先進諸国における家族政策と雇用政策の関係

文献情報

文献番号
199700204A
報告書区分
総括
研究課題名
先進諸国における家族政策と雇用政策の関係
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
小島 宏(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 社会保障・人口問題政策調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は先進諸国における家族政策と雇用政策の関係について、ジェンダー政策等との関連を検討しながら家族政策の雇用政策化、特に失業対策手段化に焦点を合わせて比較検討することにより、わが国にとっての政策的含意を探ることを目的とした。そのため、EU諸国のうちで最近、新たな施策の展開が見られるオランダ、イギリス、ドイツ、フランスの事例について比較検討することにした。
研究方法
本研究は理論研究および文献研究からなる。理論研究では各種政策を分析する際に必要となる分析枠組みを作成するため、社会学、経済学、人口学等の諸分野における政策分析の理論と手法を比較検討することを若干試みた。本研究の主要な部分をなす文献研究では、作成された分析枠組みにある程度従って国際機関・各国政府の刊行物や学術書・論文を分析・評価した。
結果と考察
 家族政策の雇用政策化について最近、新たな展開が見られるEU諸国を比較検討すると、オランダでは「ワークシェアリング」の一環としてのパートタイム就業の促進、イギリスでは「ニューディール」と呼ばれる福祉から就労への移行の促進、ドイツでは育児休業制度の改善等の各種施策と組み合わせられた雇用・失業対策としての女性によるパートタイム就業の推進、フランスでは事実上の育児休業手当である「養育親手当」の第2子からの支給による予想以上の就業中断の促進が行われていることが明らかになった。
各国における家族政策の雇用政策化には異なる背景があり、メリットとデメリットがあることが示された。イギリスにおけるひとり親の自立に焦点を合わせた就労促進を通じた家族福祉改革は開始されたばかりで、そのような両立支援への政策転換の影響がまだ明らかになっていない。ドイツにおける網羅的で緩慢な家族政策変化があまり大きな雇用創出効果をもたなかったり、フランスにおける一部家族政策の急激な変更が雇用に対して予想以上に大きな影響をもたらしたりしたことも示された。さらに、オランダにおける両性によるパートタイム就業の促進が失業率低下に寄与したことが見いだされた。
結論
 研究対象となったEU諸国に関する分析結果について家族政策、ジェンダー政策、雇用政策、経済政策の観点から見ると、保育施設の整備を前提とした、フルタイム就業との労働条件等の格差があまり大きくないような、両性によるパートタイム就業の促進が好ましいようである。最近は少子高齢化に加えて失業率上昇・構造不況に悩むわが国でも企業、労働組合、地方自治体等の協力を仰ぎながら、保育施設の整備・拡充と労働条件等の格差があまり大きくないようなパートタイム就業の促進を行う必要があろう。

公開日・更新日

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更新日
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研究報告書(紙媒体)