文献情報
文献番号
200621028A
報告書区分
総括
研究課題名
地域がん登録の法的倫理的環境整備に関する研究
課題番号
H16-3次がん-一般-038
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
丸山 英二(神戸大学大学院法学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 甲斐 克則(早稲田大学大学院法務研究科)
- 山下 登(神戸学院大学法学部)
- 田中 英夫(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター調査部疫学課)
- 掛江 直子(国立成育医療センター研究所成育政策科学研究部成育保健政策科学研究室)
- 松田 智大(国立がんセンターがん予防・検診研究センター情報研究部)
- 増成 直美(財団法人放射線影響研究所)
- 旗手 俊彦(札幌医科大学医学部医学科)
- 佐藤 雄一郎(京都府立医科大学大学院・地域保健医療疫学)
- 小笹 晃太郎(横浜市立大学医学部医学科)
- 寺沢 知子(摂南大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
9,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は,地域がん登録について,精度向上の観点と,個人情報保護やインフォームド・コンセントの理念などの法的倫理的観点から,そのあり方を指針のかたちで提示することによって,国民の理解と信頼のもとで実施されるがん登録事業を推進することである。
研究方法
研究は,研究者各自による文献やデータベースを用いた調査,地域がん登録全国協議会総会への参加,公開報告会,諸外国のがん登録実務者とのやりとり,海外の現地調査などにより得られた情報をとりまとめ,8回にわたり開催した研究班会議における議論を踏まえて集約を行った。
結果と考察
本研究は,当初,地域がん登録制度のあり方を指針のかたちで提示することを目指していたが,①平成18年6月にがん対策基本法が成立したこと,②わが国の地域がん登録が,個人情報保護条例の適用を受ける道府県市の事業として実施され,健康局長通知平成16年1月8日健発0108003号による手当では不十分なこと,③近時,マスメディアががん登録を肯定的に報道していること,④われわれが地域がん登録のあるべき姿として考えるものが,本人の同意を不要とし,拒否権を認めない制度であり,その導入には立法のプロセスを踏むことが適切であること,⑤欧米諸国の制度の大部分が法律に基づくものであること,に照らして,指針ではなく,「地域がん登録事業法」(素案)という形で制度のあり方を示すことにした。その要点は下記の通りである。
①地域がん登録事業の実施主体は都道府県とし,都道府県の法定受託事務と位置づける。
②医療機関に登録を義務づけ,患者に登録の拒否権・削除請求権を認めない。
③登録について患者の同意を求めず,登録に関する患者への個別的説明を医療機関に義務づけない。
④届出義務を履行しない医療機関管理者に対して都道府県知事が届出を要請することができ,それでも届出がなされない場合には,届出の命令を出すことができ,命令を受けても届出をしない管理者に対しては罰則を用意する。
⑤国及び都道府県に対して,地域がん登録に関して国民の理解を深める措置を講じる義務を課す。
⑥届出医療機関に対する転帰情報の提供を容認する法規定を置く。
⑦患者本人からの開示請求・訂正請求を認める。
①地域がん登録事業の実施主体は都道府県とし,都道府県の法定受託事務と位置づける。
②医療機関に登録を義務づけ,患者に登録の拒否権・削除請求権を認めない。
③登録について患者の同意を求めず,登録に関する患者への個別的説明を医療機関に義務づけない。
④届出義務を履行しない医療機関管理者に対して都道府県知事が届出を要請することができ,それでも届出がなされない場合には,届出の命令を出すことができ,命令を受けても届出をしない管理者に対しては罰則を用意する。
⑤国及び都道府県に対して,地域がん登録に関して国民の理解を深める措置を講じる義務を課す。
⑥届出医療機関に対する転帰情報の提供を容認する法規定を置く。
⑦患者本人からの開示請求・訂正請求を認める。
結論
「地域がん登録事業法」(素案)に関して,今後,論文・講演の発表・報告を通して広報に努め,行政や立法に生かす機会を求める。
公開日・更新日
公開日
2007-04-05
更新日
-