SARSコロナウイルス検査法の精度向上及び迅速化に関する研究

文献情報

文献番号
200628010A
報告書区分
総括
研究課題名
SARSコロナウイルス検査法の精度向上及び迅速化に関する研究
課題番号
H16-新興-一般-039
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
森川 茂(国立感染症研究所ウイルス第1部)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 義浩(東京大学医科学研究所感染症分野)
  • 森田 公一(長崎大学熱帯医学研究所病原体解析部門分子構造解析分野)
  • 松浦 善治(大阪大学微生物病研究所エマージング感染症研究センター)
  • 奥野 良信(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 田代 眞人(国立感染症研究所ウイルス第3部)
  • 棚林 清(国立感染症研究所獣医科学部)
  • 長谷川 秀樹(国立感染症研究所感染病理部)
  • 納富 継宣(栄研化学株式会社生物化学研究所第2部)
  • 福士 秀悦(国立感染症研究所ウイルス第1部)
  • 永田 典代(国立感染症研究所感染病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SARSの実験室診断の迅速と精度向上を目的とする。本年度は、組換え抗原によるより迅速なIgG, IgM抗体検出法の開発、SARS-CoVを用いない安全なウイルス中和抗体測定法の改良、抗原検出イムノクロマト法の開発、LAMP法による遺伝子検出の迅速化、迅速鑑別診断用LAMP法の評価、特異的なprimerを必要としない遺伝子増幅法(RDV法)の開発、齧歯類でのSARS発症モデル系の確立を目標とした。
研究方法
1)血清診断法:組換え蛋白を用いたPAビーズ法、抗原検出イムノクロマト法を開発した。VSV-シュードタイプによる中和抗体測定法を改良して迅速化した。2)遺伝子検出法:LAMP法の迅速化の基礎検討を行った。鑑別診断用LAMP法を評価した。RDV法を開発した。3)モデル動物系:齧歯類でのSARS発症モデル系を開発した。ACE2トランスジェニックマウス感染モデル系を開発した。
結果と考察
1)血清診断法:他のコロナウイルスと交差しない組換え抗原による抗体検出法をより迅速化できるPAビーズ法を開発し、VSV-シュードタイプを用いる中和抗体測定を迅速化した。抗原検出イムノクロマト法を開発した。2)遺伝子検出法: LAMP法は、検体からのRNA抽出が不要な処理法により迅速化できることが分かった。開発したインフルエンザ用LAMP法は市販イムノクロマトキットより高感度であった。特異primerを必要としない遺伝子検出法(RDV法)を開発しSARSにも有効であることを示した。3)モデル動物系:マウス、ラットでSARS発症モデル系を開発した。ACE2トランスジェニックマウスでは100%致死モデルが開発された。このように、SARSの検査法の精度向上及び迅速化ができた。また、SARS-CoVを使用しないためより安全に検査を行う体制が確立された。今後SARS患者が発生した場合に、迅速、的確に検査できる。
結論
SARS-CoVの培養系を使用しない血清診断系が確立され、SARSの検査法の精度向上及び迅速化ができた。これらはウイルスを用いないため実験室感染のリスクが回避できる。また、迅速にウイルス抗原を検出するイムノクロマト法が開発され、RT-LAMP法を簡便、迅速化できた。鑑別診断として重要なインフルエンザ用RT-LAMP法については、その有用性を臨床検体により評価できた。感染動物モデル系で得られる材料を用いて、今後、より良い検査法が開発された場合に、その精度・感度検定が可能となった。また、SARS-CoVによる齧歯類でのSARS発症モデル系が確立された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200628010B
報告書区分
総合
研究課題名
SARSコロナウイルス検査法の精度向上及び迅速化に関する研究
課題番号
H16-新興-一般-039
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
森川 茂(国立感染症研究所ウイルス第1部)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 義浩(東京大学医科学研究所感染症分野)
  • 森田 公一(長崎大学熱帯医学研究所病原体解析部門分子構造解析分野)
  • 松浦 善治(大阪大学微生物病研究所エマージング感染症研究センター)
  • 奥野 良信(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 田代 眞人(国立感染症研究所ウイルス第3部)
  • 棚林 清(国立感染症研究所獣医科学部)
  • 長谷川 秀樹(国立感染症研究所感染病理部)
  • 納富 継宣(栄研化学株式会社生物化学研究所第2部)
  • 福士 秀悦(国立感染症研究所ウイルス第1部)
  • 永田 典代(国立感染症研究所感染病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SARSの実験室診断の迅速と精度向上を目的とする。組換え抗原によるより迅速なIgG, IgM抗体検出法の確立、SARS-CoVを用いない安全なウイルス中和抗体測定法の確立、抗原検出イムノクロマト法の開発、LAMP法による遺伝子検出の迅速化、迅速鑑別診断用LAMP法の開発、新興再興感染症の原因病原体の迅速同定法の開発、齧歯類でのSARS発症モデル系の確立を目標とした。
研究方法
1)血清診断法:組換え蛋白を用いたIgM, IgG抗体測定法を開発し迅速、高感度化した。抗原検出イムノクロマト法を開発した。VSV-シュードタイプによる中和抗体測定法を開発し迅速化した。2)遺伝子検出法:LAMP法の迅速化の基礎検討を行った。鑑別診断用LAMP法を開発評価した。新興再興感染症の原因病原体の迅速同定法を開発した。3)モデル動物系:齧歯類でのSARS発症モデル系を開発した。ACE2トランスジェニックマウス感染モデル系を開発した。
結果と考察
1)血清診断法:他のコロナウイルスと交差しない組換え抗原による抗体検出法とVSV-シュードタイプを用いる中和抗体測定を確立し、抗体測定を迅速、高感度化した。抗原検出イムノクロマト法を開発した。2)遺伝子検出法: LAMP法は、検体からのRNA抽出が不要な処理法により迅速化できることが分かった。迅速鑑別診断用LAMP法を開発し、評価した。特異primerを必要としない病原ウイルス遺伝子検出法を開発した。3)モデル動物系:マウス、ラットでSARS発症モデル系を開発した。ACE2トランスジェニックマウスでは100%致死モデルが開発された。このように、SARSの検査法の精度向上及び迅速化ができた。また、SARS-CoVを使用しないためより安全に検査を行う体制が確立された。
結論
SARS-CoVの培養系を使用しない血清診断系が確立され、SARSの検査法の精度向上及び迅速化ができた。これらはウイルスを用いないため実験室感染のリスクが回避できる。また、迅速にウイルス抗原を検出するイムノクロマト法が開発され、RT-LAMP法を簡便、迅速化できた。鑑別診断用RT-LAMP法を開発した。さらに齧歯類でのSARS発症モデル系が複数確立された。これらにより、今後SARS患者が発生した場合、迅速的確に検査できる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200628010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
SARS-CoVの培養系を使用しない血清診断系を確立し、SARSの検査法の精度向上及び迅速化を達成した。これらはウイルスを用いないため実験室感染のリスクが回避できる。また、迅速にウイルス抗原を検出するイムノクロマト法が開発され、RT-LAMP法を簡便、迅速化できた。鑑別診断用RT-LAMP法を開発した。さらに齧歯類でのSARS発症モデル系が複数確立された。これらにより、今後SARS患者が発生した場合、これまでより迅速的確に検査できる。
臨床的観点からの成果
日本では、SARS患者の発生がなかったため臨床検体がないが、ベトナムの臨床検体を用いていくつかの検査法の評価を行った結果、開発した検査法の有用性を確認している。また、鑑別診断用RT-LAMPでは国内の臨床検体を用いてA型インフルエンザの診断における有用性を明らかにした。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
本研究の成果により、今後SARS流行があった場合により迅速にかつ的確に患者の診断ができることは、公衆衛生行政上の有用である。
その他のインパクト
化学療法の領域(医薬ジャーナル社)2006年12月号に「SARSコロナウイルス検査法の進展」として研究班で得られた成果を総説的に紹介した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
38件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
34件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fuxun Yu, Mai Quynh Le, Shingo Inoue, et al.
Recombinant Truncated Nucleocapsid Protein as Antigen in a Novel Immunoglobulin M Capture Enzyme-Linked Immunosorbent Assay for Diagnosis of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus Infection
Clin Vac Immunol , 14 , 146-149  (2007)
原著論文2
Mizutani1 T, Endoh D, Okamoto M, et al.
Rapid genome sequencing of RNA viruses.
Emerg. Infect. Dis , 13 (2) , 322-324  (2007)
原著論文3
Nagata N, Iwata N, Hasegawa H, et al.
Participation of both host and virus factors in induction of severe acute respiratory syndrome in F344 rats infected with SARS coronavirus
J. Virol. , 81 (4) , 1848-1857  (2006)
原著論文4
Fukushi S, Mizutani T, Saijo M et al.
Evaluation of a novel vesicular stomatitis virus pseudotype-based assay for detection of neutralizing antibody responses to SARS-CoV.
J Med Virol , 78 (12) , 1509-1512  (2006)
原著論文5
Zamoto A, Taguchi F, Fukushi S et al.
Identification of ferret ACE2 and its receptor function for SARS-coronavirus.
Adv Exp Med Biol , 581 , 519-522  (2006)
原著論文6
Fuxun Yu, Mai Quynh Le, Shingo Inoue, et al.
Evaluation of Inapparent Nosocomial Server Acute Respiratory Syndrome Coronavirus Infection in Vietnam by use of Highly Specific Recombinant Truncated Nucleocapsid Protein-Based Enzyme- Linked Immunosorbent Assay
Clin Diagn Labo Immunol , 12 , 848-854  (2005)
原著論文7
Fukushi, S., T. Mizutani, M. Saijo, S. et al.
Vesicular stomatitis virus pseudotyped with severe acute respiratory syndrome coronavirus spike protein
J Gen Virol , 86 , 2269-2274  (2005)
原著論文8
Kitagawa Y., Tani H., Limn C-K, et al.
Ligand-Directed Gene Targeting to Mammalian Cells by Pseudotype Baculoviruses
J. Virol. , 79 , 3639-3652  (2005)
原著論文9
Endoh D, Mizutani T, Kirisawa R,
Species-independent detection of RNA virus by representational difference analysis using non-ribosomal hexa- nucleotides for reverse transcription
Nucleic Acids Res , 33 (6)  (2005)
原著論文10
Saijo M, Ogino T, Taguchi F, et al.
Recombinant nucleocapsid protein- based IgG enzyme-linked immunosorbent assay for the serological diagnosis of SARS.
J Virol Methods. , 125 (2)  (2005)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-