野生げっ歯類及び節足動物に由来する感染症の診断、疫学及び予防に関する研究

文献情報

文献番号
200628002A
報告書区分
総括
研究課題名
野生げっ歯類及び節足動物に由来する感染症の診断、疫学及び予防に関する研究
課題番号
H16-新興-一般-031
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
高島 郁夫(北海道大学大学院獣医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 苅和宏明(北海道大学大学院獣医学研究科 )
  • 有川二郎(北海道大学大学院医学研究科 )
  • 福士秀人(岐阜大学農学部獣医学科)
  • 丸山総一(日本大学生物資源学部獣医学科)
  • 林谷秀樹(東京農工大学農学部獣医学科)
  • 岩崎琢也(長崎大学熱帯医学研究所)
  • 辻正義(酪農学園大学獣医学部)
  • 福長将仁(福山大学薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダニ媒介性脳炎,ハンタウイルス感染症、バベシア症、Q熱、エルシニア感染症およびボレリア感染症については全国的な疫学調査が実施されていないため、汚染地や実際の患者数も不明のままである。上記6種の感染症につき、精度の高い診断法を確立し、疫学調査を実施して国内汚染地の特定とヒトにおける感染状況の解明に努める。
研究方法
ダニ媒介性脳炎ウイルスのヒト用のIgG-、IgM-ELISAによる血清診断法を開発する。ハンタウイルスの遺伝子組み換え技術により特異性の高い血清診断法を開発する。Coxeillaを培養細胞に接種し、診断用抗原として蛍光抗体法を開発する。国内の野生げっ歯類からBartonella属菌を分離し、遺伝子性状を調べる。エルシニア感染症の迅速な遺伝子診断法を開発し疫学調査を実施する。バベシア症の疫学調査を日本国内およびユーラシア大陸各地で行い病原体の型別を行う。回帰熱ボレリアの菌体表層蛋白の一種VmpP遺伝子をクローニングし発現タンパクにおいてエピトープを特定し、立体構造を解明する。
結果と考察
北海道で分離されたTBEウイルスOshima株の準ウイルス様粒子を用いてヒト用のELISAによる血清診断法を開発した。IgG-ELISAは敏感度98.8%(82/83)、特異度100%(12/12)を示した。ハンタウイルス感染症:ロシアボルガ川流域のサマラ市郊外の森林において145匹の野生げっ歯類を捕獲し抗体調査を実施したところ、ヨーロッパヤチネズミのみ陽性例(6/68、8.8%)が認められた。RTPCRによってウイルス遺伝子が検出され(7/68)、S遺伝子の塩基配列の調査の結果、本ウイルスはプーマラ型であることが判明した。Q熱:間接蛍光抗体法により43自治体の動物病院のネコについて抗体検出を行った。抗体価16倍以上の陽性例は12.6%(90/74)であった。
結論
ダニ媒介性脳炎の精度の高い診断法が開発され、ハンタウイルス感染症、Q熱、バルトネラ感染症、バベシア感染症、エルシニア感染症、ボレリア感染症の国内外における病原巣動物における疫学情報が収集された。

公開日・更新日

公開日
2007-03-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200628002B
報告書区分
総合
研究課題名
野生げっ歯類及び節足動物に由来する感染症の診断、疫学及び予防に関する研究
課題番号
H16-新興-一般-031
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
高島 郁夫(北海道大学大学院獣医学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダニ媒介性脳炎,ハンタウイルス感染症、バベシア症、Q熱、エルシニア感染症患およびボレリア感染症の感染症につき、精度の高い診断法を確立し、疫学調査を実施して国内汚染地の特定とヒトにおける感染状況の解明に努める。輸入げっ歯類について抗体調査と病原体分離の成績をもとに、リスクアナリシスを行い、検査体制を整える。また海外においても調査を実施し、疫学情報の収集と病原体分離を行う。
研究方法
ダニ媒介性脳炎のヒト用のIgG-、IgM-ELISAによる血清診断法を開発する。ハンタウイルスの遺伝子組み換え技術により作出した抗原を用いた迅速で特異性の高い血清診断法を開発する。Coxeillaを培養細胞に接種し、診断用抗原として蛍光抗体法を開発する。国内の野生げっ歯類からBartonella属菌を分離し、遺伝子性状を調べる。エルシニア感染症の迅速な遺伝子診断法を開発し疫学調査を実施する。バベシア症の疫学調査を日本国内およびユーラシア大陸各地で行い病原体の型別を行う。回帰熱ボレリアの菌体表層蛋白の一種VmpP遺伝子をクローニングし発現タンパクにおいてエピトープを特定し、立体構造を解明する。

結果と考察
 ダニ媒介性脳炎(TBE)のヒト用のELISAによる血清診断法を開発した。ハンタウイルス感染症:サマラ市郊外の森林において145匹の野生げっ歯類を捕獲したヨーロッパヤチネズミでは抗体陽性例が6例(8.8%)認められた。Q熱の蛍光抗体法の希釈液の検討により非特異反応がほぼ完全に除去された.バルトネラ感染症:野鼠の55.2%(123/223)からBartonella属菌が分離された。県別の保菌率は,沖縄県の0%(0/7)から,群馬県,神奈川県の100%であった。エルシニア感染症:病原性YersiniaのLAMP法を用いた迅速診断法としてLAMP法を開発した。ボレリア感染症:VspEの3D構造を明らかにした。
結論
ダニ媒介性脳炎の血清診断法の開発を行った。ロシアのボルガ川流域に腎症候性出血熱(HFRS)が多発していることが明らかになった。野生化したアライグマは各種人獣共通感染症の自然界における分布を知る上で有用な指標動物であり,また,野生齧歯類は人に病原性を有するBartonella属菌を高率に保菌していることが判明した。病原性Yersiniaの迅速診断法を開発した。ダニ媒介性回帰熱ボレリアの生態、感染経路を流行地調査ならびに実験的に解明するとともに、ボレリア抗原蛋白のエピトープ解析ならびに3次元構造を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2007-03-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200628002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
野生げっ歯類及び節足動物に由来する感染症の診断法が開発され、それを用いた疫学調査を実施した。ワクチン開発などの予防に関する基礎的知見が得られた。
臨床的観点からの成果
野生げっ歯類及び節足動物に由来する感染症の国内外における汚染状況が判明したので危険情報などの作成する上で有用な資料を提供できた。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
検疫所と共同で輸入野生げっ歯類のハンタウイルスの診断を行った。野生げっ歯類及び節足動物に由来する感染症の診断法の開発は患者発生時の診断と検疫時のげっ歯類の診断に有用と考える。
その他のインパクト
該当なし。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Obara M, Yoshii K, Kawakami T et al.
Developement of an enzyme-linked immunosorbent assay for serological diagnosis of tick-borne encephalitis using subviral particles
J Virol Methods , 134 , 55-60  (2006)
原著論文2
Tsuji M, Zamato A, Kawabuchi T et al.
Babesia microti-loke parasites detected in Eurasian red squrrels (sciurus vulgaris orientis) in Hokkaido, Japan.
J Vet Med , 68 , 643-646  (2006)
原著論文3
Tabuchi N, Tomoda K, Kawaguchi H et al.
Immunodominant epitope in the C-terminus od a variable major protein in Borrelia duttonii, an agent of tick-borne relapsing fever.
Microbiol Immnol , 50 , 293-305  (2006)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-