進行・再発子宮頸癌に対する標準的治療体系の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200622040A
報告書区分
総括
研究課題名
進行・再発子宮頸癌に対する標準的治療体系の確立に関する研究
課題番号
H18-がん臨床-一般-011
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
嘉村 敏治(久留米大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 笠松 高弘(国立がんセンター中央病院)
  • 喜多川 亮(久留米大学医学部)
  • 吉川 裕之(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 齋藤 俊章(国立病院機構九州がんセンター)
  • 佐治 文隆(国立病院機構呉医療センター)
  • 小西 郁生(信州大学医学部)
  • 岩坂 剛(佐賀大学医学部)
  • 櫻木 範明(北海道大学医学部)
  • 山本 嘉一郎(近畿大学医学部)
  • 杉山 徹(岩手医科大学医学部)
  • 瀧澤 憲(癌研究会有明病院)
  • 戸板 孝文(琉球大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦には子宮頸癌の化学療法に対する高いエビデンスは存在しない。米国ではいくつかの第3相試験の結果cisplatinとpaclitaxelの2剤併用療法(TP療法)が標準的に行われている。しかし本療法は神経毒性が高く、大量の輸液を必要とし、患者のQOLを低下させている。このような副作用を軽減し、かつ高い抗腫瘍効果を期待してcisplatinのかわりにcarboplatinを使用したTJ療法を新たな化学療法レジメンとした第2相試験を行った。その結果は59% の奏功率が認められた。無増悪生存期間の中央値が4.9ヶ月、全生存期間の中央値が9.4ヶ月と米国のTP療法のデータに匹敵する結果が得られた。このデータを基にしてTP療法、TJ療法の無作為化比較試験(第3相試験)をJCOG研究として開始した。
研究方法
本試験は進行、再発頸がんを対象とした。TP療法はpaclitaxel135mg/㎡,24hr div,cisplatin50mg/㎡,q21days,TJ療法はpaclitaxel 135mg/㎡,3hrdiv,carbo-platin50mg/㎡,q21daysとした。本試験は非劣性試験として行い、primary endpointは全生存期間、secondary endpointは無憎悪生存期間、有害事象発生割合、奏功割合、予定治療期間中の非入院日数の割合とした。予定登録数は各群125例、集積期間は2.5年、追跡期間1年、総研究期間3.5年とした。
結果と考察
平成18年2月に症例登録を開始した。1年間で59例の登録があった。登録の状況は予定をやや下回っているが、2年目は予定通りの登録が行われると推測される。現在まで、重篤な有害事象は報告されていない。進行再発頸がんは尿路系の閉塞による腎機能の低下を示す症例も少なくない。腎毒性が低いcarboplatinは治療のcomplianceが高いことは、第2相試験でもその可能性が確かめられ、しかも高い奏功率が得られた。この結果は米国の結果に匹敵しており、本研究成果は2004年のASCOに採用されている。本試験でTJ療法が標準的化学療法として確立すれば、次のステップとして放射線療法と組み合わせた同時併用化学放射線療法や術前化学療法への応用等、新たな集学的治療が展開可能となる。
結論
本試験は、complianceを含めたfeasibilityに関してTJ療法の方がTP療法よりも高い有用性を示すことが期待される。本研究によってもたらされる新規化学療法は、従来の子宮頸がんの集学的治療に導入されることとなり、より良好な予後をもたらす可能性が高いと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
-