がん臨床研究に不可欠な症例登録を推進するための患者動態に関する研究

文献情報

文献番号
200622035A
報告書区分
総括
研究課題名
がん臨床研究に不可欠な症例登録を推進するための患者動態に関する研究
課題番号
H18-がん臨床-一般-006
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
上 昌広(東京大学医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 林 邦雄(京阪奈病院血液内科)
  • 宮腰重三郎(東京都老人医療センター血液内科)
  • 小松恒彦(筑波記念病院血液内科)
  • 小原まみ子(亀田総合病院腎臓内科)
  • 川越正平(あおぞら診療所総合診療内科)
  • 中村利仁(北海道大学医学部)
  • 山口拓洋(東京大学医学部)
  • 小林一彦(JR東京総合病院血液内科)
  • 竹内賢吾(癌研究所附属病院病理部)
  • 松村有子(東京大学医科学研究所)
  • 濱木珠恵(東京都立府中病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん治療の均てん化及び、がん臨床研究推進には症例登録を円滑に遂行できる医師・患者・医療機関ネットワークシステム及び患者動態に関する基盤データの構築が不可欠である。従って、患者動態調査及び実地調査を行い、地域の医療需要や医療資源の分布状況を明らかにし、地域の医療関係者等と協議の上、医療機能の分化と連携を推進していく取組みを進めることが重要であり、これを本研究の目的とする。
研究方法
患者動態調査について調査対象を、年齢階級別罹患率が既知である白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫患者とした。年齢階級別罹患率から調査地域の罹患者数を推定し、実際の患者調査と比較することにより調査地域の患者動態を明らかにした。この他に、高齢者急性白血病患者、同種造血細胞移植、透析患者、在宅医療、医療施設間情報伝達手段に関する調査を施行した。
結果と考察
患者動態調査は平成19年2月現在、事務局にて集計し解析が終了している症例数は7病院の777例である。いずれの医療機関の動態調査においても、病院所在地から半径25km以内或いは隣接市町村に居住する患者割合は75%を上回っており、適切な診療圏は都道府県のような広域モデルではなく、むしろ市町村或いはそれ以下を単位としたモデルであることが示唆された。興味深いことに徳島県では同様に医療遠隔地であるが、患者動態の特徴が異なったという事例が報告されている。これらの事実は地域特性を十分に考慮したがん診療体制の構築が必要であることを強調している。また、造血器悪性疾患の年齢階級別罹患率は高齢であるほど上昇するため、過疎地での顕著な人口高齢化を反映して、遠隔地での罹患数は増大した。透析や在宅医療における患者動態は非悪性疾患を含有し、がん臨床研究推進のための患者動態の特徴がより正確に表出されるものと期待される。これとは別に医療提供体制の具体的な事例研究として、同種造血細胞移植について地域別及び都道府県別に検討した。同種造血細胞移植実施数には想定を上回る地域間格差を認め、医師教育体制との関連が示唆された。医療施設間情報伝達手段に関する研究では医療者個人のネットワークに依存している現状が明らかになり、地域医療機関ネットワークシステムの構築に重要な知見を得た。
結論
がん患者動態調査研究はがん臨床研究を推進する上で基盤データを提供し、多角的な検討を加えることにより具体的な方策を提言できる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
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