提供し、一般診療所、患者及び患者家族も利用できる総合医療情報システムの開発をおこなう。
結果と考察
1)東北6県の国立療養所を中心としたてんかん診療支援組織「みちのくてんかん治療懇話会」(平成7年発足・事務局国療宮城病院脳神経外科)を母体とし、インターネットを用いたてんかん診療網「みちのくてんかん治療ネットワーク」を開催した。またこの「みちのくてんかん治療ネットワーク」の構成施設の拡充をおこなった。現在の参加施設は、国療岩木、国療釜石、国療秋田、国療岩手、国療南花巻、国療山形、国療米沢、国療宮城に加え、東北大学小児科、東北大学精神科、弘前大学小児科、弘前大学精神科、宮城県立拓桃医療センター小児科、てんかん専門病院ベーテル、星ヶ丘病院てんかんセンターの15施設である。2)東北地方のてんかん診療医を対象に、インターネットを利用したてんかん診療ネットワークの必要性に関するアンケート調査を行った。対象の選択は、てんかんに関係する複数の学会及び研究会名簿から東北在住の医師を選び郵送による調査を行った。その結果、30.5%の回答率で80件の回答を得、うち88%でこのような診療ネットワークへの興味を示していることが分かった。また具体的な利用法として、最新医学情報の供給、診療上のコンサルテーション、患者福祉情報、自らの情報発信、の順に関心が高かった。3)みちのくてんかん治療ネットワークのホームページをインターネット上に開催した。(http://epinet.med.tohoku.ac.jp/)このホームページでは、各てんかん専門施設間でインターネット上で症例検討会を開催するとともに、難治例の診断や外科治療の相談、あるいは一般医より専門医への電子メールでの相談、更に患者さんへの医療福祉情報の提供がおこなえる環境を整えた。その結果、アクセス回数からみると、平成3年3月の開設当初の月38回より6月には137回、平成10年1月には231回と次第に増加してきているのが分かる。また海外からも月20ー30件のアクセスがあり、メンバーサイトの利用は月20ー50件であった。症例検討会に関しては、ホームページ上に症例を提示し、コメントをメールにて集めたが、アクセスはあるものの具体的な未だ反応は少ない状況にある。一方、Cusee-meを用いたテレビ会議を国立療養所山形病院てんかんセンターと行い症例の検討を行ったが、この方法は限られた診療施設関では極めて有効な方法と思われた。
今回我々は、診療ネットワークの形成するために、国立病院療養所、大学、民間専門診療施設及び一般診療所の医師に対し、インターネットを利用した新しい診療ネットワークの必要性を提言し、既存の診療ネットワークをいわば横断的に結んだ新たなネットワークの形成を試みた。その結果、このような診療ネットワークに対する関心は極めて高く、我々の行ったアンケート調査では、東北地方の主なてんかん診療医262名の約30%から関心ありとの郵送による回答を得ている。またその具体的利用法については、最新医学情報の供給、診療上のコンサルテーション、患者福祉情報、自らの情報発信の順で関心が高いことがわかった。
また、平成9年3月よりホームページを開設し、医療福祉情報の提供、コンサルテーシン・システムの提供、メーリングアドレスの整備、症例検討会用の掲示板の提供を行ったが、今回約1年間のアクセス回数を調査したところ、毎月順調に増加し月200件以上に達していることが分かった。メンバー間の利用状況に関しては今後更に調査検討してゆく必要があるが、関心の高い情報を提供し、利用し易い環境を整備してゆくことにより、今後更に利用回数が増加してゆく可能性があると考えられる。
従来の診療ネットワークは、主に大学医局を頂点とした直接面識のある医師同士で成り立っていたことが推測されるが、今回我々が試みている診療ネットワークは、インターネットを利用することで、そのような従来の枠組みにとらわれることなく、診療情報が自由に交換される可能性を持っていると考えられる。限られた医療資源を有効に利用するために、ネットワークを利用した専門医によるコンサルテーション・システムや症例検討は今後更に重要性を増すのではないかと考えられた。
結論
インターネット通信網を利用し、地域に散在する専門医及び専門医療施設を効果的に利用することで、専門性の高い医療サービスを広い地域において実現することが可能と考えられる。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)