ポリオ野生株ウイルスの封じ込め対策に関する研究

文献情報

文献番号
200628006A
報告書区分
総括
研究課題名
ポリオ野生株ウイルスの封じ込め対策に関する研究
課題番号
H16-新興-一般-035
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
清水 博之(国立感染症研究所ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮村 達男(国立感染症研究所)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 有田 峰太郎(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 西村 順裕(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 小池 智(財団法人東京都医学研究機構東京都神経科学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在最終局面にある世界ポリオ根絶計画が達成された後、人為的、非人為的ないかなる理由であれ、ポリオウイルスがヒト集団に再流行することがないよう、野生株ポリオ根絶後に起こり得るポリオ流行のリスクを評価し、適切な制御戦略を検討する。
研究方法
ポリオ根絶後における、最も大きなリスク要因と考えられている実験室に由来するポリオウイルス伝播のリスクを低下させるため、ポリオウイルス保有施設調査を実施する。野生株およびワクチン由来ポリオウイルス(VDPV)によるポリオ再流行のリスクを評価し、ポリオ根絶達成後に重要とされる感度および精度の高いポリオウイルスサーベイランスシステムについて検討する。ポリオウイルスの感染伝播・病原性発現機構を解析するため、効率の良い経口感染マウスモデルの開発を行う。
結果と考察
ポリオウイルス関連研究論文発表状況調査を行い、リストアップされた研究者を対象として、野生株ポリオウイルス保有施設調査を実施した。地方衛生研究所を対象としたポリオウイルス保有状況調査を実施した。リアルタイムPCR法によるポリオウイルス迅速診断法の開発を試みた。カンボジアでポリオ患者から分離された3型VDPVの遺伝子解析を行い、3型VDPV伝播のリスクを明らかにした。自然感染におけるポリオウイルスの排出や伝播について研究するため、PVR-tg/Ifnar-ノックアウトマウスにおける経口感染効率について解析し、効率よく経口感染可能なマウスモデルを樹立した。
結論
日本における野生株ポリオウイルス保有調査のための精度の高い調査手法を検討し、異なる手法による野生株ポリオウイルス保有施設調査を実施した。公的な保有施設調査を補完する、精度の高い野生株ポリオウイルス保有状況調査が可能となった。今後、出来る限り多くの施設を網羅した野生株ポリオウイルス保有状況調査報告書を早急に作成する必要がある。VDPVを含むポリオウイルス伝播を感度良く検出するためのサーベイランスシステムの評価を行い、サーベイランスおよび診断系の改良により高感度かつ迅速にポリオウイルス伝播の検出が可能であることを示した。ポリオウイルス感染伝播・病原性発現機構を研究するための、新たな感染モデルの開発を行い、効率よく経口感染可能なマウスモデルを樹立した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200628006B
報告書区分
総合
研究課題名
ポリオ野生株ウイルスの封じ込め対策に関する研究
課題番号
H16-新興-一般-035
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
清水 博之(国立感染症研究所ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮村 達男(国立感染症研究所)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 有田 峰太郎(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 西村 順裕(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 小池 智(財団法人東京都医学研究機構東京都神経科学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在最終局面にある世界ポリオ根絶計画が達成された後、人為的、非人為的ないかなる理由であれ、ポリオウイルスがヒト集団に再流行することがないよう、野生株ポリオ根絶後に起こり得るポリオ流行のリスクを評価し、適切な制御戦略を検討する。
研究方法
日本における野生株ポリオウイルス保有施設調査のための効率的かつ精度の高い調査手法を検討し、異なる手法による保有施設調査を実施する。野生株およびワクチン由来ポリオウイルス(VDPV)によるポリオ再流行のリスクを評価し、ポリオ根絶達成後に重要とされる感度および精度の高いポリオウイルスサーベイランスシステムについて検討する。ポリオウイルスの感染伝播・病原性発現機構を解析するための、新たな感染モデルに関する研究を行う。
結果と考察
いくつかの異なる手法による野生株ポリオウイルス保管施設調査を実施するとともに、ポリオウイルス実験室封じ込めの重要性について関連施設に周知を図った。西太平洋地域の急性弛緩性麻痺症例に由来するVDPVを解析し、VDPVによるポリオ流行のリスクを明らかにした。また、VDPVを含むポリオウイルス伝播を高感度に検出可能なサーベイランス手法を明らかにするとともに、迅速かつ精度の高い実験室診断手法に関する研究を行った。VDPVを含むポリオウイルスの感染伝播・病原性発現について研究するため、PVR-tg/Ifnar-ノックアウトマウスを作製し、効率の良い経口感染マウスモデルを樹立した。
結論
日本における野生株ポリオウイルス保有調査のための効率的かつより精度の高い調査手法について検討し、野生株ポリオウイルス保有施設調査を実施した。様々な調査を組みあわせることにより、調査精度を改善するとともに、野生株ポリオウイルス封じ込めの重要性について周知した。ポリオ根絶最終段階において重要とされるポリオサーベイランスシステムの評価を行い、高感度かつ迅速にポリオウイルス伝播の検出が可能であることを明らかにした。また、ポリオフリー地域でも、VDPV伝播によるポリオ流行のリスクを有することを明らかにし、ポリオ根絶後におけるVDPVによるポリオ流行のリスクを明らかにした。ポリオウイルス感染伝播機構を解析するためのin vivo実験系の開発を行ない、効率よく経口感染可能なマウス感染モデルを樹立した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200628006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ポリオ根絶最終段階に必要とされるポリオサーベイランスの評価を行い、高感度にポリオウイルス伝播の検出可能なサーベイランスシステムを明らかにした。また、ポリオフリー地域でも、VDPV伝播によるポリオ流行のリスクを有することを明らかにし、ポリオ根絶後におけるVDPVによるポリオ流行のリスクを明らかにした。ポリオウイルス感染伝播機構を解析するためのin vivo実験系の開発を行ない、効率よく経口感染可能なマウス感染モデルを樹立した。

臨床的観点からの成果
日本における野生株ポリオウイルス保有調査のための効率的かつより精度の高い調査手法について検討し、野生株ポリオウイルス保有施設調査を実施した。様々な調査を組みあわせることにより、調査精度を改善するとともに、野生株ポリオウイルス封じ込めの重要性について周知した。
ガイドライン等の開発
野生株ポリオウイルスの実験室封じ込めに関するWHO世界的行動計画 (WHO global action plan (GAP) for laboratory containment of wild polioviruses)の全編の日本語訳を行い、雑誌「ウイルス」に掲載することにより、ポリオウイルス実験室封じ込めの重要性について周知を図った。
その他行政的観点からの成果
ポリオウイルス関連発表論文調査によりリストアップされた研究者を対象に、電話聞き取り方式およびアンケート調査による野生株ポリオウイルス保有状況調査を実施し、結果の集計・解析をおこなった。地方衛生研究所における病原微生物の取扱いに関する調査の一環として、「ポリオウイルスおよびポリオウイルスを含む可能性のある検体の保管状況に関するアンケート調査」を実施し、回収結果を集計した。
その他のインパクト
関連学会(ウイルス学会、臨床ウイルス学会、感染症学会、衛生微生物協議会等)で、ポリオ根絶の現状および野生株ポリオウイルス実験室封じ込めに関する情報提供を実施した。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
30件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shimizu H, Thorley B, Paladin JF, et al.
Circulation of type 1 vaccine-derived poliovirus in the Philippines in 2001
J Virol , 78 , 13512-13521  (2004)
原著論文2
Arita M, Shimizu H, Miyamura T
Characterization of in vitro and in vivo phenotypes of poliovirus type 1 mutants with reduced viral protein synthesis activity
J Gen Virol , 85 , 1933-1944  (2004)
原著論文3
Nagata N, Iwasaki T, Ami Y, et al.
Differential localization of neurons susceptible to enterovirus 71 and poliovirus type 1 in the central nervous system of cynomolgus monkeys after intravenous inoculation
J Gen Virol , 85 , 2981-2989  (2004)
原著論文4
Kew OM, Wright PF, Agol VI, et al.
Circulating vaccine-derived polioviruses: current state of knowledge
Bull World Health Organ , 82 , 16-23  (2004)
原著論文5
Shimizu H, Utama A, Onnimala N, et al.
Molecular epidemiology of enterovirus 71 infection in the Western Pacific Region
Pediatr Int , 46 , 231-235  (2004)
原著論文6
Arita M, Shimizu H, Nagata N, et al.
Temperature- sensitive mutants of enterovirus 71 show attenuation in cynomolgus monkeys
J Gen Virol , 86 , 1391-1401  (2005)
原著論文7
Huang QS, Greening G, Baker MG, et al.
Persistence of oral polio vaccine virus after its removal from the immunisation schedule in New Zealand
Lancet , 366 , 394-396  (2005)
原著論文8
Arita M, Zhu SL, Yoshida H, et al.
A Sabin 3-derived poliovirus recombinant contained a sequence homologous with indigenous human enterovirus species C in the viral polymerase coding region
J Virol , 79 , 12650-12657  (2005)
原著論文9
Yang CF, Chen HY, Jorba J, et al.
Intratypic recombination among lineages of type 1 vaccine-derived poliovirus emerging during chronic infection of an immunodeficient patient
J Virol , 79 , 12623-12634  (2005)
原著論文10
Ida-Hosomuma M, Iwasaki T, Yoshikawa T, et al.
Alpha/beta infeterferon controls tissue tropism and pathogenicity of poliovirus
J Virol , 79 , 4460-4469  (2005)
原著論文11
Hansman GS, Kuramitsu M, Yoshida H, et al.
Viral Gastroenteritis in Mongolian Infants
Emerg Infect Dis , 11 , 181-182  (2005)
原著論文12
Miyachi S, Lu X, Inoue S, et al.
Organization of multisynaptic inputs from prefrontal cortex to primary motor cortex as revealed by retrograde transneuronal transport of rabies virus
J Neuroscience , 25 , 2547-2556  (2005)
原著論文13
Kuramitsu M, Kuroiwa C, Yoshida H, et al.
Non-polio enterovirus isolation among families in Ulaanbaatar and Tov province, Mongolia: prevalence, intrafamilial spread, and risk factors for infection
Epidemiol Infect , 133 , 1131-1142  (2005)
原著論文14
Sugieda M, Adachi S, Inayoshi M, et al.
Intrafamilial transmission of a Sabin 1-related poliovirus in Shizuoka Prefecture, Japan
Jpn J Infect Dis , 59 , 277-278  (2006)
原著論文15
Iwai M, Yoshida H, Matsuura K, et al.
Molecular epidemiology of echoviruses 11 and 13, based on an environmental surveillance conducted in Toyama Prefecture, 2002-2003
Appl Environ Microbiol , 72 , 6381-6387  (2006)
原著論文16
Iwai M, Nakayama T, Matsuura K, et al.
Assessment of efficacy of a live oral poliovirus vaccine for virulent Sabin-like poliovirus 1 strains in Japan
Acta Virologica , 50 , 139-143  (2006)
原著論文17
Arita M, Nagata N, Sata T, et al.
Quantitative analysis of poliomyelitis-like paralysis in mice induced by a poliovirus replicon
J Gen Virol , 87 , 3317-3327  (2006)
原著論文18
Yoshikawa T, Iwasaki T, Ida-Hosonuma M, et al.
Role of alpha/beta interferon in the acquisition of susceptibility to poliovirus by kidney cells in culture
J Virol , 80 , 4313-4325  (2006)
原著論文19
Mizutani T, Endoh D, Okamoto M, et al.
A new system for rapid genome sequencing of emerging RNA viruses
Emerg Infect Dis , 13 , 322-324  (2007)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-