知的障害児・者の機能退行の要因分析と予防体系開発に関する研究

文献情報

文献番号
200626005A
報告書区分
総括
研究課題名
知的障害児・者の機能退行の要因分析と予防体系開発に関する研究
課題番号
H16-障害-一般-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
加我 牧子(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 稲垣真澄(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 阿部敏明(あしかがの森足利病院)
  • 杉江秀夫(浜松発達医療総合センター)
  • 西脇俊二(国立秩父学園)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,187,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
知的障害児・者における「機能退行」の実態を明らかにし、退行からの回復または出現抑制、予防方策を明らかにすることを目的とする。
研究方法
全国の知的障害関連1005施設に対し、健康増進活動と機能退行の実態を調査した。健康状況変化については国際生活機能分類(ICF)の観点から「心身機能」13項目と「活動性低下」12項目を解析した。某モデル地域で保護者からみた退行を施設側と比較し、某更生施設での3年間の継続調査の意義を検討した。地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)の機能退行への意義も検討した。
結果と考察
364施設(36.2%)が回答し、利用者は様々な作業や活動に参加していた。健康診断の頻度は高く、退行予防策として異常の早期発見・対応、適度な運動、食事管理の重要性を認識していた。75%以上の施設で機能退行を経験し、利用者総数からみた退行頻度は、4.9?9.9%であった。
退行項目は「心身機能低下」のうち体重変動、内科疾患、目の症状、尿・便失禁が「活動性低下」では歩行不安定、動作緩慢、身辺自立・集中力低下、性格変化が重要であった。知的障害者では40代、自閉症者では30代から始まる傾向があり、ダウン症では記憶力・身辺自立の低下などが数カ月以内に進行する例が多かった。退行阻止要因には内科疾患の早期診断と治療、体重変動の管理があげられた。
保護者は8割の利用者に変化がみられたとした。今後、個人の健康に関する記録を共有し、施設・保護者・医療機関の視点を補完しあい、健康維持増進の支援を行うことが重要である。継続調査の比較では、2年目に改善すると3年目も維持できていることが判明し、適切な関わりの重要性が指摘できた。CBR実施前と実施後(3?4ヶ月)に比較調査で意義が確認できた。
結論
(1) 全国の知的障害関連施設1005に対し機能退行の有無をICFに準拠して調査した。
(2) 364施設の回答を得、利用者総数からみた退行頻度は、4.9?9.9%に達していた。
(3) 心身機能低下では体重変動、内科疾患、目の症状など、活動性低下では歩行不安定、動作緩慢、身辺自立・集中力低下、性格変化が重要であった。
(3) 各施設とも退行予防策として、異常の早期発見・早期対応、適度な運動、食事管理の重要性が認識しており、内科疾患の管理に注意すべきである。
(4)施設・保護者・医療機関の視点を補完し、健康維持増進の支援を行うことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200626005B
報告書区分
総合
研究課題名
知的障害児・者の機能退行の要因分析と予防体系開発に関する研究
課題番号
H16-障害-一般-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
加我 牧子(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 稲垣真澄(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 阿部敏明(あしかがの森足利病院)
  • 杉江秀夫(浜松発達医療総合センター)
  • 西脇俊二(国立秩父学園)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
知的障害児・者における「機能退行」の実態を明らかにし、退行からの回復または出現抑制、予防方策を明らかにすることを目的とする。
研究方法
知的障害者の機能退行の実態把握のため調査項目として国際生活機能分類(ICF)を利用する上でICFの心身機能77項目、活動状況82項目による調査票を作成した。初年度は分担研究者が関係する施設で精密な評価を行い、次年度は発達障害医療の専門医師に退行の経験を調査した。三年度は心身機能13項目と活動性低下12項目を選択し、全国の知的障害関連1005施設調査と保護者への調査の比較を行った。
結果と考察
初年度詳細調査で自閉症成人の30%に退行が認められ、持久力低下、行動異常が多かった。活動制限があっても社会生活に加わることが退行予防につながった。発達障害医療経験が長い医師ほど機能退行経験率も高かった。全国調査には364施設(36.2%)が回答し、施設は退行予防策として異常の早期発見・対応、適度な運動、食事管理の重要性を認識していた。75%以上の施設で機能退行を経験し、利用者総数からみた退行頻度は、4.9~9.9%で、対策の必要性が明らかであった。
退行項目は「心身機能低下」のうち体重変動、内科疾患、目の症状など「活動性低下」は歩行不安定、動作緩慢、身辺自立・集中力低下、性格変化が重要であった。ダウン症では数カ月以内の進行例があった。退行阻止要因には内科疾患の早期診断と治療、体重変動の管理があげられた。
保護者は8割に変化がみられたとした。各立場の視点を補完と、健康維持増進の支援が重要である。継続調査には共通言語としてICFは有用で、利用者への適切な関わりの重要性が指摘できた。
結論
(1) 知的障害者の機能退行につきICFを用いた評価を行った。
(2) 知的障害関連1005施設に対し機能退行の有無をICFに準拠して調査した。
(3) 364施設の回答を得、利用者総数からみた退行頻度は、4.9~9.9%に達した。
(4) 心身機能低下では体重変動、内科疾患、目の症状など、活動性低下では歩行不安定、動作緩慢、身辺自立・集中力低下、性格変化が重要であった。
(5) 各施設とも退行予防策として異常の早期発見・対応、適度な運動、食事管理の重要性を認識しており、内科疾患の管理に注意すべきである。
(6)施設・保護者・医療機関の視点を補完し、健康維持増進の支援を行う必要がある。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200626005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国際生活機能分類(ICF)の考え方を採用し、知的障害者の機能退行の症状をICFの心身機能と活動性低下の項目から厳選し調査票を作成し、少数精鋭の精密な評価を実施した後、多数例での汎化をめざし全国の知的障害関連1005施設調査と保護者への調査の比較を行った。内科疾患は重要な要因でほかに原因不明の知的障害では失禁、ダウン症候群では目の症状、自閉症では体重の変動が重要で、歩行不安定、動作緩慢、身辺自立・集中力低下、性格変化が表れることが問題であった。発生頻度は4.9?9.9%であることが判明した。
臨床的観点からの成果
臨床的に問題となる上記の機能退行は数ヶ月から数年の間で進行することが多いが、数ヶ月以内に急激に進行することが多いのはダウン症の身辺自立低下と自閉症では体重変動であることが判明した。施設利用者の状態を正確に評価し、家庭環境を安定化するなど知的障害に関わる人々が協力連携することや、活動性低下の進行を阻止するため退行のサインへ早期に対応すること、身体疾患を早期に発見し、治療することが重要であることが明らかとなった。
ガイドライン等の開発
知的障害者の機能退行の実態と予防法についての三年間の研究成果に基づき、施設関係者や利用者の方々に知っていただきたいことをわかりやすくまとめて、「知的障害のあるひとの機能退行をふせぐために」というパンフレットを作成した。知的障害のある人たちの健康生活を保持・増進する上で活用いただけるよう広く配布するため、現在印刷中である。
その他行政的観点からの成果
知的障害のある方々の機能退行は現場で語られることが多い割には、客観的に検証できる形で調査が充分に行われてこなかったが、機能退行の内容や時期、原疾患による差、発生率が評価できた点は特に有意義であった。客観的な検証を確実にするため初年度は分担研究者の目が行き届く範囲で詳しい評価を行い、次年度以降、多数例での検証を行えるように準備を行う手法は今後も取り入れる価値があると考えられる。リアルタイムでの機能退行の全貌は三年間の研究のみでは完成できないが、行政での調査でもICFは有効に活用できると考える。
その他のインパクト
知的障害者がいつまでも元気に地域で暮らしていくためにというコンセプトのもと、施設にできること、保護者にできること、医療機関にできることを提案し、相互に連携・協力しあうことで目的を実現するできることを強調した。日常の生活のなかで機能退行を防ぐ方法や、改善する方法も提言した。

発表件数

原著論文(和文)
11件
加我牧子,稲垣真澄:医師のための発達障害児・者 診断治療ガイド 2006、 稲垣、田中恭子、加我:知的障害のある人のための健康生活支援ノート-円滑な連携を目指して. 2005.を出版(診断と治療社)
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
第48回、49回日本小児神経学会など
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-