全国患者登録データを用いたわが国の慢性心不全患者の急性増悪・難治化要因の解明と効果的治療法の確立

文献情報

文献番号
200624035A
報告書区分
総括
研究課題名
全国患者登録データを用いたわが国の慢性心不全患者の急性増悪・難治化要因の解明と効果的治療法の確立
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-033
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
筒井 裕之(北海道大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 徹(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院)
  • 米澤 一也(国立病院機構函館病院 臨床研究部)
  • 下川 宏明(東北大学大学院医学系研究科 循環器病態学分野)
  • 永井 良三(東京大学大学院医学系研究科医学部器官病態内科学講座)
  • 和泉 徹(北里大学医学部内科学Ⅱ)
  • 小川 聡(慶應義塾大学医学部呼吸循環器内科学)
  • 横山 広行(国立病院機構 静岡医療センター  循環器科)
  • 藤原 久義(岐阜大学医学部第二内科学)
  • 友池 仁暢(国立循環器病センター病院)
  • 堀 正二(大阪大学大学院医学系研究科医学部病態情報内科学講座)
  • 横山 光宏(神戸大学大学院医学系研究科医学部循環呼吸器病態学講座)
  • 葭山 稔(大阪市立大学大学院医学研究科 循環器病態内科学)
  • 松﨑 益德(山口大学医学部器官制御医科学講座)
  • 今泉 勉(久留米大学医学部心臓・血管内科)
  • 松本 高宏(国立病院機構九州医療センター 循環器科)
  • 山崎 力(東京大学大学院医学系研究科 クリニカルバイオインフォマティクス研究ユニット)
  • 溝上 哲也(国立国際医療センター 疫学統計研究部)
  • 岸 玲子(北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
29,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、わが国において初めてとなる慢性心不全患者を対象とした全国規模での患者登録データを構築することによって心不全の急性増悪・難治化要因を解明し、効果的治療法の確立を目指すものである。
研究方法
急性増悪のために入院治療を行った慢性心不全患者を対象とした全国規模での患者登録データを構築する。インターネットにホームページを開設し、ユーザーIDとパスワードを付与された各施設の医師がホームページから直接患者データを登録する。本研究は、前向き登録研究であり、治療への介入は行わない。多数の患者を対象として、臨床像と予後との関連、特に治療内容と予後との関連を解析する。
結果と考察
平成18年度は、全国の日本循環器学会研修施設から登録された慢性心不全2564例の患者基礎データベースを確立した。患者の男女比は6:4であった。平均年齢は71歳で、65歳以上の高齢者が70%を占めた。特に女性の高齢者の占める割合が高かった。心不全の原因となる主たる基礎心疾患は、虚血、弁膜症、高血圧、拡張型心筋症であった。左室駆出率40%以下の収縮不全が60%を占めるのに対し、50%以上と比較的保たれた患者も23%であった。このような患者は、近年拡張不全による心不全として注目されているが、収縮不全に比し、高齢者、女性、高血圧、心房細動をより多くみとめた。院内死亡率は、収縮不全3.9%、拡張不全6.8%であった。わが国の慢性心不全患者を、米国における同様の登録研究であるADHEREの登録患者と比較すると、臨床像には共通点が多いことが明らかとなった。さらに、院内死亡の規定因子を多変量解析により検討すると、貧血、心不全増悪による入院の既往、BNP高値が独立したリスクであった。
慢性心不全患者の実態をさらに明らかにするために、地域住民の中で外来治療を受けている患者を対象とした調査も実施した。地域の循環器科病院と一般開業医で治療を受けている患者を登録し、追跡を行った。一般開業医に通院する慢性心不全患者は、さらに高齢であり、基礎疾患として虚血と高血圧がより多かった。特に高血圧性心疾患は、開業医に通院する慢性心不全患者の47%を占め、心不全の発症・進展を予防するためには、高血圧の治療・管理の重要性が示された。
結論
本研究によって、わが国の慢性心不全患者における急性増悪・難治化要因の解明や各種治療法の効果の判定など極めて貴重な情報を得られると期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
-