弓部大動脈全置換術における超低体温療法と中等度低体温療法のランダム化比較試験

文献情報

文献番号
200624033A
報告書区分
総括
研究課題名
弓部大動脈全置換術における超低体温療法と中等度低体温療法のランダム化比較試験
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-031
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
荻野 均(国立循環器病センター心臓血管外科)
研究分担者(所属機関)
  • 数井 暉久(浜松医科大学第一外科)
  • 田林 晄一(東北大学心臓血管外科)
  • 羽生 道弥(小倉記念病院心臓血管外科)
  • 大北 裕(神戸大学呼吸循環器外科)
  • 八木原 俊克(国立循環器病センター心臓血管外科)
  • 長束 一行(国立循環器病センター脳血管内科)
  • 新澤 正秀(国立循環器病センター麻酔科)
  • 宮田 茂樹(国立循環器病センター輸血管理室)
  • 嘉田 晃子(国立循環器病センター研究所病因部)
  • 松田 均(国立循環器病センター心臓血管外科)
  • 湊谷 謙司(国立循環器病センター心臓血管外科)
  • 佐々木 啓明(国立循環器病センター心臓血管外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
弓部大動脈全置換術は、様々な脳保護手段が開発され著しい成績の向上をみた。いずれの方法も20℃前後の超低体温を前提としてきたが、最近になり、生理的な選択的順行性脳灌流下では必ずしも超低体温下の必要がなく、中等度低体温下手術が試みられている。しかしながら、超低体温下手術と中等度低体温下手術を厳密に比較した報告は未だない。本研究(JSTAR I)は、中等度低体温と超低体温における多施設共同前向き調査研究を行い、それぞれの弓部全置換術の特徴を明らかにしようとするものである。最終的には、得られた利点のいくつかを主要項目として設定し、より厳密に二群間でランダム化比較試験(JSTAR II)を行う予定である。
研究方法
選択的順行性脳灌流を脳保護手段とした弓部全置換術において、28℃中等度低体温と20℃超低体温療法を比較し特徴を明らかにする。手術は、胸骨正中切開下に選択的順行性脳灌流を脳保護手段として、4分枝人工血管を用いた弓部分枝個別再建法により弓部全置換を行う。評価項目は、1) 術後30日以内死亡、および脳・脊髄障害、心臓障害、肺障害、腎障害、出血、感染、などの合併症の発生割合、および2)臨床データ: ① 手術方法 ②出血量・輸血量 ③循環動態計測 ④呼吸状態 ⑤脳神経機能 ⑥腎機能、肝機能 ⑦凝固機能、⑧ 回復状況、 などとした。研究期間は約10カ月で、5施設で調査研究を行った。
結果と考察
登録期間中に53例の症例登録があった。6カ月後のデータがないため完全な解析に至っていない。二群間には術前状態に差があり単一症例群の比較ではないため、厳密な比較検討ではないが、中等度低体温群で、1)死亡、合併症などの有害事象の発生が少ない、2)総輸血量が少ない、3)術後出血量が少ない、4)術後覚醒時間が早い、5)術後挿管時間が短い、6)ICU滞在期間が短い、などの傾向がみられた。そこで次に、総輸血量の差を主要評価項目に、死亡・合併症の発生割合や術後人工呼吸管理期間などを副次的評価項目として設定し、多施設(6施設)でランダム化比較試験を行う予定である。
結論
JSTAR Iで、中等度低体温手術群において、輸血(出血)が少ない、術後回復が早い、などの傾向が見られたが、次のランダム化比較試験(JSTAR II)での結論を待つ必要がある。

公開日・更新日

公開日
2007-05-07
更新日
-