成人T細胞白血病(ATL)をモデルとしたウイルス感染関連がんに対する革新的治療法の開発

文献情報

文献番号
200622016A
報告書区分
総括
研究課題名
成人T細胞白血病(ATL)をモデルとしたウイルス感染関連がんに対する革新的治療法の開発
課題番号
H16-がん臨床-一般-038
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 純(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 神奈木真理(東京医科歯科大学 大学院研究科 免疫治療学分野)
  • 松岡 雅雄(京都大学ウイルス研究所)
  • 原田 実根(九州大学医学部 病態修復内科)
  • 朝長万左男(長崎大学医学部 原研内科)
  • 木村 暢宏(福岡大学医学部 第一内科)
  • 宇都宮 與(慈愛会今村病院分院 血液内科)
  • 谷口 修一(虎の門病院 血液内科)
  • 田野崎隆二(国立がんセンター中央病院 臨床検査部)
  • 増田 昌人(琉球大学医学部 第二内科)
  • 鵜池 直邦(国立病院機構九州がんセンター 血液内科)
  • 今村 雅寛(北海道大学大学院医学研究科血液内科)
  • 谷脇 雅史(京都府立医科大学大学院分子病態検査医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ATLに対する安全で効果的なミニ移植療法を開発する。
研究方法
1)血縁者間末梢血幹細胞を利用したミニ移植療法の検討(1-1)第2期臨床試験の解析(1-2)第3期臨床試験の開始  2)非血縁者間幹細胞を利用した移植療法の検討(2-1)非血縁者間臍帯血ミニ移植(RICBT)を検討 (2-2)非血縁者間骨髄移植(UBMT)成績を解析した。3)移植療法に伴う基礎的解析:(3-1)HTLV-Iプロウィルス量動態に関する研究、(3-2)RIST後の造血細胞動態に関する研究、(3-3)特異的細胞傷害性T細胞(CTL)の解析、(3-4)HTLV-Iの分子生物学的解析を行った。
結果と考察
(1-1)登録14例での生着は速やかで、本試験は成功と判断された。第1相臨床試験(1期、2期)の結果から、RISTは従来型の骨髄破壊的移植法と比較して、治療関連毒性が軽度で、高年齢患者でも十分に実施可能なことが証明された。(1-2)第3期臨床試験(第2相)は、18施設の倫理委員会で承認され、平成19年3月現在、7例が仮登録、3例で移植が実施された。(2-1)1年生存率22%であり、今回検討した前処置では、RICBTは非寛解期ATLに対する有効な治療法ではないと考えられた。(2-2)1年生存率49.5%で、死亡14例中9例が移植関連死亡であった。UBMTは移植幹細胞源となり得ると考えられた。(3-1)第1期、2期試験の55%でHTLV-Iプロウイルス量が移植後に測定感度以下となり、抗ウイルス効果が示唆された。(3-2)キメラ解析により全例でドナー・レシピエントの識別が可能であった。(3-3)第1期試験の4例中2例でHTLV-1 Tax特異的CTLの活性化が確認された。Tax特異的CTLは寛解維持に貢献しているのではないかと考えられた。(3-4)非登録例で、HTLV-1キャリアドナーからの骨髄移植後、早期にドナー由来の感染細胞が腫瘍化した症例を報告した。免疫抑制状態で短期間に悪性化したものと理解される。
結論
 前方視的試験により、ATLに対する血縁者間末梢血を利用したミニ移植療法の安全性が確立されつつある。過半数例でプロウイルスの消失が観察されたことから、坑ウイルス療法としての有効性が示唆され、本移植法が極めて有望な治療法であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200622016B
報告書区分
総合
研究課題名
成人T細胞白血病(ATL)をモデルとしたウイルス感染関連がんに対する革新的治療法の開発
課題番号
H16-がん臨床-一般-038
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 純(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 神奈木真理(東京医科歯科大学 大学院研究科 免疫治療学分野)
  • 松岡 雅雄(京都大学ウイルス研究所)
  • 原田 実根(九州大学医学部 病態修復内科)
  • 朝長万左男(長崎大学医学部 原研内科)
  • 木村 暢宏(福岡大学医学部 第一内科)
  • 宇都宮 與(慈愛会今村病院分院 血液内科)
  • 谷口 修一(虎の門病院 血液内科)
  • 田野崎隆二(国立がんセンター中央病院 臨床検査部)
  • 増田 昌人(琉球大学医学部 第二内科)
  • 鵜池 直邦(国立病院機構九州がんセンター 血液内科)
  • 今村 雅寛(北海道大学大学院医学研究科血液内科)
  • 谷脇 雅史(京都府立医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ATLに対する安全で効果的なミニ移植療法を開発する。
研究方法
1.骨髄破壊的植療法の検討: 40症例の成績を後方視的に解析した。2.血縁者末梢血幹細胞によるミニ移植法の検討:(2-1)臨床第1相:対象は、50~70才の急性型/リンパ腫型ATLで、主要評価項目は移植片の生着と早期TRMの発症として末梢血幹細胞を移植した。(2-2)臨床第2相:第2相試験を計画した。3.非血縁者間幹細胞移植法の検討:(3-1)23例で、非血縁臍帯血ミニ移植法(RICBT)を検討。(3-2)33例で、非血縁骨髄移植(UBMT)を解析した。4.基礎的検討課題:(4-1)リアルタイムPCRによりHTLV-1プロウイルス量を測定(4-2)蛍光PCRプライマーによりキメラ率を測定。4-3)移植前患者のHTLV-I感染細胞株を樹立し、その細胞で移植後の患者末梢血単核球を刺激して特異的細胞傷害性T細胞(CTL)の応答を解析。(4-4)HTLV-1プロウイルスの組み込み部位を同定し腫瘍細胞特異的なPCRを構築した。tax遺伝子の発現はRT-PCR法により解析した。
結果と考察
1骨髄破壊的移植40症例の3年生存率は45%で、TRMが40%と高かった。(2-1)第1期13/15例、第2期12/14例が主要評価項目を達成し、高齢者ATLへのミニ移植療法の安全性が確認された。(2-2)第2期試験と前処置が同一の第2相試験を開始した。(3-1)移植後の1年無再発生存率10%で、今回のRICBTの前処置では非寛解期ATLに対する有効な治療法とは言えないと考えられた。(3-2)1年生存率は49.5%で、UBMTはATLへの移植幹細胞源となり得ると考えられた。(4-1)第1期/2期試験症例の55%でプロウイルス量が移植後に測定感度以下となり、抗ウイルス効果が示唆された。(4-2)全症例でキメラ解析が可能であった。(4-3)HTLV-1 Tax特異的CTLの活性化が確認され、これらが寛解の維持に貢献している可能性が示唆された。(4-4)非登録例で、骨髄移植後早期にキャリアドナードナー由来のHTLV-1感染細胞が短期間で腫瘍化した症例を報告した。免疫抑制状態で短期間に悪性化したものと理解される。
結論
これまでの臨床試験の結果、ATLに対するミニ移植療法は極めて有望な治療法であることが明らかとなりつつある。

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200622016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ATLは乳児期のHTLV-1感染により発症する極めて予後不良の疾患である。同種幹細胞移植が唯一の根治的治療法であるが、従来の移植法では毒性が強いために普遍的な治療とはならない。我々は、ATLに対する治療法の開発を目指して、血縁者末梢血を移植幹細胞源とした骨髄非破壊的移植術(RIST)を試みて、その安全性を報告し、標準的治療としての可能性を指摘した。また、RIST後に過半数例でHTLV-1が測定感度以下になることを観察して、抗ウイルス療法としての有効性を世界でも初めて証明した。
臨床的観点からの成果
基礎研究者と臨床家が協力して臨床研究を実施し、その成果を論文として発表している。ATLに対する同種移植の前向き臨床試験は、国内外を通じて、唯一本研究班のみで実施されており、その成果と情報の発信は、本邦および世界的に見ても極めて貴重なものとなる。
ガイドライン等の開発
現在、研究班では第2相試験を実施中であり、まだ標準的治療として確立されていないため、ガイドラインを検討する段階には至っていない。
その他行政的観点からの成果
HTLV-1感染症に対する有効性を確認することにより、RISTを他の難治性ウィルス感染症に対しても応用することが可能となり、期待される国民医療と福祉に対する貢献が極めて大であると考えられる。
その他のインパクト
第1期試験に登録された患者さんが「医療ルネッサンス(2006年7月20日付読売新聞)」に実名および写真で登場された。この方は、移植後早期に再発したものの、免疫抑制剤の中止のみで再び寛解し、HTLV-1プロウイルス量も測定感度以下となった。その後5年半を経過して、元気に社会復帰しておられる。ATLに対するミニ移植研究班の研究内容や有効性が報道され、患者やその家族に大きなインパクトを与えた。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
51件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
95件
学会発表(国際学会等)
19件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kurihara, K., Shimizu, Y., Takamori, A et al.
Human T-cell leukemia virus type-I (HTLV-I)-specific T-cell responses detected using three-divided glutathione-S-transferase (GST)-Tax fusion proteins.
J Immunol Methods , 313 (2) , 61-73  (2006)
原著論文2
Komori, K., Hasegawa, A., Kurihara, K et al.
Reduction of human T-cell leukemia virus type 1 (HTLV-1) proviral loads in rats orally infected with HTLV-1 by reimmunization with HTLV-1-infected cells.
J Virol , 80 (15) , 7375-7381  (2006)
原著論文3
Okamura J, Utsunomiya A, Tanosaki R, et al.
Allogeneic stem cell transplantation with reduced conditioning intensity as a novel immunotherapy and antiviral therapy for adult T-cell leukemia/lymphoma.
Blood , 105 (10) , 4143-4145  (2005)
原著論文4
Kurihara K, Harashima N , Hanabuchi S, et al.
Potential immunogenicity of adult Tcell leukemia cells in vivo.
Int J Cancer , 114 (2) , 257-267  (2005)
原著論文5
Harashima N , Tanosaki R, Shimizu Y, et al.
Identification of two new HLA-A*1101-restricted Tax epitopes recognized by cytotoxic T-lymphocytes in an adult T-cell leukemia patient after hematopoietic stem cell transplantation.
J Virol , 79 (15) , 10082-10092  (2005)
原著論文6
Harashima N , Kurihara K , Utsunomiya A , et al.
Graft-versus-human Tax response in adult T cell leukemia patients after hematopoietic stem cell transplantation.
Cancer Res , 64 (1) , 391-399  (2004)
原著論文7
Nomura M, Ohashi T, Nishikawa K, et al.
Repression of Tax expression is associated both with resistance of human T-cell leukemia virus type 1-infected T cells to killing by Tax-specific cytotoxic T lymphocytes and with impaired tumorigenicity in a rat model.
J Virol , 78 (8) , 3827-3836  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-09-24
更新日
-