文献情報
文献番号
199700219A
報告書区分
総括
研究課題名
保健センターを中核とした保健・医療・福祉の連携構築に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
村嶋 幸代(東京大学・医学系研究科・地域看護学分野)
研究分担者(所属機関)
- 麻原きよみ(長野県看護大学)
- 柳修平(川崎医療福祉大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 保健医療福祉地域総合調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
保健・医療・福祉の連携を図る際に行政保健婦がどのような役割を果たすべきかについて、先進的な取り組みをしてきた事例を取りあげて、その役割と方法論を明示し、より良い連携方式の構築方法を普遍化することを目的とした。殊に、保健・医療・福祉に関わる住民ニーズを掘り起こすための方法論を伝達可能に抽出するために、連携の要となって活動した保健婦の役割に焦点を当て、用いられている方法論を抽出することによって保健婦の役割を明確にすることを目的とした。
研究方法
一つの町の経過を追う事例研究。
対象としたM町は、人口36,000人、高齢化率15%、都市近郊で、世間体が強い町である。1993年12月から1~2ヶ月に1回、M町を訪れ、保健婦が24時間在宅ケアシステムを作り上げるプロセスを、現状分析・調査・訪問等で支援し、理論化と一般化を試みた。用いた理論は、コミュニティ・アズ・パートナー理論、Lewinの小集団理論等である。 以下、(1)システム構築のプロセス、(2)理論の適用、(3)一般化の為の方法論の開拓、の順で述べる。なお、(1)は1994年1月~'97年6月、(2)(3)は'97年6月~'98年3月に行った。
対象としたM町は、人口36,000人、高齢化率15%、都市近郊で、世間体が強い町である。1993年12月から1~2ヶ月に1回、M町を訪れ、保健婦が24時間在宅ケアシステムを作り上げるプロセスを、現状分析・調査・訪問等で支援し、理論化と一般化を試みた。用いた理論は、コミュニティ・アズ・パートナー理論、Lewinの小集団理論等である。 以下、(1)システム構築のプロセス、(2)理論の適用、(3)一般化の為の方法論の開拓、の順で述べる。なお、(1)は1994年1月~'97年6月、(2)(3)は'97年6月~'98年3月に行った。
結果と考察
(1)システム構築のプロセス
1)1993年以前から、この町では、保健婦、主任ヘルパー、高齢者福祉のケースワーカーによる同行訪問が行われていた。そのため、在宅ケアの問題点は共有されていた。また、どのような町にしたいかも、合意が図られていた。即ち、専門家の間では、夢が共有化されていた。
2)しかし、一般町民と町の介護問題の共有化が図られていたとは言えない。そこで、システム開発に当たって当事者から発言してもらい、町民と問題を共有化することを考えた。当事者である「元介護者の集い」を開き、そこで出された町の高齢者ケアの問題点を整理し、a.町民に伝えること、b.町民の支持を得て、保健婦が具体的な予算化・提案を作り、町の上層部に説明する、という手順を取った。
3)そこで、「M町在宅ケアを考える住民部会」を作り、町民から町の介護問題を積極的に発言してもらう場を作った。又、「広報部会」を作って、町の介護問題のPRを図るようにした。これを、「ニーズ調査部会」「保健・福祉・看護サービス検討部会」「住環境等開発部会」と一緒に設置した。これらの部会は、町の担当保健婦が、今までの経験から作ったものである。
(2)コミュニティ・アズ・パートナー理論では、一つのコミュニティをコアと8つの側面に分けてアセスメントし、問題を構造化する。A.そこで、「既存資料の収集」「関係者へのヒアリング」「元介護者の集い」「入院患者調査」「在宅療養者調査」などを行い、出てきた町の問題点をこの理論の9側面に当てはめ、問題同士の因果関係を考慮しながら矢印を引いて構造化した。この時、左側には老人保健福祉計画での町の目標を掲げ、診断に用いた。即ち、「#1;障害者が安心して暮らせる町づくりでは無い。」、また、「#2;住民の声が反映される町ではなく、住民の介護問題への理解が不足しており、啓蒙か必要である。」ことが示された。B.問題の構造化から、現実のサービスが不足なだけでなく、あってもそれを利用しないという「世間体」の問題が抽出されてきた。これは、地域住民の準拠枠の問題である。そこで、実際にサービスを使ってもらうために、「訪問活動を活発化して個別に進める」「地区の名士の家で使ってもらう」という方策、また、「地区活動として住民の意識を啓発し、同じ地区の住民が社会サービスを使うことを、せめて、反対しないようにしよう」という合意を形成していくことが重要になる。実際には、学習会を各地区で3年間で75回行った。つまり、住民との合意形成である。これは、地域の文化を変えていく問題である。
(3)以上のプロセスは、保健婦活動として、地域の文化に働きかけながら、世間体の強い地域でサービス導入をスムースに図っていくという事であり、保健婦が在宅ケアの基盤整備をすることの必要性を示していると考えられた。
1)1993年以前から、この町では、保健婦、主任ヘルパー、高齢者福祉のケースワーカーによる同行訪問が行われていた。そのため、在宅ケアの問題点は共有されていた。また、どのような町にしたいかも、合意が図られていた。即ち、専門家の間では、夢が共有化されていた。
2)しかし、一般町民と町の介護問題の共有化が図られていたとは言えない。そこで、システム開発に当たって当事者から発言してもらい、町民と問題を共有化することを考えた。当事者である「元介護者の集い」を開き、そこで出された町の高齢者ケアの問題点を整理し、a.町民に伝えること、b.町民の支持を得て、保健婦が具体的な予算化・提案を作り、町の上層部に説明する、という手順を取った。
3)そこで、「M町在宅ケアを考える住民部会」を作り、町民から町の介護問題を積極的に発言してもらう場を作った。又、「広報部会」を作って、町の介護問題のPRを図るようにした。これを、「ニーズ調査部会」「保健・福祉・看護サービス検討部会」「住環境等開発部会」と一緒に設置した。これらの部会は、町の担当保健婦が、今までの経験から作ったものである。
(2)コミュニティ・アズ・パートナー理論では、一つのコミュニティをコアと8つの側面に分けてアセスメントし、問題を構造化する。A.そこで、「既存資料の収集」「関係者へのヒアリング」「元介護者の集い」「入院患者調査」「在宅療養者調査」などを行い、出てきた町の問題点をこの理論の9側面に当てはめ、問題同士の因果関係を考慮しながら矢印を引いて構造化した。この時、左側には老人保健福祉計画での町の目標を掲げ、診断に用いた。即ち、「#1;障害者が安心して暮らせる町づくりでは無い。」、また、「#2;住民の声が反映される町ではなく、住民の介護問題への理解が不足しており、啓蒙か必要である。」ことが示された。B.問題の構造化から、現実のサービスが不足なだけでなく、あってもそれを利用しないという「世間体」の問題が抽出されてきた。これは、地域住民の準拠枠の問題である。そこで、実際にサービスを使ってもらうために、「訪問活動を活発化して個別に進める」「地区の名士の家で使ってもらう」という方策、また、「地区活動として住民の意識を啓発し、同じ地区の住民が社会サービスを使うことを、せめて、反対しないようにしよう」という合意を形成していくことが重要になる。実際には、学習会を各地区で3年間で75回行った。つまり、住民との合意形成である。これは、地域の文化を変えていく問題である。
(3)以上のプロセスは、保健婦活動として、地域の文化に働きかけながら、世間体の強い地域でサービス導入をスムースに図っていくという事であり、保健婦が在宅ケアの基盤整備をすることの必要性を示していると考えられた。
結論
保健・医療・福祉に関わる住民ニーズを掘り起こすために保健婦が用いていた方法論は、(1)将来のあるべき姿=どのような地域であったら良いかについて最初に行政のサービス担当者が合意すること(夢の共有化)、(2)合意した内容について住民に広報すること、(3)各地域で健康教育等を行う時に小集団で討議し、合意を得ること、(4)サービス導入に際して地域のもつ準拠枠を上手に活用すること、と集約され、有効であることが示された。
公開日・更新日
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