盲ろう者の自立と社会参加を推進するための機器開発・改良支援システムの構築ならびに中間支援者養成プログラムの作成に関する研究

文献情報

文献番号
200627010A
報告書区分
総括
研究課題名
盲ろう者の自立と社会参加を推進するための機器開発・改良支援システムの構築ならびに中間支援者養成プログラムの作成に関する研究
課題番号
H16-感覚器-一般-012
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
中野 泰志(慶應義塾大学)
研究分担者(所属機関)
  • 伊福部 達(東京大学 先端科学技術研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 盲ろう者が家電を制御できる機能モジュールを新たに開発した上で、過去2年間に開発した、情報処理・コミュニケーション機能モジュール、セルフケア機能モジュールと統合し、システム化する。また、本システムの使い方をトレーニングする人材養成用e-learning教材を作成する。
研究方法
1) 家電制御モジュールの開発:エアコン等の家電製品に、盲ろう者が点字情報端末を用いてアクセスできるような機能モジュールを開発する。
2) システム化に向けた各モジュールの評価:これまでに開発してきた機能モジュールをシステム化するにあたって、ユーザの試用テストを実施し、改良点を明確にする。
3) モジュールのシステム化:各機能モジュールを統合し、一貫した方法で操作できるシステムを開発する。
4) 中間支援者養成用e-learning教材の開発:開発したシステムを盲ろう者に紹介したり、トレーニングしたりする中間支援者養成用e-learning教材を作成する。
結果と考察
1) 家電制御モジュールの開発:家電を制御するために様々な方法を検討した結果、多くの機種に対応できる赤外線方式を採用した。赤外線のパターンを記録、再生できる学習リモコン機能を使い、セルフケアサーバーへの追加機能として開発した。
2) システム化に向けた各モジュールの評価:個々のモジュールをシステム化することを前提に一つひとつの操作をユーザ、中間支援者、開発者等、多様なメンバーで検討した。その結果、コミュニケーション支援モジュール、体温計モジュールを改良した。
3) モジュールのシステム化:機能モジュールを統合し、点字情報端末を使って、インタラクティブで一貫性の高いインタフェースのシステムを開発した。本システムの機能モジュールが個別にも利用できるように、4つのユニットに分け、カスタマイズできるようにした。
4) 中間支援者養成用e-learning教材の開発:前年度の評価結果に基づき、ビデオクリップ形式のe-learning教材を作成した。
結論
 新たに家電制御モジュールを開発し、統合的なセルフケア支援システムが開発できた。その開発過程を通して、多様なメンバーのコミュニケーションの課題が明らかになった。また、このシステムを盲ろう者に紹介・トレーニングするための中間支援者養成用e-learning教材が作成できた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200627010B
報告書区分
総合
研究課題名
盲ろう者の自立と社会参加を推進するための機器開発・改良支援システムの構築ならびに中間支援者養成プログラムの作成に関する研究
課題番号
H16-感覚器-一般-012
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
中野 泰志(慶應義塾大学)
研究分担者(所属機関)
  • 伊福部 達(東京大学 先端科学技術研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、盲ろう者の実態やニーズを調査し、コミュニケーションを円滑にし、セルフケア活動を支援するインテリジェントな情報端末を開発・改良し、使い方のトレーニングをする人材を養成するために必要なシステムの構築を目指す。
研究方法
 本研究は、a)ユーザの障害特性に応じたニーズ等の調査、b)セルフケアを支援するインテリジェント情報端末の開発・改良・評価、c)効果的な機器のフィッティングやトレーニング方法の探求及びそれらを担う人材育成プログラムの構築という3つのクラスタで研究を実施した。ニーズ調査では、盲ろう者のセルフケアに関する実態や通訳・介助員派遣事業の実態等について調査した。システム開発では、1)コミュニケーション・情報処理機能モジュール、2)セルフケア支援機器制御機能モジュール、3)情報処理機能モジュールを試作した。人材育成プログラムの構築では、盲ろう者の機器利用を支援する中間支援者の養成システムの現状を明らかした上で、ビデオ教材作成とその効果測定を行った。
結果と考察
 セルフケア機器に搭載すべき機能が障害の実態とライフステージごとに明らかになり、セルフケアを支援するエイドの機能として、体重、体温、血圧の測定について最もニーズの高いことがわかった。また、健康状態を把握するだけでなく、エアコン等の家電製品にアクセスできるようにする必要があることがわかった。そこで、1)セルフケア支援機器制御機能、2)情報処理機能、3)コミュニケーション機能、4)家電制御機能の各機能モジュールを開発し、盲ろう者用セルフケア支援システムを構築した。このシステムを用いることで盲ろう者は、使い慣れた点字情報端末から、体重や体温等のセルフケア情報にアクセスできたり、その情報を管理したり、エアコン等の家電製品を制御したり、離れた場所にいる通訳・介助者等とメールの送受信が可能となる。さらに、本システムを盲ろう者に提供するために、中間支援者を増やすためのe-learning教材を作成した。
結論
 1)盲ろう者の実態やニーズが明らかになった。2)そのニーズに基づいて、コミュニケーションを円滑にし、セルフケア活動を支援するインテリジェントな情報端末を試作できた。3)開発したエイドを速やかにユーザに提供できるようにするために、フィッティングや使い方のトレーニングをする人材を養成するために必要なビデオ教材を作成した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200627010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 数が少なく、全国に点在しているため、その実態が十分には把握できていない盲ろう者及び通訳・介助に関する全国調査が実施でき、その実態が明らかになった。また、盲ろう者にPCの操作を意識させずに体重や体温等を管理できるようにするために、ブルーツースや赤外線通信を活用したシステム開発を行うことができた。さらに、盲ろう者の実態を評価するための基礎研究において、視覚特性をシミュレートする新しい装置や眼球運動を用いた新しい視機能評価手法を考案することができた。
臨床的観点からの成果
 従来、通訳・介助員等を通してしか知ることができなかった体重や体温等の健康管理を盲ろう者が単独で出来るようになった。また、携帯電話を介してのメールのやりとり、エアコン等の家電製品の制御が可能になり、生活の質の向上に貢献することが出来た。さらに、盲ろう者にエイドの使い方を紹介するための中間支援者養成用e-learning教材が作成できた。従来、盲ろう者も通訳・介助員も全国に点在しており、サービスの地域格差が大きかったが、この教材により安定した情報提供が可能になると考えられる。
ガイドライン等の開発
 なし
その他行政的観点からの成果
 盲ろう者に対するITサポートに関する実態は、全国盲ろう者協会でも把握しておらず、重要な基礎データになると考えられる。また、開発した携帯電話を用いたコミュニケーションモジュール、体温計測モジュール、家電製品制御モジュールは、市販品と本研究で開発したソフトウェアを組み合わせただけで利用できるため、研究成果をすぐにユーザに還元できる。人材育成用教材は「都道府県地域生活支援事業」の盲ろう者向け通訳・介助員派遣・養成研修事業に活用できる。
その他のインパクト
 2005年に公開シンポジウムを開催した。その際、本研究の基礎研究として実施した視覚特性をシミュレートする新しい装置がユニバーサルデザインの評価ツールとして注目されている。社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会のアクセシビリティ標準化ワーキンググループ等からデザインの検証に利用したいという申し出があった。さらに、このシミュレーターを用いたユニバーサルデザインの検証場面が、2006年5月9日のNHKニュース7でも紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
International congress series及びConference for Universal Designに掲載された
その他論文(和文)
10件
専門書に解説等が掲載された
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
63件
電子情報通信学会、ヒューマンインタフェース学会、ロービジョン学会等に投稿した
学会発表(国際学会等)
4件
ロービジョン学会、国際UD会議にてポスター発表を行った
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
公開シンポジウムを京都国際会館にて実施

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakano, Y., Arai, T., Nagai, N., Nunokawa, K., et al.
Developing an Evaluation System for Legibility as a Universal Design Tool : Advantages of a low vision simulator utilizing a wide view ground glass filter
The 2nd International Conference for Universal Design,in Kyoto 2006 , 1-10  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-