施設内感染に係る赤痢アメーバ症等の原虫疾患の感染経路及び予防法の開発に関する疫学研究

文献情報

文献番号
200628028A
報告書区分
総括
研究課題名
施設内感染に係る赤痢アメーバ症等の原虫疾患の感染経路及び予防法の開発に関する疫学研究
課題番号
H17-新興-一般-028
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
竹内 勤(慶応義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 野崎智義(群馬大学大学院 医学系研究科)
  • 橘 裕司(東海大学 医学部)
  • 牧岡朝夫(東京慈恵会医科大学)
  • 所 正治(金沢大学大学院 医学系研究科)
  • 鈴木 淳(東京都健康安全研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
各種更生施設利用者の腸管寄生原虫感染実態とフォローアップの調査を行う。施設での赤痢アメーバ感染径路の特定化、公衆衛生介入を試みる。遺伝子、タンパク質多型解析の手法を確立し、疫学研究への応用を図り、総合して施設内感染対策を向上させる。異性愛行為感染の疫学面を明らかにする。
研究方法
感染実態調査は糞便検査、アメーバの特異抗原検査、特異遺伝子増幅検査によった。フォローアップでは更に臨床所見も考慮した。公衆衛生介入は衛生教育によった。女性の血清疫学は酵素抗体法によった。持続感染機構はマウスモデルで検討した。マイクロアレイによる遺伝子解析は赤痢アメーバの全遺伝子を対象として実施した。表面抗原(Igl)遺伝子多型は増幅した断片の塩基配列を比較して行った。Igl組み替えタンパク質のワクチン能はハムスターの肝膿瘍をモデルとした。タンパク質多型はProteinChipにより解析した。ジアルジアの遺伝子多型は三種の遺伝子の塩基配列により実施した。
結果と考察
新規1施設で非病原性アメーバの高率な感染が見いだされた。この事は赤痢アメーバ感染拡大の可能性を示唆している。フォローアップ調査では赤痢アメーバ感染は見いだせず、従来の対策の正当性が証明された。女性の赤痢アメーバ抗体陽性率は5.3%と上昇傾向にあり、異性愛感染を示唆している。腸内嫌気性細菌が大腸に近似した環境下で赤痢アメーバ無菌培養株の増殖を促進した事から、腸管上皮へのアメーバの接着に関係すると思われた。毒力の異なる二種の同一株を用いたマイクロアレイ解析では2.4%の遺伝子で発現の差が見られた。地理背景の異なる株からIgl組み替えタンパクを作成し、国内の患者血清との反応を検討したが、国内分離株であるNOT-12の反応性が高く、特異的な抗体検出系の可能性が示された。Igl組み替えタンパクではC末のみが肝膿瘍形成を阻止した。ワクチンの可能性を示す。タンパク質多型による系統樹解析は標準株として見なされるHM-1が独立している事などを示した。ジアルジアではトリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子の多型解析法を確立した。
結論
施設内腸管原虫感染の疫学研究、及び予防のための公衆衛生介入策、基盤技術の研究を行い、新規対象施設でも糞便中の原虫嚢子による経口感染が起っている事を示した。従来実施した制圧法は有効である事も示された。遺伝子、タンパク質多型解析は疫学的な応用が可能なレベルに達しつつある。女性における抗体陽性率の上昇は継続してモニタリングする必要がある事を示している。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-