内シャント狭窄治療を目的としたナノセラミックス複合化ステントグラフトの開発

文献情報

文献番号
200624011A
報告書区分
総括
研究課題名
内シャント狭窄治療を目的としたナノセラミックス複合化ステントグラフトの開発
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-024
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
古薗 勉(国立循環器病センター研究所 生体工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮武 邦夫(国立病院機構大阪南医療センター)
  • 田中 良一(岩手医科大学 放射線医学講座 附属循環器医療センター兼務)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
長期透析を良好に継続するためには自己血管内シャントの開存維持が不可欠である。これまでシャント不全に対して様々な治療法が試みられているが、再狭窄・再閉塞を来す症例が多い。当該研究課題は、内シャント不全の治療に用いるステントグラフト表面にナノスケールのアパタイトを結合させた新規なステントグラフトの開発を目的とした。
研究方法
各種基板表面へのナノアパタイト複合化を精密制御することを目的として、ナノアパタイト-基板間の結合強度について原子間力顕微鏡を用いてコンタクトモードによる定量的評価を行った。また、これまでの検討によって創出したナノアパタイト複合化グラフト、ステント、および両者を一体化したステントグラフトを用いて動物試験を行い、未処理のものと比較した。さらに、平滑筋細胞増殖抑制能のあるシロリムスを担持したナノアパタイ複合化ステントの作製を試み、その留置試験を行った。
結果と考察
原子間力顕微鏡を用いた結合強度評価により、基板表面に導入する官能基の種類および導入方法がナノアパタイト-基材間に大きく影響を与えることが明らかとなった。動物実験により、ナノアパタイト複合化したステントおよびグラフトを用いることで、埋植初期に薄く安定した内膜が形成し、さらに、内膜とグラフトの接触部において良好な接着性が確認でき、安定したステントおよびグラフトの留置が実現できた。さらに、シロリムスを担持したナノアパタイト複合化ステントの作製に成功し、動物実験によって留置初期の内膜過形成を抑制することに成功した。
結論
ステントおよびグラフト表面にナノアパタイトを強固に複合化することで、未処理デバイスに比較して、短期間での安定内膜の形成が認められた。さらに、複合化したアパタイトの薬物吸着・放出を利用した新しい薬物溶出ステントを創出した。新規ステントグラフトの臨床応用によって再狭窄防止システムが実現でき、長期透析患者の安定した血液透析の実現とQOLの向上が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200624011B
報告書区分
総合
研究課題名
内シャント狭窄治療を目的としたナノセラミックス複合化ステントグラフトの開発
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-024
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
古薗 勉(国立循環器病センター研究所 生体工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮武 邦夫(国立病院機構大阪南医療センター)
  • 稲永 隆(日本海員掖済会門司病院内科腎センター)
  • 田中 良一(岩手医科大学 放射線医学講座 附属循環器医療センター兼務)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
長期透析を良好に継続するためには自己血管内シャントの開存維持が不可欠である。これまでシャント不全に対して様々な治療法が試みられているが、再狭窄・再閉塞を来す症例が多い。当該研究課題は、内シャント不全の治療に用いるステントグラフト表面にナノスケールのアパタイトを結合させた新規なステントグラフトの開発を目的とした。
研究方法
ナノサイズのハイドロキシアパタイト焼成体(単結晶体)の作製を実現するために、まず、改良融着防止剤存在下の新規焼成法の開発を行った。また、ナノアパタイトの吸着・結合状態について水晶振動子マイクロバランスおよび原子間力顕微鏡を用いて検討した。以上の検討結果をもとに、グラフトおよびステントのナノアパタイト複合化、および両者の統合を行った。これらデバイスの動物実験を行い、組織切片観察等による評価を行った。さらに、ナノアパタイト表面への薬物の担持・放出挙動をin vitroで検討し、動物実験により効能評価を行った。
結果と考察
改良融着防止剤を製造工程に添加する焼成技術を開発し、分散媒体中で単分散するナノアパタイト焼成体の製造技術を確立した。また、ナノアパタイトの吸着・結合状態について検討を行うことで、ナノアパタイトの複合状態の精密制御への指針を得た。以上の検討によって得られた知見をもとに、グラフトおよびステント表面のナノアパタイト複合化を達成した。同ステントグラフトの動物実験を行った結果、埋植初期に薄く安定した内膜が形成し、さらに、内膜とグラフトとの接触部での良好な接着性による安定したデバイスの留置が実現できた。さらに、薬物としてシロリムスを担持したナノアパタイト複合化ステントの作製に成功し、動物実験によって留置初期の内膜過形成を抑制することを明らかとした。
結論
ハイドロキシアパタイトセラミックスは生体親和性が高く、良好な接着性タンパク質の吸着性および細胞接着性を示す。ステントおよびグラフト表面にナノアパタイトを強固に複合化することで、短期間での内膜被覆が実現できた。安定した内膜の早期被覆によって長期間の血管開存が可能と考えられる。さらに、複合化したアパタイトの薬物吸着・放出を利用した新しい薬物溶出ステントの作製に成功した。新規ステントグラフトの臨床応用によって再狭窄防止システムが実現でき、長期透析患者の安定した血液透析の実現とQOLの向上が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200624011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
改良融着防止剤を製造工程に添加する焼成技術を新規に開発することで、分散媒体中で単粒子分散するナノサイズのアパタイト焼成体の製造技術を確立した。また、機能性に優れる一方、機械的性質に劣るアパタイトの欠点を克服するために、ナノ粒子化したアパタイトを機械的性質に優れる高分子材料にコーティングする技術の応用範囲を拡大した。同技術は、新しい複合材料の作製法であるだけではなく、ナノ粒子の吸着・結合挙動を制御するための基礎的知見を与えるものでもある。
臨床的観点からの成果
アパタイト複合化ステントグラフトの動物実験を行った結果、埋植初期に薄く安定した内膜が形成し、さらに、内膜とグラフトの接触部における良好な接着性によって安定したステントグラフトの留置が実現できた。さらに、薬物としてシロリムスを担持したナノアパタイト複合化ステントの作製に成功し、動物実験によって留置初期の内膜過形成を抑制することを明らかとした。新規ステントグラフトの臨床応用によって、再狭窄防止システムの構築による長期透析患者の安定した血液透析の実現とQOLの向上が期待できる。
ガイドライン等の開発
研究期間中にはガイドライン等の作成などには至らなかったが、今後本研究成果を発展させることによりって重要な臨床的情報として活用していくことが可能であると考えている。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
当該研究事業より派生した技術および製品は我が国独自技術である。国内特許およびPCT出願を行い、知的財産権を保持している。将来的には事業化へと展開し、患者のQOL向上への貢献はもちろんのこと、我が国の医療産業の活性化および貿易不均衡の是正に寄与したいと考えている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
うち印刷中1件、投稿中1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
33件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
T. Furuzono, M. Masuda, M. Okada, et al.
Increase of cell adhesiveness on poly(ethylene terephthalate) fabric by coating of sintered hydroxyapatite nanocrystals for development of an artificial blood vessel
ASAIO J. , 52 , 315-320  (2006)
原著論文2
T. Furuzono
Development of Nano-Ceramic Coating on a Substrate through Covalent Linkage and Its Biological Properties
Adv. Sci. Tech. , 49 , 37-44  (2006)
原著論文3
M. Okada and T. Furuzono
Fabrication of high-dispersibility nanocrystals of calcined hydroxyapatite
J. Mater. Sci. , 41 , 6134-6137  (2006)
原著論文4
M. Okada and T. Furuzono
Nano-sized ceramic particles of hydroxyapatite calcined with an anti-sintering agent
J. Nanosci. Nanotech. , 7 , 848-851  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-