感音難聴に対する内耳薬物投与システム臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200627021A
報告書区分
総括
研究課題名
感音難聴に対する内耳薬物投与システム臨床応用に関する研究
課題番号
H18-感覚器-一般-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
中川 隆之(京都大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 壽一(京都大学大学院医学研究科)
  • 平海 晴一(京都大学医学部附属病院)
  • 羽藤 直人(愛媛大学医学部)
  • 暁  清文(愛媛大学医学部)
  • 田畑 泰彦(京都大学再生医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
12,099,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は、これまでに、薬物を浸透させた生体吸収性ゼラチンハイドロゲルを中耳正円窓膜上に留置し、薬物がゲルから徐放され、蝸牛外リンパ液中に移行する内耳薬物投与システムを開発した。本研究は、内耳薬物投与システムの感音難聴治療への臨床応用とこれに必要な基礎的開発を行うものである。本研究では、治療薬としてすでに臨床に供されている細胞増殖因子であるインスリン様細胞成長因子1(IGF1)を用いた研究を中心的に行う。
研究方法
1)生体吸収性徐放ゲル投与方法開発
ヒト側頭骨標本10個を用いて、超細径内視鏡を用い、ゲルを正円窓窩に留置する方法を検討した。
2)IGF1内耳局所投与の有効性、安全性検証
モルモット音響外傷モデルおよびスナネズミ内耳虚血モデルを用いて、感音難聴発症後の投与効果について調べた。また、本治療法により生じる有害事象の有無についてラット、モルモットを用いて検討した。
3)急性高度難聴治療臨床試験
過去の厚生省特定疾患突発性難聴研究班の報告書を参考資料とし、第Ⅰ―Ⅱ相臨床試験のプロトコルを京都大学医学部附属病院探索医療検証部の指導の元に作成した。
動物実験は、京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設および愛媛大学医学部の定める倫理規定に準じて行い、京都大学大学院医学研究科および愛媛大学医学部の動物実験委員会の承認を得て行ったものである。
結果と考察
1)生体吸収性徐放ゲル投与方法開発
外耳道から見た正円窓窩の位置やその構造には個体差が認められたが、いずれの個体でも内視鏡下に経鼓膜的にゲルを正円窓窩に留置することが可能であった。
2)IGF1内耳局所投与の有効性、安全性の検証
モルモット音響外傷モデル、スナネズミ内耳虚血モデル双方の実験で、難聴発症後の投与での有効性が確認された。また、本治療法による局所的、全身的な有害事象の発生は認められなかった。
3)急性高度難聴治療臨床試験
突発性難聴および疑い例のうちステロイド無効例を対象疾患とし、単回投与による有効性、安全性の検証を目的としたプロトコルを作成し、京都大学医学部附属病院および愛媛大学医学部附属病院それぞれの倫理委員会への申請を行った。
結論
生体吸収性ゲルを用いたIGF1内耳投与による急性高度難聴治療臨床試験を施行するために必要な基礎的研究、臨床試験プロトコル作成を完了した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
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