SARSコロナウイルスに対するワクチン開発に関する研究

文献情報

文献番号
200628008A
報告書区分
総括
研究課題名
SARSコロナウイルスに対するワクチン開発に関する研究
課題番号
H16-新興-一般-037
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
田口 文広(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
研究分担者(所属機関)
  • 横田 恭子(国立感染症研究所 免疫部)
  • 岡田 全司(国立病院機構 近畿中央胸部疾患センター)
  • 石井 孝司(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 山本 典生(東京医科歯科大学 医学部)
  • 黒澤 良和(藤田保健衛生大学 総合医科学研究所)
  • 山田 靖子(国立感染症研究所 動物管理室)
  • 宝達 勉(北里大学 獣医畜産学部)
  • 池田 秀利(動物衛生研究所 感染病研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
33,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症急性呼吸器症候群(SARS)は、コロナウイルス(SARS-CoV)による致死率の極めて高い新興感染症であるが、予防治療法はまだ確立されていない。本研究の目的は、 SARSの病態を把握し、SARSに対する有効で安全なワクチン及び抗ウイルス剤の開発のための基礎的研究である。
研究方法
SSARS-CoVの増殖、力価測定はVeroE6細胞で行った。SARS-CoV各遺伝子をクローニングし、各種発現ベクターに挿入した。SARS-CoV遺伝子を含む組み換えワクシニアウイルスDIsを作成した。免疫及び感染実験にはBALB/c、SCID-PBL/huマウス等を用いた。また、SARS-CoV受容体ACE2遺伝子分離にはフェレット等を用いた。動物コロナウイルスとして、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)と豚伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)を用いた。
結果と考察
SARS-CoVの増殖は弱病原性細菌との混合感染によりマウス肺中で上昇し、ヒトSARSと極めて類似性の高い重症肺炎引き起こす動物病態モデルを確立することができた。マウス病態モデルを用いて、不活化精製ウイルス、SARS-CoVのS遺伝子を持つ組み換えワクシニアウイルスの免疫により、マウスはSARS-CoV感染に対して高い抵抗性を示した。SARS-CoV構造蛋白を発現するDNAワクチンにより、液性、細胞性免疫を惹起することができた。また、培養細胞レベルで高い抗SARS活性を示す抗SARS剤も発見された。フェレット及びネコのACE2がヒトACE2と同様の高い受容体活性を示すことが明らかとなった。SARSの病態研究のモデルとして、FIPV感染による抗体依存性感染増強やTGEVの変異による臓器親和性に関する研究が進められた。本年度は、 マウスのSARS病態モデルでワクチンの有効性が示され、今後のワクチン開発研究の礎が確立した。
結論
本研究ではマウスを用いたSARS重症化の解析が進み、本年度はマウスのSARS病態モデル系が樹立された。更に、この系を用いて、これまで開発された不活化ワクチン及び組み換えワクチンが感染防御に有効であること示された。今後、ヒトでの臨床的応用を視野に入れ、ヒトと近縁のサルを用いてのワクチンの有用性及び安全性の検討が必要であり、これらの研究により、SARSの予防、治療法の確立が期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200628008B
報告書区分
総合
研究課題名
SARSコロナウイルスに対するワクチン開発に関する研究
課題番号
H16-新興-一般-037
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
田口 文広(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
研究分担者(所属機関)
  • 横田 恭子(国立感染症研究所 免疫部)
  • 岡田 全司(国立病院機構 近畿中央胸部疾患センター)
  • 石井 孝司(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 山本 典生(東京医科歯科大学 医学部)
  • 黒澤 良和(藤田保健衛生大学 総合医科学研究所)
  • 山田 靖子(国立感染症研究所 動物管理室)
  • 宝達 勉(北里大学 獣医畜産学部)
  • 池田 秀利(動物衛生研究所 感染病研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症急性呼吸器症候群(SARS)は、コロナウイルス(SARS-CoV)による致死率の極めて高い新興感染症であり、その予防治療法はまだ確立されていない。本研究の目的は、 SARSの病態を把握し、SARSに対する有効で安全なワクチン及び抗ウイルス剤の開発のための包括的研究を行なうことである。
研究方法
SARS-CoVの増殖、力価測定はVeroE6細胞を用いた。SARS-CoV各遺伝子をクローニングし、各種発現ベクターに挿入した。また、SARS-CoV遺伝子を含む組み換えワクシニアウイルスDIsを作成した。免疫及び感染実験にはBALB/c、C57Bl又はSCID-PBL/huマウスを用いた。また、SARS-CoV受容体ACE2遺伝子分離にはフェレット等を用いた。動物コロナウイルスとして、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)と豚伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)を用いた。
結果と考察
マウスにSARS-CoVと弱病原性細菌とを混合感染することにより、ヒトSARSと極めて類似した致死性の高い重症肺炎を引き起こす動物病態モデルを確立することができた。確立されたマウス病態モデル系を用いて、不活化精製ウイルス、SARS-CoVS遺伝子を持つ組み換えワクシニアウイルスの免疫はマウスにSARS-CoV感染に対する高い抵抗性を賦与した。SARS-CoV構造蛋白を発現する様々なDNAワクチンにより、液性、細胞性免疫が惹起された。また、培養細胞及びマウス体内で高い抗SARS-CoV活性を示す抗SARS剤も発見された。フェレット及びネコの高いSARS感受性は受容体によることが示唆された。SARSの病態研究のモデルとして、FIPV感染による抗体依存性感染増強やTGEVの変異による臓器親和性獲得に関する研究が進められた。本研究では、 マウスのSARS病態モデルを用いたワクチン開発系が樹立され、今後よりヒトに近いサルを用いたワクチン、抗ウイルス剤など予防治療法開発が期待される。
結論
本研究ではマウスを用いたSARS重症化の解析が進み、マウスのSARS病態モデル系が樹立された。この系を用いて、これまで開発された不活化ワクチン及び組み換えワクチンが感染防御に有効であること示された。今後、ヒトでの臨床的応用を視野に入れ、サルを用いてのワクチンの有効性及び安全性の検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200628008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、マウスのSARS病態モデルを確立し、各種ワクチンがマウスSARSに対して有効であることを明らかにした。また、幾つかの抗SARS剤も発見された。更に、SARSの重症肺炎発症機構の解明も進み、今後の薬剤開発への道が開かれつつある。本研究により、予防治療法のなかったSARSへのワクチン、抗ウイルス剤開発の基盤が動物モデルを用いて確立され、今後サルを用いた研究を通して、ヒトに有効な予防治療薬の開発が期待される。
臨床的観点からの成果
本研究では、臨床的な研究、試験は行なわれなかった。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
本研究では、実験小動物のSARSを抑えるワクチンが開発され、ヒトへの応用が充分見込める研究成果が得られている。本研究により、SARS脅威を軽減することができ、医療行政にも貢献したと思われる。
その他のインパクト
本研究の成果は、下記の幾つかの医学雑誌で総説的に紹介した。
1.SARSコロナウイルスの特徴とワクチン開発:化学療法の領域(2006年第22巻)
2.重症急性呼吸器症候群(SARS):分子呼吸器病(2006年第11巻)
3.SARSワクチン:医学のあゆみ(2005年214巻)
4.SARSコロナウイルス研究の最前線:(2006年218巻)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
28件
その他論文(和文)
18件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
45件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計7件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takasuka N, Fujii H, Takahashi Y. et al.
A subcutaneously injected UV-inactivated SARS coronavirus vaccine elicits systemic humoral immunity in mice
Int. Immnol. , 16  (2004)
原著論文2
Matsuyama S, Ujike M, Morikawa S et al.
Protease-mediated enhancement of SARS coronavirus infection.
Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A. , 102  (2005)
原著論文3
Fukushi S, Mizutani T, Saijo M et al.
Vesicular stomatitis virus pseudotyped with severe acute respiratory syndrome coronavirus spike protein.
J. Gen. Virol , 86  (2005)
原著論文4
Saijo M, Ogino T, Taguchi F et al.
Recombinant nucleocapsid protein-based IgG enzyme-linked immunosorbent assay for the serological diagnosis of SARS
J. Virol. Methods , 125  (2005)
原著論文5
Ohnishi K, Sakaguchi M, Kaji T et al.
Immunological detection of severe acute respiratory syndrome coronavirus by monoclonal antibodies.
Jap. J. Infect. Dis , 58  (2005)
原著論文6
Okada M, Takemoto Y, Okuno Y et al.
The Development of vaccines against SARS Corona Virus in Mice and SICD-PBL/hu Mice.
Vaccine , 23  (2005)
原著論文7
Watanabe R, Matsuyama S and Taguchi F
Receptor-independent infection of murine coronavirus:analysis by spinoculation.
J. Virol. , 80  (2006)
原著論文8
Matsuyama S, Ujike M, Ishii I et al.
Enhancement of SARS-CoV infection by proteases.
Adv. Exp. Med. Biol. , 581  (2006)
原著論文9
Zamoto A, Taguchi F, Fukushi S
Identification of ferret ACE2 and its recertor function for SARS-coronavirus.
Adv. Exp. Med. Biol. , 581  (2006)
原著論文10
Ishii K, Yokota Y, Takemori T et al.
Highly attenuated vaccinia virus DIs as a potential SARS vaccine.
Adv. Exp. Med. Biol. , 581  (2006)
原著論文11
Fukushi S, Mizutani T, Saijo M et al.
Pseudotype vesicular stomatitis virus for functional analysis of SARS coronavirus spike protein
Adv. Exp. Med. Biol. , 581  (2006)
原著論文12
Fukushi S, Mizutani T, Saijo M et al.
Evaluation of a novel vesicular stomatitis virus pseudotype-based assay for detection of neutralizing antibody responses to SARS-CoV.
J. Med. Virol. , 78  (2006)
原著論文13
Ishii K, Hasegawa H, Nagata N et al.
Induction of protective immunity against severe acute respiratory syndrome coronavirus (SARS-CoV) infection using highly attenuated recombinant vaccinia virus DIs.
Virology , 351  (2006)
原著論文14
Mizutani T, Fukushi S, Ishii K et al.
Mechanisms of establishment of persistent SARS-CoV-infected cells.
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 347  (2006)
原著論文15
Okada M, Takemoto Y, Okuno Y et al.
Development of vaccines and passive immunotherapy against SARS corona virus using mouse and SCID-PBL/hu mouse models.
Adv. Exp. Med. Biol. , 581  (2006)
原著論文16
Takano T, Hohdatsu T, Hashida Y et al.
A "possible" involvement of TNF-alpha in apoptosis induction in peripheral blood lymphocytes of cats with feline infectious peritonitis.
Vet. Microbiol. , 119  (2007)
原著論文17
Takano T, Hohdatsu T, Toda A et al.
TNF-alpha, produced by feline infectious peritonitis virus (FIPV)-infected macrophages, upregulates expression of type II FIPV receptor feline aminopeptidase N in feline macrophages.
Virology  (2007)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-