糖尿病における血管合併症の発症予防と進展抑制に関する研究(JDC Study)

文献情報

文献番号
200624014A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病における血管合併症の発症予防と進展抑制に関する研究(JDC Study)
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-027
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
山田 信博(筑波大学大学院人間総合科学研究科内分泌代謝・糖尿病内科)
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科)
  • 曽根 博仁(お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間環境科学専攻食環境科学講座)
  • 井藤 英喜(東京都老人医療センター)
  • 横手 幸太郎(千葉大学医学部附属病院)
  • 片山 茂裕(埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科)
  • 山下 英俊(山形大学医学部)
  • 鈴木 進(太田西ノ内病院 糖尿病センター)
  • 石橋 俊(自治医科大学)
  • 松久 宗英(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 佐藤 麻子(東京女子医科大学)
  • 渥美 義仁(東京都済生会中央病院内科)
  • 豊永 哲至(熊本大学大学院医学薬学研究部)
  • 森 保道(虎の門病院内分泌代謝科)
  • 及川 眞一(日本医科大学内科学第三)
  • 沖田 考平(大阪大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
45,283,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2型糖尿病とその合併症の克服は世界的な課題である。日本人を含むアジア人糖尿病患者の大規模臨床研究データはまだ十分とは言えない。JDCSは、わが国の2型糖尿病患者の病態的特徴や専門施設の診療状況・治療効果を検討し、糖尿病およびその血管合併症を抑制するためのエビデンスを確立することを目的としている。このために臨床研究チームを組織して運営進行を司る。
研究方法
約2000人の日本人2型糖尿病患者を対象に、コホート全体を前向きに観察して、日本の糖尿病患者や糖尿病診療の特徴を把握している。同時に患者指導を中心的介入手段として、それによるコントロール指標の改善や合併症の抑制が可能かどうかも解析している。各合併症の診断基準は予めプロトコールで定められており、それぞれ専門家の判定委員により判定されている。各種データはコンピューターに入力し、疫学統計の専門家による解析や効果判定を実施している。追跡年数の経過にともない、合併症の発症・進展を来した症例が増加してきたため、これらの発生事象を慎重に確認し、データベースをフィックスして、各合併症の発症率やリスクファクターの解析を集中的に行っている。
結果と考察
これまでの中間報告の中で、欧米人患者とは異なる日本人糖尿病患者の特徴が数多く見つかっている。たとえば肥満度や、合併症のリスクファクター、メタボリックシンドロームの臨床的インパクト、アルコール摂取の影響や薬物の感受性などに関する違いなどが挙げられる。また欧米人患者対象の研究とは異なり、長期的な平均肥満度や血糖コントロールの増悪は、本研究の日本人糖尿病患者においては認められていない。一方、日本人患者における合併症の発症率やリスクファクターなど、本研究において初めて明らかにされたものも多い。糖尿病網膜症の発症については心血管リスクファクターとの関連が、糖尿病腎症の発症に関しても血圧の重要性が、それぞれ明らかにされている。
結論
日本人2型糖尿病患者を対象にした大規模前向き研究Japan Diabetes Complications Study (JDCS)はわが国の多くの糖尿病専門医・患者ならびに関係者の長年の努力の結晶であり、その築き上げられたデータベースは、本研究期間を超えて、日本人(東アジア人)糖尿病のエビデンスを生み出し続け、将来の糖尿病診療に大きく貢献することが期待される。 

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200624014B
報告書区分
総合
研究課題名
糖尿病における血管合併症の発症予防と進展抑制に関する研究(JDC Study)
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-027
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
山田 信博(筑波大学大学院人間総合科学研究科内分泌代謝・糖尿病内科)
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科)
  • 曽根 博仁(お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間環境科学専攻食環境科学講座)
  • 井藤 英喜(東京都老人医療センター)
  • 横手 幸太郎(千葉大学医学部附属病院)
  • 片山 茂裕(埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科)
  • 山下 英俊(山形大学医学部)
  • 鈴木 進(太田綜合病院付属太田西ノ内病院 糖尿病センター)
  • 石橋 俊(自治医科大学医学部)
  • 松久 宗英(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 佐藤 麻子(東京女子医科大学糖尿病センター)
  • 森 保道(虎の門病院内分泌代謝科)
  • 沖田 考平(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 渥美 義仁(東京都済生会中央病院内科)
  • 豊永 哲至(熊本大学大学院医学薬学研究部)
  • 及川 眞一(日本医科大学内科学第三)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまで欧米を中心に実施されてきた大規模臨床研究の結果が、遺伝的背景やライフスタイルが欧米人とは異なる日本人糖尿病患者にそのまま適用できるかは明らかでなく、日本人患者のた研究によるエビデンスが求められている。本研究は、日本全国から多数の症例を登録し、日本人糖尿病患者の平均的な姿を観察しつつ、同時に患者教育による生活習慣改善を中心的な介入手段として、前向きに追跡調査を進めている。
研究方法
JDCSの事務局は、茨城県つくばの筑波大学大学院臨床医学系内分泌代謝糖尿病内科におかれ、さらに東京お茶の水の糖尿病データセンターとの共同作業で、データの収集・解析・事務などの作業が実施されている。各合併症の診断基準は予めプロトコールで定められており、それぞれ専門家の判定委員により判定されている。各種データはコンピューターに入力し、疫学統計の専門家による解析や効果判定を実施している。追跡年数の経過にともない、合併症の発症・進展を来した症例が増加してきたため、これらの発生事象を慎重に確認し、データベースをフィックスして、各合併症の発症率やリスクファクターの解析を集中的に行っている。
結果と考察
これまでの解析の中で、欧米人患者とは異なる日本人患者のさまざまな特徴が明らかにされてきた。たとえば、糖尿病の病態的基盤とも言える肥満度が、欧米人患者と日本人患者都で極端に異なること、各種合併症の発症率、リスクファクターなどもかなり異なること、などが明らかになった。また、アルコール摂取の影響や、メタボリックシンドローム診断の意義なども、欧米人患者とかなり異なっていることが判明した。一方、生活習慣介入が、すでに発症した2型糖尿病患者において、わずかながら有意にHbA1Cを改善させたことなども報告されている。欧米人以外の糖尿病患者において、これほど大規模長期の前向き研究は例がなく、その意味でも本研究の成果は、近隣アジア諸国ならびに欧米の臨床医・研究者の注目を集めている。
結論
日本人糖尿病患者の実像を把握して、日本人患者の診療に役立つ臨床エビデンスを確立するという所期の目的は、十分に達せられ、今後さらに多くの深化した解析が予定されている。日本人2型糖尿病患者を対象にした大規模前向き研究Japan Diabetes Complications Study (JDCS)はわが国の多くの糖尿病専門医・患者ならびに関係者の長年の努力の結晶であり、その築き上げられたデータベースは、本研究期間を超えて、日本人(東アジア人)糖尿病のエビデンスを生み出し続け、将来の糖尿病診療に大きく貢献することが期待される。 

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200624014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
Japan Diabetes Complications Study (JDCS)は、日本の糖尿病患者の現況や診療の状況、治療の有効性、病態的特徴、生活習慣介入の効果などを検討することにより、糖尿病およびその血管合併症を抑制するためのエビデンスを確立し、特にこれまで欧米のデータとは異なる多くの日本人糖尿病患者のエビデンスを生み出して、患者の生命予後とQOLの改善に貢献してきた。
臨床的観点からの成果
これまで糖尿病ならびにその合併症に関する大規模臨床試験は、欧米を中心に実施されてきた。遺伝的背景やライフスタイルが欧米人とは大きく異なる日本人糖尿病患者の診療方針や保健施策決定に、このような欧米のエビデンスを、そのまま適用できるか疑問である。本研究は、これまで日本人患者の診療に安心して使える臨床エビデンスを確立するために貢献してきた。
ガイドライン等の開発
韓国糖尿病学会からも同様の研究をするための参考として、その内容と成果の発表を求められている。
その他行政的観点からの成果
メタボリックシンドロームの意義に関して、国会の委員会質問で本研究の論文が取り上げられた。
その他のインパクト
合計50回以上の学会発表、シンポジウム発表、招待講演を行った。その成果の一部はNHKの番組や週刊誌など一般向けのメディアにも紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
12件
すべて査読付き国際誌
その他論文(和文)
50件
総説・著書
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
多くはシンポジウム、招待講演
学会発表(国際学会等)
5件
すべて招待講演
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
10件
一般向け講演会、市民講座、健康教室など

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sone H, Tanaka S, Ohashi Y, et al.
Cut Points of Waist Circumference
Diabetes Care , 29 , 1189-1189  (2006)
原著論文2
Sone H, Tanaka S, Ishibashi S, et al.
The new worldwide definition of metabolic syndrome is not a better diagnostic predictor of cardiovascular disease in Japanese diabetic patients than the existing definitions. Additional analysis from the Japan Diabetes Complications Study
Diabetes Care , 29 , 145-147  (2006)
原著論文3
Sone H, Mizuno S, Yoshimura Y, et al.
Is the diagnosis of metabolic syndrome useful for predicting cardiovascular disease in Asian diabetic patients? –Analysis from the Japan Diabetes Complications Study–
Diabetes Care , 28 , 1463-1471  (2005)
原著論文4
Sone H, Mizuno S, Yamada N, et al.
Vascular risk factors and diabetic neuropathy
N Engl J Med , 352 , 1925-1927  (2005)
原著論文5
Sone H, Yamada N, Mizuno S, et al.
Requirement for hypertension and hyperlipidemia medication in U.S. and Japanese patients with diabetes.
Am J Med , 117 , 711-712  (2004)
原著論文6
Sone H, Mizuno S, Aida R, et al.
Alcohol Use and Diabetes Mellitus
Ann Intern Med , 141 , 408-409  (2004)
原著論文7
Sone H, Mizuno S, Ohashi Y, et al.
Type 2 diabetes prevalence in Asian subjects
Diabetes Care , 27 , 1251-1252  (2004)
原著論文8
Sone H, Yoshimura Y, Ito H, et al.
Energy intake and obesity in Japanese patients with type 2 diabetes
Lancet , 363 , 248-249  (2004)
原著論文9
Sone H, Katagiri A, Ishibashi S, et al.
Effects of lifestyle modifications on patients with type 2 diabetes: the Japan Diabetes Complications Study (JDCS) study design, baseline analysis and three year-interim report
Horm Metab Res , 34 , 509-515  (2002)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-