インフルエンザ脳症の発症因子の解明とそれに基づく発症前診断方法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200628035A
報告書区分
総括
研究課題名
インフルエンザ脳症の発症因子の解明とそれに基づく発症前診断方法の確立に関する研究
課題番号
H18-新興-一般-006
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
森島 恒雄(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 祐輔(東京大学医科学研究所)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所 )
  • 田代 眞人(国立感染症研究所 )
  • 横田 俊平(横浜市立大学医学部)
  • 山口 清次(島根大学医学部)
  • 塩見 正司(大阪市立総合医療センター)
  • 市山 高志(山口大学医学部)
  • 木村 宏(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 宮崎 千明(福岡市立西部療育センター)
  • 長谷川 秀樹(国立感染症研究所)
  • 浅井 清文(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 伊藤 嘉規(名古屋大学医学部附属病院)
  • 二宮 伸介(岡山大学医学部・歯学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
64,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インフルエンザ脳症は、急激に意識障害が進行し、約30%が死に至る重篤な疾患であり、毎年数百例の発症がある。社会的にも大きな問題となっており、本症の発症因子の解明を通じた予防・治療法の確立が強く要請されている。
研究方法
発症因子の解明:脳症を発症した患者についてwhole genome SNPs解析を実施した。一方、マイクロアレイを用い、けいれん発症に関連する遺伝子探索を行った。遺伝子多型の機能解析:関与が疑われるSNP[X]の機能について、脳症の病態との関連について調べた。先天代謝異常症:とくに脂肪酸β酸化異常症と本症の発症の関連について解析した。病態解析:サイトカインによる血管内皮細胞の障害が、脳浮腫や神経細胞障害を急速に進行させるメカニズムの解析を進めた。
結果と考察
マイクロアレイの解析で、インフルエンザによる熱性けいれん群では、インフルエンザのみの群に比較して、22の遺伝子発現が増強し、5の遺伝子発現が減弱していた。この中には重要なものが含まれ、今後、脳症群における解析を進めていく。SNPsの解析(whole genome study )1回目(患者45名)は、SNP 「X」が非常に高い確率で検出された(7.2X10-13)。しかし、2回目(34名)では有意な結果は得られなかった。2回の合計結果では有意差は認められているが(9.9X10-7)、今後新たな患者群を対象とした3回目の解析を進め、最終結果としたい。「X」の機能解析では、細胞のサイトカイン感受性を高め、apoptosis への誘導を容易にするなどの異常が認められた。一方、脂肪酸β酸化異常症の中で、とくにカルニチン代謝の異常などがインフルエンザ脳症の約5-7%で認められ、インフルエンザ感染を契機に脳症として発症することが明らかになった。病態の解析では、脳症の血管内皮細胞の障害にTIMP-1の機能障害が関連すること、複数の炎症サイトカインの存在下でastorocyte のNOx産生が亢進し、これが神経細胞障害を惹起するなどの結果が得られた。
結論
病態解析からは、サイトカインー血管内皮細胞―神経系細胞(astrocyte など)が関連した障害機序の解明がかなり進んだ。今後さらに詳細が明らかになれば、新たな治療法の開発に結びつくと思われる。発症素因としてのSNPsの解析は、非常に重要な課題であり、慎重に検討を続けている。

公開日・更新日

公開日
2007-07-10
更新日
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