内臓肥満の要因と動脈硬化促進に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200624047A
報告書区分
総括
研究課題名
内臓肥満の要因と動脈硬化促進に関する総合的研究
課題番号
H18-循環器等(生習)-一般-045
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
下方 浩史(国立長寿医療センター研究所疫学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山下 均(中部大学生命健康科学部)
  • 安藤富士子(国立長寿医療センター研究所疫学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肥満、特に内臓肥満は生活習慣病の重要な要因である。本研究ではその発生要因、機序、遺伝素因を明らかにするため、動物実験による基礎研究とヒトを対象とした臨床疫学研究による総合的検討を行うことを目的とした。
研究方法
基礎研究では高脂肪食の摂取によりインスリン抵抗性を伴う内臓肥満を発症する褐色脂肪組織熱産生蛋白質(UCP1)欠損マウス(UCP1-KOマウス)を用いて、内臓肥満発症のメカニズムの検討を行った。臨床疫学研究では国立長寿医療センター研究所・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)第2次調査に参加した40-82歳の無作為抽出された中高年地域住民2,259名を対象に、内臓肥満の性別、年齢別の頻度、内臓脂肪量の関連因子を検討した。
結果と考察
基礎研究:UCP1-KOマウスは加齢とともに脂肪肝や心肥大を伴う強度の内臓肥満を発症した。遺伝子発現の解析から脂肪組織で筋型脂肪酸結合蛋白質(FABP3)が異所性に誘導されることが見出され、体重増加と強く相関していることが明らかとなった。FABP3が内臓肥満の新たなマーカーとなる可能性を示した。
臨床研究:腹部CTでの内臓脂肪面積を測定し、性別・年齢別の内臓肥満の頻度および加齢よって内臓肥満が増加することを明らかにした。腹部CTでの内臓脂肪面積100cm2に相当するウエストの大きさは50歳以降の女性ではメタボリック・シンドローム基準値を大きく下回っていた。一方、ウエストが基準値である場合のBMIは加齢により有意に低下していた。内臓肥満に関わる要因について運動、体力、喫煙、飲酒、食事、栄養、基礎代謝と内臓肥満との関連について検討を行った。男性では喫煙で内臓脂肪が増加、また少量飲酒で内臓脂肪が低下していた。また男女ともに内臓脂肪が多いほど体重当たりの安静時代謝量が減っていた。内臓脂肪と食品摂取との関連は男女ともほとんど認められなかった。歩数や運動量が少ないほど男女とも内臓脂肪面積が大きくなっていた。内臓肥満感受性遺伝子多型の網羅的検討を行い、8種の遺伝子多型が年齢を調整した多重ロジスティック回帰分析で内臓肥満と有意に関連することを明らかにした。
結論
加齢とともに内臓肥満を呈するマウスのモデルを用いて、FABP3が内臓肥満の要因である可能性を示した。地域住民の検討で高齢者では内臓肥満のウエスト基準値再評価の必要性が示唆された。喫煙および飲酒への内臓脂肪への影響、内臓肥満者での安静時代謝量の低下を明らかにした。内臓肥満に影響を与える遺伝子多型を見出した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
-