文献情報
文献番号
200627020A
報告書区分
総括
研究課題名
角膜内皮機能不全に対する新しい治療方法の開発
課題番号
H18-感覚器-一般-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
山田 昌和(独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 東城 博雅(大阪大学大学院医学系研究科 生化学分子生物学 生命機能研究科細胞ネットワーク・生化学 准教授)
- 東 範行(国立成育医療センター 眼科医長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
角膜内皮機能不全は角膜疾患のなかで最も失明に至る頻度が高く,角膜移植を待機する患者の過半数を占める疾患である。本研究は角膜内皮機能不全に対する新しい治療法として,薬物療法と培養角膜内皮細胞移植による手術治療の開発を行うことを目的とする。
研究方法
角膜内皮細胞の機能の評価には、マウス由来の角膜内皮培養細胞を用い、デキサメサゾン、インスリンを添加し、Na-K ATPaseの酵素活性測定とUssing chamberを用いた内皮ポンプ機能の評価を行った。角膜内皮の増殖制御機構の解析には、培養ヒト角膜内皮細胞を用い、Promyelocytic leukemia zinc finger(PLZF)を含む6つの転写因子の発現パターンをRT-PCRにて検討した。また、PLZFの遺伝子導入を行い、PLZFの増殖抑制効果を検討し、Micro-array法でPLZFの標的遺伝子を検討した。またヒト小児眼組織を用いて、角膜内皮系幹細胞の採取・分離・培養のための条件を検討した。
結果と考察
角膜内皮Na-K ATPaseの酵素活性測定、角膜内皮ポンプ機能測定の双方でデキサメサゾンとインスリンは角膜内皮機能を亢進させることが示された。両者の作用機序は異なり、両者は相加的に作用する可能性があると考えられた。
培養ヒト角膜内皮細胞では、PLZFだけが異なる遺伝子発現パターンを示し、内皮細胞の増殖抑制機構として作用することが示され、そのメカニズムにTSC-22が関与すると考えられた。正常ヒト角膜内皮細胞が体内で増殖しない機序にPLZF遺伝子の発現が考えられ、その発現制御によって角膜内皮細胞を効率よく増殖させることができると考えられた。小児眼組織由来の角膜内皮系幹細胞の同定と培養技術に関しては、角膜内皮を含む組織から間葉系細胞と同様の培養条件で分離可能で、増殖する細胞が存在することが明らかとなった。この細胞の培養条件についてはさらに詳細に検討する必要があると考えられた。
培養ヒト角膜内皮細胞では、PLZFだけが異なる遺伝子発現パターンを示し、内皮細胞の増殖抑制機構として作用することが示され、そのメカニズムにTSC-22が関与すると考えられた。正常ヒト角膜内皮細胞が体内で増殖しない機序にPLZF遺伝子の発現が考えられ、その発現制御によって角膜内皮細胞を効率よく増殖させることができると考えられた。小児眼組織由来の角膜内皮系幹細胞の同定と培養技術に関しては、角膜内皮を含む組織から間葉系細胞と同様の培養条件で分離可能で、増殖する細胞が存在することが明らかとなった。この細胞の培養条件についてはさらに詳細に検討する必要があると考えられた。
結論
角膜内皮機能不全に対する新しい治療法として、角膜内皮機能を活性化させる薬物療法、小児眼組織由来の角膜内皮幹細胞の同定と培養技術の確立、角膜内皮の増殖制御機構の解明による効率の良い角膜内皮細胞増殖法という3つの観点からの研究を行った。これらの研究を更に進め、臨床応用に結びつけていくことで、提供眼不足に苦慮する本邦の角膜移植医療の現状を改善していくことを目標としたい。
公開日・更新日
公開日
2007-08-21
更新日
-