文献情報
文献番号
200627006A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性サイトメガロウイルス感染症による聴覚障害の実態調査並びに発症予防を目指した基礎的研究
課題番号
H16-感覚器-一般-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
大森 孝一(公立大学法人福島県立医科大学医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 藤枝 憲二(旭川医科大学小児科学講座)
- 錫谷 達夫(公立大学法人福島県立医科大学微生物学講座)
- 筒井 祥博(浜松医科大学病理学第二講座)
- 竹腰 正隆(東海大学医学部基礎医学系)
- 井上 直樹(国立感染症研究所ウイルス1部)
- 片野 晴隆(国立感染症研究所感染病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
16,625,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症は全出生児250?300人に1人起こる頻度の高い感染症であり、不顕性感染者の約8%は、幼児期に進行性の聴覚障害を発症することが解ってきた。 1,000?2,000の出生に1人いるといわれる新生児・幼児の聴覚障害の約30%が先天性CMV感染によるものと予想される。本研究では、「新生児・幼児の聴覚障害者を約30%減少させる」ことを最終目標に、先天性CMV感染症による聴覚障害の実態調査並びに発症予防を目指した基礎的研究を行う。
研究方法
聴覚障害を指摘された新生児・幼児患者に対して、他覚的精密聴力検査を行い、臍帯をPCR法で調べ、先天性CMV感染を確定診断する。新生児聴覚スクリーニングを行い、聴覚障害の実態調査を行う。CMV株の遺伝子型の検討を行い、難聴を引き起こしやすい遺伝子型の有無に有無を検討する。多様なCMV株に対応できる抗体を樹立する。モルモット、マウスの実験系を用い、先天性CMV感染の聴覚障害機序を解析する。
結果と考察
福島県の聴覚障害児67名の乾燥臍帯を解析した。10名が先天性CMV感染者であった。聴覚障害を来しやすいCMV遺伝子型の傾向はなかった。福島県で新生児聴覚スクリーニング体制を整備し、13,709人に自動ABR検査を行い、要精検となった乳児に対しABR、ASSR、CORによる精密聴力検査の結果、要精密検査となった23例のうち3例は正常聴力、6例が両側難聴、13例が片側難聴と診断された。中和活性を有するヒト型抗CMVモノクローナル抗体を樹立した。植物でヒト抗体を産生することにも成功した。モルモット垂直感染モデル、マウス血行感染モデル、いずれの実験系においても蝸牛外リンパ腔領域、らせん神経節にCMVの局在を証明した。
結論
聴覚障害児の臍帯からCMV感染の確認を行うことにより、少なくとも2歳以前に発症した高度感音難聴症例のおよそ2割が先天性CMV感染によることを明らかにすることができた。植物を用いて中和活性をもつヒト型抗体を産生することに成功し、今後の抗体を用いたCMV感染への治療法へ向け、一歩前進することができた。ヒトの先天感染に近い小動物による感染モデルを作成することができた。 これらの結果をふまえ、先天性CMV感染による聴力障害のメカニズムを明らかにし、先天性CMV感染による聴力障害の発症予防まで発展させたい。
公開日・更新日
公開日
2007-08-21
更新日
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