支援機器利用効果の科学的根拠算出に関する研究

文献情報

文献番号
200626020A
報告書区分
総括
研究課題名
支援機器利用効果の科学的根拠算出に関する研究
課題番号
H17-障害-一般-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
中邑 賢龍(東京大学先端科学技術研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 巖淵 守(広島大学大学院)
  • 坂井 聡(香川大学 教育学部)
  • 苅田 知則(愛媛大学 教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,456,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 支援技術の開発や利用を促進するためには,給付制度の拡充,支援者養成,開発者支援など様々な支援が必要であるが,その裏付けのためにも,支援機器利用効果の量的な試算が必要である。本研究は支援機器利用効果をコスト・時間面などの効率化について検討し,今後の福祉機器供給について論じることを目的とした。
研究方法
 電動車いす利用者の生活シュミレーションから電動車いすが無い場合の介護コストを試算すると同時に,電動車いすと手動車いすを利用した買い物時の行動の比較から電動車いす導入の効果を検討した。また,視覚障害者,知的障害や自閉症のある人に対する支援機器導入の効果についても,シュミレーションや質問紙により検討を行った。

結果と考察
・肢体不自由者が電動車いすを6年で償却するとした時のコストは,電動車いすが無い場合に発生する介護コストを大きく下回ること,また,買い物時の電動車いす利用は,移動や停止回数が増加するなど自由度を高め,会話の質を向上させるなどの効果をもたらした。
・視覚障害者の支援技術利用に関しても,経済的効果,時間短縮効果,心理的効果が示された。
・知的障害や自閉症のある人に対する支援機器導入の効果について,携帯用会話補助装置に関しては,教育的には発語が増加した,心理的にはパニックが減少したなどの効果が報告された。一方,実用的な会話のために常時それを利用する協力者は少なく,利用停止や放棄の実態も示された。

結論
 本研究では,支援技術の導入が,コスト・時間面などの効率化に大きく影響することが示された。しかし,障害や機器によって利用効果の現れ方は大きく異なる。電動車いすについては日常生活の道具としてほぼ常時利用されており,心理的効果の大きさと合わせて社会的コストの削減に大きな役割を果たしている。一方,携帯用会話補助装置に関しては、エイドというよりは教育訓練機器として利用されることが多く,そのため日常的に利用がみられない。機器機能の制限もあるが,社会で活用する場も少ないことに起因している。教育制度でカバーされるべき色合いの強い機器だと言える。今後,エビデンスに基づく機器供給のあり方が検討されるべきである。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200626020B
報告書区分
総合
研究課題名
支援機器利用効果の科学的根拠算出に関する研究
課題番号
H17-障害-一般-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
中邑 賢龍(東京大学先端科学技術研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 巖淵 守(広島大学大学院)
  • 坂井 聡(香川大学 教育学部)
  • 苅田 知則(香川大学 教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 支援技術の開発や利用を促進するためには,支援者養成,開発者支援など様々な支援が必要であるが,その裏付けのためにも,支援機器利用効果の量的な試算が必要である。障害福祉制度の見直しが図られるこの時期に,支援機器に関する科学的根拠を収集できる体制を整えておく必要がある。そこで本研究は支援機器利用効果を多面的に算出し、今後の福祉機器供給について論じることを目的とした。
研究方法
 平成17年度は,支援技術利用効果測定スケールに関する文献資料を国内外から広範に収集し,整理すると同時に,時間軸を組み込んだ独自の尺度も作成した。同時に,当事者に対し,これらの尺度とインタビューを用いて,支援技術利用の心理的効果に関して検討を行った。さらに,介護士など専門家への支援技術に関する質問紙を通してもその効果をみた。
 平成18年度は,主としてコスト・時間面などの効率化について,生活のシュミレーションと観察を通じて,支援技術の導入がコスト・時間面にどのような影響を及ぼすか算出した。また,海外の支援技術エビデンス活用の実態についても調査を行った。
結果と考察
 海外では,様々な効果測定スケールが開発されているが,その測定に時間とコストがかかり,現状では,その利用は限定されている実態が明らかになった。
 17,18年度の研究結果として,支援技術は大きな心理的,教育的効果を生み出していることが示された。また,コストや時間の効率化でも大きなメリットを生み出している。ただし,その効果は機器や障害によって異なっている。電動車いすのように,心理面や介護費削減で大きな効果のある機器もあれば,携帯用会話補助装置のように,教育面で大きな役割を果たす機器もある。また,専門家からは,身体的疲労,支援技術による生活圏の拡大が生み出すトラブルなどマイナス面も指摘された。
結論
 本研究を通して,支援技術利用効果が量的に示された。今後,機器それぞれの利用効果測定を行い,適正かつ合理的な給付を検討する必要である。そのためには,福祉機器を国の社会制度の中でどのように位置づけるかスタンスを明確にしておくことが重要であり,そこから様々な次元のエビデンスをどのように統合し利用するかについての明確な方向が見えてくると思われる。さらに,エビデンス自動収集ソフト,制度によるエビデンス収集の義務化など,エビデンスを収集する仕組みについても検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200626020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
今回の研究にあたり開発した時間軸を考慮に入れた支援技術の効果測定尺度は,ウィスコンシン大学Smith教授との討議の中でも高く評価されており,今年のAAATEカンファレンスで発表予定である。また,今回明らかになった筋ジストロフィ者の手動車いす,電動車いす導入時の自己効力感の変化はリハビリテーションと機器導入を考える興味深いデータであり,学術誌に投稿準備を進めている。
臨床的観点からの成果
本研究成果は,作業療法士,言語聴覚士の臨床現場での機器評価に活用できる。特に,様々な支援機器利用効果の評価尺度のまとめは,彼らが利用すべき尺度の選択に有用であると考える。また,我々が開発した時間軸を考慮した評価尺度も心理的効果をダイナミックに把握する上で活用できると考える。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
 本研究は,支援機器の開発・普及に関する促進方策を策定する上で有用なデータを提供すると考えられる。科学的根拠が明確になることで,支援技術機器の安定した供給やそのサポートシステムの確立も容易になる。支援機器利用によってもたらされる活動の拡大は,家族の介護負担低減,ヘルパー派遣の削減,就労支援,地域生活における役割創出など,障害のある人のみならずすべての国民の豊かな生活創出に貢献できると思われる。
その他のインパクト
平成18年12月3日 京都国際会館において成果発表会を実施し,約200名の参加者があった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-