高次脳機能を温存する転移性脳腫瘍の治療法確立に関する研究

文献情報

文献番号
200622038A
報告書区分
総括
研究課題名
高次脳機能を温存する転移性脳腫瘍の治療法確立に関する研究
課題番号
H18-がん臨床-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
嘉山 孝正(山形大学医学部附属病院 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田 純(名古屋大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 橋本 信夫(京都大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 渋井 壮一郎(国立がんセンター中央病院 脳神経外科)
  • 小川 彰(岩手医科大学附属病院 脳神経外科)
  • 佐伯 直勝(千葉大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 大西 丘倫(愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 澤村 豊(北海道大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 西川 亮(埼玉医科大学附属病院 脳神経外科)
  • 白土 博樹(北海道大学医学部附属病院 放射線科)
  • 冨永 悌二(東北大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 城倉 英史(鈴木二郎記念ガンマハウス 脳神経外科)
  • 藤堂 具紀(東京大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 中川 恵一(東京大学医学部附属病院 放射線科)
  • 角 美奈子(国立がんセンター中央病院 放射線科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 がん患者の剖検による脳転移の発見率は2割?3割にのぼり、原発性脳腫瘍を凌駕するとも言われている。転移性脳腫瘍の治療に関して、国際的には、多発病変に対しては全脳照射、少数転移症例には摘出術+全脳照射が標準治療とされてきた。しかし脳以外の臓器転移のコントロール率の改善に伴い、全脳照射による遅発性高次神経機能障害、すなわち認知症の発生が、がん患者のQOLを著しく低下させる原因として問題視されている。本研究は、この摘出術後の全脳照射を行わず、定位放射線照射を利用することで、生命予後を保ちつつ、放射線障害を抑制しQOLの改善、維持を可能とする新たな標準的治療法の確立が目的である。
研究方法
<新たな標準的治療法確立のためのランダム化比較臨床試験>
 H15年?H17年度の厚生労働科学研究費補助金「転移性脳腫瘍に対する標準的治療法確立に関する研究」による結果を踏まえ、定位放射線照射の適応外とされる3cm以上の病巣を有する少数転移症例に対して、摘出術を行い、残存病変に対しては高次神経機能障害が危惧される全脳照射を避け、定位放射線照射で治療する方法の是非を検討することを目的とした臨床試験をJapan Clinical Oncology Groupの臨床試験(JCOG0504「転移性脳腫瘍に対する、腫瘍摘出術+全脳照射と腫瘍摘出術+Salvage Radiation Therapyとのランダム化比較試験」)として行った(現在登録中)。
結果と考察
 2006年1月から登録を開始し、2006年3月末時点で16例を登録した。登録数は、2006年末までの1年間で10例と低迷していたが、2007年1月より、登録数確保の為のプロモーションを行い、その後2ヶ月で6例の登録を得ている。今後更に、プロトコールの改訂等を行い、症例数の増加を図る対策を講ずる予定である。登録された症例に関しては、CRFの回収状況、プロトコールの逸脱、有害事象のチエック等を定期的に行っているが、現在までのところ試験の遂行上問題となるものは認めていない。
 現時点では、症例の集積待ちの状況であるが、これまで転移性脳腫瘍治療に関するこのようなランダム化比較臨床試験は行われておらず、独創的な研究である。
結論
 今後症例が集積され、本治療法の有効性が示されれば、全脳照射に係る入院期間の短縮と放射線障害によって引き起こされるADLの低下を抑制でき、転移性脳腫瘍患者の自宅復帰・家庭介護の可能性を高め、国民に計り知れない福利を提供するものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-