少子化社会における家族等のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
199700210A
報告書区分
総括
研究課題名
少子化社会における家族等のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
袖井 孝子(お茶の水女子大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 社会保障・人口問題政策調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、我が国の出生率は低下傾向にあり、少子・高齢社会の到来は、現実のものとなりつつある。これまでの少子化に関する調査研究としては、少子化による社会経済への影響や、少子化の要因の分析があげられる。しかし、少子化の背景には、固定的な男女の役割分業意識や雇用慣行、産業構造や就業構造の変化に伴う人口の移動や核家族化の進行など、我が国社会全体の状況が深く関連していると考えられる。したがって、これまでの社会情勢の変化と今後の見通しを踏まえた上で、少子化が我が国社会全体の状況とどのように関連しているかを探り、少子社会における「家族」とそれを支える「地域」等のあり方について考察を行う。
研究方法
本研究は主に次ぎの2つの部分から構成される。
(1)文献研究による少子化の背景の整理
有識者調査を実施するにあたり、既存の調査研究における少子化の背景に関する整理を行い、それを有識者調査のアンケート票に活用していく。
(2)有識者調査の実施および分析
政府審議会委員、家族・少子化などに関する有識者、行政担当者、企業経営者、女性取締役、労働組合トップ、マスコミ関係者等に2,704名の有識者を対象に郵送法によるアンケート調査を行い、780名の回答を得た。
結果と考察
女性のライフコースをみると2010年には、「専業主婦」よりも「共働き(両方がフルタイム、一方がパート)」の方が一般化していると考えられる。また、現状ではまだまだ少ない「離婚」、「事実婚」、「ひとり親家族」も一般化し、家族の多様化が急速に進展していくとみられる。特に、女性有識者において、そうした意識をもつ割合が高かった。又、家族のあり方については、家事や子育てを夫婦が分担・共同しておこなうべきだという意見が多くなっているが、これについても男女間に大きな相違がみられ、女性に比較して男性の方がより保守的であり旧来的な家族意識をもっているといえよう。
出生率の低下については、83.6%の有識者が深刻な問題であると考えており、その影響としては「高齢化に伴う現役世代の負担の増大」、「労働力人口の減少」などに強く表れてくるという回答が多かった。こうした状況に対して、政府が少子化に対して取り組むスタンスとしては、「個人の望む結婚や出産を阻んでいる要因をとり除く限りにおいて対応を図るべきである」という意見が約7割となっている。
今後、急速に家族の多様化が進展していくことについては、多くの有識者が認識しているが、その認識度合いについては男女間で大きな違いがみられた。すなわち、男性の方が女性に比較して、旧来的な家族のあり方にとらわれているという意識に表れている。これは、ただ単に男女の違いというだけではなく、男性有識者の方が女性有識者よりも相対的に高齢であるという年齢効果が影響しているためでもある。こうした認識の違いを背景として、家族に対する考え方だけではなく、企業における取り組みについても、男性有識者の方が保守的であるという意識につながっている。将来的に人々が自ら希望するような生活を送れるような社会とするためには、男性有識者の意識改革が求められる。出生率の低下については、重要な問題であり政府として対応が必要であるという考え方が多くを占めており、少子化対策はより一層重要になる。その際の取り組み方としては、個人の望む結婚や出産を阻んでいる要因を取り除く限りにおいて取り組むことが望まれており、多様な価値観、多様なライフスタイルを支援するような施策が重要である。
結論
2010年に向け家族は多様化してゆき、従来、家族によって担われてきた「子育て」の機能は弱まっていくと考えられる。こうした状況の中で、従来の概念にとらわれず、新しい社会を実現していくためには、パラダイムシフトが必要である。
重要なことは、従来のように「家族」を前提にした対応ではなく「個人」をベースとし、様々な状況の個人が自らの望む生き方ができるような環境を整備するといった観点からの施策を展開していくことであろう。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)