未破裂脳動脈瘤の要因、治療法選択におけるリスク・コミュニケーションに関する研究

文献情報

文献番号
200623018A
報告書区分
総括
研究課題名
未破裂脳動脈瘤の要因、治療法選択におけるリスク・コミュニケーションに関する研究
課題番号
H16-心筋-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 信夫(京都大学大学院医学研究科脳統御医科学系専攻脳病態生理学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 小泉 昭夫(京都大学大学院医学研究科)
  • 福原 俊一(京都大学大学院医学研究科)
  • 宝金 清博(札幌医科大学脳神経外科)
  • 森田 明夫(東京大学大学院医学系研究科)
  • 池田 俊也(慶應義塾大学医学部)
  • 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科)
  • 野崎 和彦(京都大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究【心筋梗塞・脳卒中臨床研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
37,736,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳動脈瘤とクモ膜下出血による社会の疾病負担の軽減を目指し、各リスク情報の把握と整備、それに基づいた臨床医と患者間のコミュニケーションの視点から質的研究の手法も採用し患者の心理的負担を明らかにし、疫学的に解明された脳動脈瘤の危険因子情報や、未破裂動脈瘤への予防的介入が対象者のQOLに与える影響を測定し、介入の費用効果・効用分析へと展開させるための基礎資料の整備を目指す。また医療者側の治療決定の過程、現状を解析し妥当性を評価する。さらに患者が医療者と情報を共有した上で意思決定を行うShared decision makingを実現させるために意思決定支援ツールを開発、評価する。
研究方法
研究全体をu-CARE (Unruptured Cerebral Aneurysm study for better Risk communication and Evidence-based decision making)とし、3つの柱u-CAS:リスク情報の整備、u-TREAT:医師側の方針決定の評価研究、u-SHARE:患者側の意志決定支援研究を同時進行させた。
結果と考察
家族性脳動脈瘤30家系190名について連鎖解析を行い関連遺伝子を同定した。UCAS Japan研究において、年間破裂率は約1%、自然歴は、動脈瘤の大きさ、部位、年齢に強く影響されること、また日本での治療成績は欧米に比し優れており、治療成績は大きさ、部位および年齢に影響されることがわかった。現在QOLを含めた追跡調査UCASIIを行っている。Cost-efectivenessの研究では経過観察を行った場合に比べ予防的手術を実施した場合に追加費用が生じるが、3-4QALYsの増加が期待でき予防的手術の費用対効果は良好な水準であることが判明した。U-TREATにおいては未破裂脳動脈瘤の治療におけるpractice variationは、動脈瘤の大きさ、位置などの動脈瘤因子、治療者側の専門性、患者の希望などが強く影響されることが立証された。U-SHAREでは患者説明用のDVD作成と個々の患者が簡便に決断分析を行う意思決定支援システムを開発し、そのプレリミナリーな評価を行った。
結論
我が国における未破裂脳動脈瘤のリスク、治療のリスク、医療側の治療のバリエーションが明らかとなった。今後も、日本における臨床データに基づいたリスク情報の整備、医師側の治療実態の解析、患者側のニーズの評価、QOLを考慮した費用対効果の解析を継続し、患者と医療者の意思決定に役立つ意思決定支援ツールの開発を目指していく。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

文献情報

文献番号
200623018B
報告書区分
総合
研究課題名
未破裂脳動脈瘤の要因、治療法選択におけるリスク・コミュニケーションに関する研究
課題番号
H16-心筋-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 信夫(京都大学大学院医学研究科脳統御医科学系専攻脳病態生理学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 小泉 昭夫(京都大学大学院医学研究科)
  • 白川 太郎(京都大学大学院医学研究科)
  • 福原 俊一(京都大学大学院医学研究科)
  • 宝金 清博(札幌医科大学脳神経外科)
  • 森田 明夫(東京大学大学院医学系研究科)
  • 池田 俊也(慶應義塾大学医学部)
  • 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科)
  • 野崎 和彦(京都大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究【心筋梗塞・脳卒中臨床研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳動脈瘤とクモ膜下出血による社会の疾病負担を軽減するために、リスク情報の整備とそれに基づいた臨床医と患者間のコミュニケーションの視点からの新たな知見を得、新しい患者支援プログラムの開発を目指す。
研究方法
初年度では未破裂脳動脈瘤に関する欧米でのデータに基づいて未破裂脳動脈瘤患者の治療における決断分析、費用対効用分析を施行した。本邦でのデータの欠如を補填するために次年度より脳動脈瘤の発生要因を同定した。脳動脈の危険性、脆弱性につき未破裂脳動脈瘤大規模前向きコホート研究UCAS Japanを継続発展させ、日本人における未破裂脳動脈瘤の自然歴、患者のQOL解析を行っている。2-3年目にかけて医師側の治療法決定の現状と妥当性についてWeb上での症例呈示により280名の医師の治療のばらつきを解析した。また初年度から2年目にかけて未破裂脳動脈瘤患者に対して質問票とインタビューを併用して患者側の心理的負担、必要としている情報を調査した。2年目より患者意志決定支援ツールを作成し、意志決定に与える影響を評価した。Webによる患者参加型の意思決定支援のためのシステムを開発し有効性の検証を行った。3年目に本邦におけるデータを用い治療に関連する効用値を求め、費用効用分析に供する基礎資料を整備した。
結果と考察
本研究で得られたリスク情報を利用し未破裂脳動脈瘤における費用対効用分析の有用性の評価を行い、予防的治療の有効性を確認した。家族性脳動脈瘤30家系を集積し脳動脈瘤関連遺伝子候補領域を同定し脳動脈瘤関連遺伝子について解析を行った。UCAS Japan(現段階で6646症例)において、詳細な未破裂脳動脈瘤の自然歴・治療リスクの把握解析をほぼ終了した。さらに3年目において前向きQOL調査を開始し1000例の登録を終了した。医師には至適治療法選択においてばらつきが存在することを確認した。患者/家族が治療方針を決定する際に求める情報、患者個人の効用値を明らかにする患者インタビュー調査(患者、家族46名)を実施し、この情報をDVD作成に生かした。意思決定支援ツール開発に関して、現時点での情報に基づき医療側の視点からの未破裂脳動脈瘤治療方針決定支援DVDツールの作成を行い、その有効性を確認した。さらに3年目において未破裂脳動脈瘤をもつ患者の意思決定を支援するWebによる参加型ツールを作成し有用性の検証を行った。
結論
本研究により、未破裂脳動脈瘤が患者の予後、健康、QOLや医療経済におよぼす影響を科学的に検証するための日本独自の臨床データが整備されつつある。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
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行政効果報告

文献番号
200623018C