文献情報
文献番号
200624010A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病性腎症の寛解を目指したチーム医療による集約的治療
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-023
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
槇野 博史(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科学)
研究分担者(所属機関)
- 古家 大祐(金沢医科大学)
- 西村 元伸(国立病院機構千葉東病院)
- 鈴木 芳樹(新潟大学)
- 鈴木 大輔(東海大学医学部)
- 富野 康日己(順天堂大学医学部)
- 宇津 貴(滋賀医科大学)
- 羽田 勝計(旭川医科大学)
- 前田 士郎(理化学研究所遺伝子多型研究センター)
- 山田 研一(ちば生活習慣病内科クリニック)
- 四方 賢一(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
- 川上 憲人(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
1)「糖尿病性腎症の寛解を目指したチーム医療による集約的治療」:糖尿病性腎症患者を対象に、医師と糖尿病療養指導士が参加するチーム医療により強力で厳格な治療介入(集約的治療)を行うことにより、腎症の進行を阻止し、さらに寛解させる治療法の確立を目指す。2)「糖尿病性腎症に対する蛋白制限食の効果」:糖尿病性腎症に対する蛋白制限食の効果を明らかにする。
研究方法
1)2型糖尿病の顕性腎症例600名を対象として、血清クレチニン値正常群(プロトコールA)と高値群(プロトコールB)の2群に分け、それぞれ集約的治療群と従来療法群に無作為に割り付ける。プロトコールAでは、主要評価項目を尿中蛋白排泄量とし、網膜症・神経障害の進行を副次評価項目とする。プロトコールBでは、血清クレアチニン値の2倍化、透析療法への導入および死亡を1次エンドポイント、心血管イベントの発生、網膜症・神経障害の進行を2次エンドポイントとする。総観察期間は5年間とする。2)全国37施設において、顕性腎症例を対象として、蛋白制限食(0.8 g/kg/日)の効果を、通常蛋白食(1.2 g/kg/日)群と比較検討する。Ccrの低下速度、1/Crの傾きおよび血清Crが前値の倍になる症例の頻度を主要解析項目として、蛋白制限食群58名と通常蛋白食群58名のランダム化比較試験を継続する。
結果と考察
1)128施設で研究を継続し、症例数は観察期症例348例、観察期終了後登録症例数233例となった。プロトコールA、Bのいずれにおいても、従来療法群と集約的治療群の間にベースラインの臨床検査値に有意差は認められず、割付は適正に行われていると考えられた。プロトコールA,Bともに,試験開始後3ヶ月間に,HbA1c,血清Crおよび血圧の有意な変化は認めなかったが、プロトコールBにおいて、集約的治療群では従来療法群に比べて蛋白尿の有意な減少が認められた。2) Ccrの傾き、1/Crの傾き、血清Cr倍化までの日数、副次評価項目であるアルブミン尿、尿蛋白量およびCcrの絶対値と変化率の全てに、両群間に差を認めなかった。
結論
1)集約的治療によって腎症の進展を阻止できる可能性が示された。本研究により,糖尿病性腎症の寛解を可能にする集約的治療法の確立が期待できる。2)食事療法として推奨されている0.6-0.8g/kg/日の蛋白制限食は糖尿病腎症に対して有効性がないことが明らかとなった。
公開日・更新日
公開日
2007-05-08
更新日
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