各種高脂血症治療薬の糖尿病性心血管病進展予防効果の総合的検討

文献情報

文献番号
200624004A
報告書区分
総括
研究課題名
各種高脂血症治療薬の糖尿病性心血管病進展予防効果の総合的検討
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-016
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
井口 昭久(名古屋大学大学院医学系研究科老年科学)
研究分担者(所属機関)
  • 林 登志雄(名古屋大学医学部附属病院)
  • 井藤 英喜(東京都老人医療センター)
  • 山田 信博(筑波大学医学部 代謝内分泌内科)
  • 渡邉 裕司(浜松医科大学 臨床薬理学)
  • 服部 良之(独協医科大学 内分泌内科)
  • 吉栖正生(広島大学医歯総合大学院循環制御)
  • 大類 孝(東北大学大学院医学系研究科老年科学)
  • 横手 幸太郎(千葉大学大学院医学研究科細胞治療学)
  • 曽根 博仁(お茶の水大学生活科学部)
  • 川嶋 成乃亮(中津済生会病院総合診療科)
  • 久保田 潔(東京大学大学院・医学系研究科薬剤疫学)
  • 佐藤 貴一郎(国際医療福祉大学・医療経営学)
  • 梅垣 宏行(名古屋大学医学部・附属病院老年科)
  • 野村 秀樹(名古屋北病院在宅医療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
19,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
代謝内分泌学,循環器学,老年学,臨床薬理学専門医からなる研究班を結成し各種高脂血症治療薬の糖尿病性心血管病進展予防効果と作用機序を検討した
研究方法
対象は04年度登録した、全国12ケ所の共同研究機関,40関連病院よりの糖尿病罹患者4014名である。原則として外来通院者等の自立した成人で高齢罹患者も含めた。当該年度より年齢階層別(65歳以上49%),性別, 薬剤別<スタチン製剤(約87%),フィブラート製剤(9%)等>、更に到達脂質濃度別に各々分類しprospective cohortとして検討を行った。虚血性心血管病(心, 脳血管障害,IHD,CVD)とASOの発症,入院をend pointとした。後期高齢者(登録時自立)は自立度の変化も評価した。安全管理モニター(名大鍋島,浜医大中島両教授)の管理を頂いた。
18年12月に登録後平均1.9年間の成績を回収し解析をすすめた。
結果と考察
追跡率初年度は98.8、2年度92%。心血管病発症率(IHD,CVD)は年2.2%と比較的高かった。06年3月末までの,1年経過時の結果を列挙する。女性の発症率は男性に匹敵, 心脳血管病(IHD+CVD)発症率が登録時血中LDL濃度(80 mg/dl未満から140mg/dl以上まで20mg/dl毎に分類)に比例した。心不全、突然死,末梢血管病等を加えると低LDL濃度群での発症率が上昇し,その他の死亡は低LDL濃度群に多い,但し、高脂血症薬使用群は認めなかった。この傾向は前期高齢者に顕著で若年者はメタボリック症候群合併例が多かった。LDL濃度低値者と高値者ではスタチン等の高脂血症薬服薬群に発症率が低かった。一方,心脳血管病はHDL濃度(40mg/dl未満から60mg/dl以上まで20mg/dl毎に分類)に反比例し,差は約4倍に及んだ。HDL濃度に関しては心不全、突然死,末梢血管病,更には,その他の死亡を加えても同様であった。高脂血症薬使用例も,低HDL血症者の発症率は高かった。2年次の成績を加えるとIHD,CVD各々に解析ができ,上記の成績は全てIHDに該当し、CVDはHDL濃度での差が有意だった。登録時HbA1C5.8未満の群には発症がなく、それ以上では有意差は認めなかった。
結論
現行のLDL濃度(平均120mg/dl)を90mg/dlに下げると, 虚血性心疾患発症率,10年後の罹患者総数とも約40%減少する可能性が示唆され、脳血管障害も発症率を約24%,10年後罹患者数を約25%減少させる可能性が示唆された。更なる継続検討が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200624004B
報告書区分
総合
研究課題名
各種高脂血症治療薬の糖尿病性心血管病進展予防効果の総合的検討
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-016
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
井口 昭久(名古屋大学大学院医学系研究科老年科学)
研究分担者(所属機関)
  • 林 登志雄(名古屋大学医学部附属病院老年科)
  • 井藤 英喜(東京都医療公社 都老人医療センター)
  • 山田 信博(筑波大学大学院・臨床医学群代謝内科)
  • 川嶋 成乃亮(中津済生会病院総合診療科)
  • 久保田 潔(東京大学大学院・医学系研究科薬剤疫学)
  • 佐藤 貫一郎(国際医療福祉大学・医療経営学)
  • 渡邉 裕司(浜松医科大学医学部臨床薬理学)
  • 服部 良之(独協医大医学部・内分泌内科)
  • 吉栖 正生(広島大学大学院医歯薬研究科循環病態学)
  • 大類 孝(東北大学大学院医学研究科老年科学)
  • 遠藤 英俊(長寿医療センター附属病院包括医療部)
  • 横手 幸太郎(千葉大学大学院医学研究院分子内科)
  • 梅垣 宏之(名古屋大学医学部附属病院老年科)
  • 野村 秀樹(名古屋北病院在宅医療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
各種高脂血症治療薬の糖尿病性心血管病進展予防効果と作用機序を検討した。
研究方法
内分泌代謝学,循環器学,老年学,臨床薬理学専門医14名,40関連病院からなる研究班を結成した。17年3月末までに糖尿病患者4014名を登録した。prospective cohort試験とし,虚血性心疾患発症,死亡/同入院,CVD,ASO発症総死亡をエンドポイントに検討した。
結果と考察
1)登録時プロフィール 平均67.4歳、男女比1.105, 血清総コレステロール203.1mg/dl, HbA1C7.53%, 脂質異常者75.9%、高脂血症薬服薬者60.7%,高血圧合併者77.6%を認めた。18年1-3月、19年1-3月に登録後1及び2年間の成績を回収し、解析をすすめた(追跡率初年度98.8、2年度92%)。心血管病発症率(虚血性心疾患IHD,脳血管障害CVD)は年2.2%であった。
2)1年経過時成績抜粋。女性の発症率は男性に匹敵, IHD+CVDの発症率が登録時血中LDL濃度(80 mg/dl未満から140mg/dl以上まで20mg/dl毎に分類)に有意に比例した。心不全、突然死,末梢血管病等を加えると低LDL濃度群での発症率が上昇し,心血管病に起因しないその他の死亡は低LDL濃度群に多い,但し、高脂血症薬使用群は認めなかった。この傾向は前期高齢者に顕著であった。LDL濃度低値者と高値者はスタチン等高脂血症薬服薬群に発症率が低かった。一方,IHD+CVDはHDL濃度(40mg/dl未満から60mg/dl以上まで20mg/dl毎に分類)に反比例し,差は約4倍に及んだ。HDL濃度に関しては心不全、突然死,末梢血管病,更にはその他の死亡を加えても同様であった。高脂血症薬使用例も,低HDL血症者の発症率は高かった。
3)2年経過時成績抜粋。IHD,CVD各々にLDL,HDL濃度,HbA1C別、高脂血症薬(特にスタチン)使用の有無で解析ができた。上記の成績は全てIHDに該当し、CVDはHDL濃度での差は有意だがLDL濃度での差は小さかった。登録時HbA1C5.8未満の群には発症がなく、それ以上では有意差は認めなかった。
4)医療経済学的解析抜粋:一年次成績からの推計では現行のLDL濃度(平均120mg/dl)を90mg/dlに下げると, 虚血性心疾患発症率,10年後の罹患者総数とも約40%減少する可能性が示唆され、脳血管障害も発症率を約24%,10年後罹患者数を約25%減少させる可能性が示唆された
結論
本邦最大規模の糖尿病コホート研究として多彩な成果が今後期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200624004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
心血管病発症率(IHD,CVD)は男女性発症率に差がなく, IHDは登録時血中LDL濃度(80 mg/dl未満から140mg/dl以上まで)に比例した。心不全、突然死,末梢血管病,その他の死亡は低LDL濃度群に多かった。HDL濃度(40mg/ dl未満から60mg/dl以上)に反比例し,差は4倍に及んだ。心不全、突然死,末梢血管病,心血管病以外の死亡も同様であった。CVDはHDL濃度では有意だがLDL濃度の差は小さかった。糖尿病ではHbA1C5.8未満群に発症がなくそれ以上は有意差はなかった。
臨床的観点からの成果
IHD発症は登録時LDL濃度に比例し,心不全,突然死,末梢血管病,死亡は低LDL群に多い傾向で前期高齢者に顕著だった。LDL濃度低値者と高値者はスタチン服薬群に発症率が低くpleiotropic effectも推測された。HDL濃度に反比例し,高脂血症薬使用例も,低HDL血症者の発症率は高かった。高脂血症薬間で使用後の血清脂質プロフィール及び心脳血管病発症率に差はなく,予め薬剤作用により使い分けされていると推測された。HbA1C5.8未満群のみ発症がなく治療中の耐糖能異常もリスクと示唆された。
ガイドライン等の開発
本検討からは糖尿病患者のLDL及びHDLを合わせた厳しいコントロールによりIHD(及び一部CVD)を制御できる可能性が示唆され,薬剤にも一部pleiotropic effect を認める可能性も示唆された。今年度,循環器学会、糖尿病学会、動脈硬化学会シンポジウムで報告する。発症率の高いコホートであり,もう1,2年の観察ができれば、従来のガイドラインに対し重要な指標を提供し、本邦で初めて前期(一部後期)高齢者糖尿病合併高脂血症の指標も作成できる可能性がある。
その他行政的観点からの成果
医療経済学的には、今回の成績からの概略的推計では現行のLDL濃度(平均120mg/dl)を90mg/dlに下げると, 虚血性心疾患発症率,10年後の罹患者総数とも約40%減少する可能性が示唆された。脳血管障害も発症率を約24%,10年後罹患者数を約25%減少させる可能性が示唆された。ストロングスタチンを使用するか、従来型のgeneric スタチンを使用するかの医療経済学的な効用については更に1,2年の観察で明らかにできる。
その他のインパクト
今年度,循環器学会、糖尿病学会、動脈硬化学会の各シンポジウムで報告及び報告予定である。学会製作DVD, 学会新聞を始め広く成績が紹介されつつ有る。各種論文も投稿しており、間もなく収載予定である。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-