進行神経芽腫に対する標準治療確立および新規治療開発のための研究

文献情報

文献番号
200622017A
報告書区分
総括
研究課題名
進行神経芽腫に対する標準治療確立および新規治療開発のための研究
課題番号
H16-がん臨床-一般-039
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
金子 道夫(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 熊谷 昌明(国立成育医療センター 血液科)
  • 麦島 秀雄(日本大学 細胞再生移植医学)
  • 杉本 徹(京都府立医科大学 小児科)
  • 正木 英一(国立成育医療センター 放射線診療部)
  • 田尻 達郎(九州大学 付属病院)
  • 中川原 章(千葉県がんセンター 研究所)
  • 秦 順一(国立成育医療センター)
  • 牧本 敦(国立がんセンター中央病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
33,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1) 臨床試験の推進による治療成績の向上および再発例への新規治療の開発
(2) 臨床試験登録例からの臨床検体を用いたトランスレーショナルリサーチ(TR)の推進
研究方法
進行神経芽腫の臨床試験を全国で可能にすることを目標として日本神経芽腫スタディグループ(JNBSG)が2006年5月に発足した(代表;金子道夫)。現在約100施設が加入し、高リスク群の標準治療臨床試験は、現行のガイドライン治療を当てる。検体センター2カ所、さらに成育医療センター内に神経芽腫登録センターを設置した。データセンターは厚生労働省牧本班の小児がんデータセンターが担当する。今後、中間リスク・低リスク群の治療研究につき準備作業が開始されている。神経芽腫予後予測のため実用化した発現解析ミニチップの検証作業が臨床試験とリンクして行う。

結果と考察
1. 複数の臨床試験の開始
(1) 標準治療の最適化のための有効性・安全性評価試験
既に日本全国で幅広く用いられてきた治療法を検証すべく、第IV相臨床試験を開始した。本治療レジメンを、将来の第III相無作為比較試験の標準アームとしての役割を期待する。
(2) 試験アームに用いる新規治療方針の第II相Feasibility研究
化学療法のスケジュールを中断しない新たな治療方針(遅延局所療法 delayed local therapy)についての臨床試験が開始された。一方で、移植前処置法をHiMECに替わって、L-PAM+Thiotepa を用いる探索的臨床試験プロトコールが完成した。これらの結果が有望であれば将来の第III相無作為比較試験の試験アームとして採用可能である。
2.臨床試験と並行して実施するリスク層別化、新規薬剤開発などを目的としたTR
患者由来検体を集積し、二次利用を促進するため、国立成育センター研究所を中心とした研究基盤を利用し、余剰検体を用いたTR体制を構築した。現在進行中の2つの臨床試験では、治療前と治療開始後とに得られる手術標本について中央病理診断を開始した。このような方式より、従来困難とされた局所治療の評価をより科学的に可能にすることが出来るとともに、初期治療・統一した前処置による自家造血幹細胞移植の評価を局所治療と分離して評価することが可能となった。
結論
小児がんの研究を通して、日本国民への貢献は言うに及ばず、国際的にも発進力を持ったわが国独自の研究体制が完成したといってよい。また将来は成人領域でも希少疾患を対象とする臨床研究が必要になるであろうことを推測すると、われわれの構築した体制は、先駆け的なものである。

公開日・更新日

公開日
2007-04-25
更新日
-

文献情報

文献番号
200622017B
報告書区分
総合
研究課題名
進行神経芽腫に対する標準治療確立および新規治療開発のための研究
課題番号
H16-がん臨床-一般-039
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
金子 道夫(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 熊谷 昌明(国立成育医療センター 血液科)
  • 麦島 秀雄(日本大学 細胞再生移植医学)
  • 杉本 徹(京都府立医科大学 小児科)
  • 正木 英一(国立成育医療センター 放射線診療部)
  • 田尻 達郎(九州大学 付属病院小児外科)
  • 中川原 章(千葉県がんセンター 研究所)
  • 秦 順一(国立成育医療センター)
  • 牧本 敦(国立がんセンター中央病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)複数の臨床試験の推進による標準治療の確立および再発例への新規治療を開発する。
(2)臨床試験登録例からの患者由来検体を利用したトランスレーショナルリサーチ(TR)の推進
研究方法
2004年に準備作業を始めた日本神経芽腫スタディグループ(JNBSG)が2006年5月に発足した(代表;金子道夫)。現在約100施設が加入し、高リスク群の標準治療臨床試験は、従来のガイドライン治療を骨格として、実施可能性と安全性とを考慮して改変したものを当てた。検体センター、神経芽腫登録センター、データセンターを設置した。中間リスク・低リスク群の治療研究につき準備作業を開始した。神経芽腫予後予測のため実用化した発現解析ミニチップの検証作業を臨床試験とリンクして実施する体制を構築した。
結果と考察
1.進行神経芽腫に対する術前化学療法としての大量化学療法併用自家幹細胞移植および遅延局所療法の早期第Ⅱ相目的とした局所治療遅延方式の第Ⅱ相試験、
2006年1月に開始された。第1例目が初期治療1クール目で生検後出血、腫瘍崩壊症候群、感染により非腫瘍死を来たした。直ちに効果安全性評価委員会が開催され、症例特有の条件によるものとされた。登録後の病勢進行による全身状態悪化と治療遂行可能性の判断を事務局と密接な連携を図ることとした。
2.高リスク神経芽腫に対する標準的集学的治療の後期第Ⅱ相試験
平成15年まで行われてきた治療方針の骨格を踏襲した臨床試験プロトコールであり、2006年9月にキックオフが行われた。
 小児腫瘍は稀少疾患であるため、成人がんの臨床試験に比較し、数倍の時間が必要で、継続的な財政援助が不可欠である。一方、前向きに登録された臨床試験症例の臨床検体を用いてTRが行える基盤は成人領域を含めても日本には皆無である。本システムは、日本の重要なモデルケースである。
結論
本研究班の第一号試験である「進行神経芽腫に対する術前化学療法としての大量化学療法併用自家造血幹細胞移植および遅延局所療法(delayed local therapy)の早期第II相臨床試験」が開始され、7名のエントリーがあった。目標の16名にまもなく達する。
また、第二号臨床試験である「進行神経芽腫に対する多剤併用化学療法、局所療法および自家造血幹細胞救援療法を併用した大量化学療法を含む集学的治療法の後期第II相試験」2006年9月に開始された。これら臨床試験登録例のデータおよび検体を用いた臨床研究およびトランスレーショナルリサーチが、効率的に実施可能になった意義は大きい

公開日・更新日

公開日
2007-04-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200622017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
臨床試験・トランスレーショナル リサーチ体制を継続的に構築することができ、神経芽腫など小児がんの病態解明・治療学の発展を大いに促進することが可能となった。
特に、全生後6か月児を対象とした神経芽腫マススクリーニング制度休止後の本疾患への対応という点においても、研究・調査上の基盤が整ったことは非常に意義深いものである。
臨床的観点からの成果
小児がんの研究を通して、日本国民への貢献は言うに及ばず、国際的にも発進力を持ったわが国独自の研究体制が完成したといってよい。また将来は成人領域でも希少疾患を対象とする臨床研究が必要になるであろうことを推測すると、われわれの構築した体制は、先駆け的なものである。
ガイドライン等の開発
本研究期間中に開始された臨床試験により、高リスク神経芽腫に対する標準治療の確立をめざし、神経芽腫の治療成績を向上させ続けるための基本となるデータの集積が可能になった。
すでに、高リスク神経芽腫または病期進行例の神経芽腫に対する臨床試験が実施され、国内で統一された手順として、中央病理診断・中央バイオロジー診断実施のためのガイドライン、および外科療法・放射線療法に関するガイドラインが整備された。
その他行政的観点からの成果
小児慢性特定疾患研究事業の中核をなす対象領域のひとつでもある小児がんは、わが国小児の死亡原因として不慮の事故に次ぐ第2位である。臨床研究・トランスレーショナルリサーチなどの推進によって、治療成績の向上など多大な行政的貢献が期待される。生後6か月に行われてきた神経芽腫マススクリーニング事業休止後の本疾患への対応を未来指向型に整備するという観点において成果が得られた。
その他のインパクト
希少難治疾患に対する多施設共同臨床試験体制として、わが国においては極めて先進的であり、成人領域のがん専門家やマスコミが、この実績を理解するには少々の時間が必要であると予想される。
20年以上前から厚生省(当時)の研究費を得て、遠隔転移のある本疾患に対する集学的治療を工夫した結果、長期生存率40-50%を達成した事実は驚異的なことでもある。

発表件数

原著論文(和文)
15件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-09-24
更新日
-