地域おける母子保健医療福祉に係る情報システムに関する研究

文献情報

文献番号
199700222A
報告書区分
総括
研究課題名
地域おける母子保健医療福祉に係る情報システムに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
石垣 恭子(佐賀医科大学医学部看護学科助教授)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 保健医療福祉地域総合調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昨年度に作成した、MS-DOS上で稼働する母子保健医療福祉に係わる情報システムの評価、考察から、ユーザーが容易にシステムを操作することのできるGUI環境の充実が必要と考えられた。このため本研究では、OSにWindowsを搭載し、画面構成等を考慮した、より操作性に優れたシステムの開発を目的とした。加えて、保健所での母子保健情報の地域間比較や、業務の等質化および合理化を目的としたシステムの開発も行なった。
研究方法
 昨年度に引き続き、佐賀県保健婦職能委員会と協議し、妊婦健康診査および乳児健康診査を中心に、母子保健事業の統一フォーマットを作成した。また、MS-DOS上で稼働する母子保健医療福祉に係わる情報システムをN町、T市、T町の3市町村に約800件の住民情報を登録し、試験稼働させた。結果、入力方法や手順、条件設定、出力項目などの充実の必要性や問題点が保健婦から挙げられた。
そのため、本システムではこれらの改善点を反映させるため、まず、昨年度作成したシステムを元にVisual Basicを使用してGUI環境の整備を行なった。また、幅広く業務に利用可能となるよう、保健婦の意見を取り入れ、個人の母子保健事業内容の一覧表やリスト出力等、出力項目を充実させた。さらに、市町村への汎用性を高めるため、各市町村で異なる予防接種対象者の集計条件を、県内6市町村において調査・比較し、集計ロジックに反映させた。
保健所で使用するシステムにおける母子保健情報の入力項目は、地域保健事業報告の内容を最優先に考慮し、決定した。
結果と考察
結果
1、システム構成
動作環境は、Windows 95またはWindows NTの対応機種。プリンタはWindows対応型が使用可能。メモリーは32MB以上(64MB以上を推奨)。ハードディスクの空き容量は100MB以上が必要である。アプリケーションは、Cache(M言語を含んだVisual データベース開発ツール)にて開発した。
2、市町村システム(Windows 化への対応)
1)メニュー構成
・ファイル:母子情報の書込、母子保健報告書システムの終了を行う。
・報告別入力:母子保健、歯科保健、健康増進、予防接種の事業を単位の入力を行う。
・個人別入力:選択された個人の母子保健情報の履歴の参照、編集、入力を行う。
・集計印刷:入力されたデータをあらかじめ決められた方法により集計印刷を行う。
・住民情報:住民情報の登録およびCSV形式にて作成された住民情報の読込みを行う。
2)入力方法
入力方法は、プルダウンメニューやチェックボタンを利用し、マウスでの入力を可能にする等、簡潔な操作で入力が進行するようにした。データは、各事業単位または個人単位での入力が可能である。これら2つは、市町村毎の保健事業実施状況に合わせて、どちらから検索しても入力できることが特徴で、集計実務が効率化されるように努めた。
3)画面構成
入力画面には、入力項目の他に機能ボタン(編集、選択など)があり、操作手順を簡潔かつ解りやすく表示した。また、個人の入力画面では、一画面に各事業毎の過去の履歴が表示され、選択された個人の事業実施状況が一目で把握できる。さらに、その個人の母子保健情報の表示、編集、新規入力のすべてが、同じ画面内にある機能ボタンの利用により進行可能である。
4)出力内容
入力したデータを集計出力する他に、個人の母子保健情報の履歴の表示、個人の実施事業内容のリスト出力を可能にした。また、CSV形式でのデータ出力を可能にし、他のソフトウェアでのデータの利用を可能にした。
4)市町村毎の条件設定
県内6市町村の予防接種対象者の集計条件を比較した結果、予防接種法の範囲内ではあるが、年齢や条件等が異なることがわかった。本システムでは、各市町村に合わせて、対象者の年齢を「月齢」「年齢」「小学校」「中学校」の4項目から、また、条件を「以下」「未満」「誕生月まで」の3項目から選択し、予防接種対象者の集計条件の設定を可能にした。これらの項目は、調査した6市町村の対象者集計条件、予防接種法および予防接種実施要領(厚生省保健医療局長通知)から抽出し、作成した。
3、保健所システム
1)機能
保健所が実施主体となって行った母子保健事業内容を地域保健報告から抽出された項目に沿って入力、集計を行う。また、市町村システムからフロッピィディスクへ出力された母子保健情報を読込み、読込まれたデータを集約する2機能を持ったシステムを作成した。
2)入力内容
・健康診断:妊婦、産婦、乳児、幼児、療育での健康診断の実施内容および結果
・保健指導:妊産婦、乳幼児などへの保健指導実施内容
・訪問指導:妊婦、産婦、新生児、未熟児、乳児、幼児への訪問指導実施内容
・療育指導-身体障害児:障害機能、小児慢性特定疾患医療に関する情報
・歯科保健:集団・個別での歯科検診、処置に関する情報
・健康増進:妊産婦、乳幼児、その他住民への健康増進の実施内容
・衛生教育:母子に関する衛生教育の実施時間および参加者
考察
GUI環境の充実により、簡潔で、自由度の大きい、正確な操作・入力が可能となった。また、個人単位による母子保健情報の入力・リスト出力・履歴表示により、個人の実施状況が把握しやすくなった。これにより、相談時の個人確認等で利用可能になり、市町村担当者の事務処理業務の軽減、対人サービスの質の向上に資することが可能になると考えられた。加えて、現在主流になりつつあるWindowsの利用、予防接種対象者の抽出では、各市町村の条件設定に合わせた集計が可能となることで、汎用性に優れ、柔軟性に富んだシステムと考えられた。
今後、市町村システムでは、入力、出力項目を充実させ、集計のみならず、母子保健関連の様々な処理業務への活用に対応できるシステムの構築を考えている。また、保健所システムでは、さらなる評価、修正を含め、モデル地区における実務者レベルの大規模な稼働実験の必要性が考えられた。
結論
昨年作成のシステム評価・考察からWindows化を試み、旧システムの特徴である強力なデータベースエンジンを保持しながら、より操作性及び汎用性の高い、母子保健医療福祉に係わる情報システムを開発した。また、保健所が実施主体となって行った母子保健情報の入力と集計、及び管内の市町村から収集したデータを集約できるシステムも開発した。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)