脊髄損傷者の生活習慣病・二次的障害予防のための適切な運動処方・生活指導に関する研究

文献情報

文献番号
200626022A
報告書区分
総括
研究課題名
脊髄損傷者の生活習慣病・二次的障害予防のための適切な運動処方・生活指導に関する研究
課題番号
H17-障害-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
佐久間 肇(国立身体障害者リハビリテーションセンター・病院)
研究分担者(所属機関)
  • 中澤 公孝(国立身体障害者リハビリテーションセンター・研究所)
  • 樋口 幸治(国立身体障害者リハビリテーションセンター・病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
4,063,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脊髄損傷者の生活習慣病、二次障害の実態を臨床検査にて明らかにするとともに、運動習慣有無が臨床検査や体力指標におよぼす影響を検討する。また、栄養指導の基礎研究として、脊髄損傷者の基礎代謝量を測定する。
研究方法
脊髄損傷者102名を対象に主に生活習慣病、二次障害に関係する臨床検査(身体計測、血液・尿検査、CTによる内臓脂肪・骨密度測定)および安静時代謝量測定を行い、また、88名を対象に上肢エルゴメーターを用いた身体作業能力テストおよびMSQ心理テストを行った。
結果と考察
臨床検査では、内臓脂肪高値を40%に認めたほか、高脂血症を40%、インスリン抵抗性(HOMA-R)28%、正常高値血圧以上の血圧高値を23%、空腹時血糖高値を12%、HbA1c高値を6%に認めるなどの状況を確認した。
推定最大酸素摂取量は、胸・腰髄損傷者では非運動群が有意に低値を示したが、頸髄損傷群では、両群に有意な差を認めなかった。内臓脂肪および腹囲は、非運動群の胸・腰髄損傷群では基準値を大きく超えた。MQSポジティブスコアは、運動群が有意に高値を示した。定期的な運動やスポーツは、障害レベルによらず有意な心理的改善をもたらすが、生活習慣病予防・治療には、障害レベルにより、適切なスポーツ種目を選択することが必要であると考えられた。
脊髄損傷者の安静時代謝量(REE)は 1219 ± 267 kcal/dayで、REE/1.2により算出した基礎代謝量(BEE)は、1016 ± 222 kcal/日であった。「日本人の食事摂取基準」の基礎代謝基準値より算出したBEE(1397 ± 259 kcal/日)と比較し、その差は381 ± 196 kcal/日あり、「日本人の食事摂取基準」を活用した栄養計画では、脊髄損傷者の推定エネルギー必要量が過大評価になることが示唆された。
結論
1.脊髄損傷者において、腹腔内脂肪面積、高脂血症、インスリン抵抗性、血圧高値、血糖高値な どの生活習慣病および予備軍的異常を多く認めた。
2.定期的な運動の生活習慣病予防効果は、障害によってその種目特性が大きく関連すると思われ、適切な運動種目選択が必須であると考えられた。
3.現在、一般に設定されている栄養摂取基準は、脊髄損傷者には適用されない。生活習慣病予防の適切な栄養管理の確立には、さらなる脊髄損傷者における基礎代謝量や推定エネルギー必要量算定などの基礎的検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
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