文献情報
文献番号
200621025A
報告書区分
総括
研究課題名
がん医療経済と患者負担最小化に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H16-3次がん-一般-034
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
濃沼 信夫(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
9,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
がん対策基本法に掲げられた患者の意向の尊重、患者中心の医療を実現する上で、経済的な悩みに適切に対応することが欠かせない。本研究は、がん医療に投じられる莫大な資源に見合う成果が得られているかを、医療経済学の立場から検証することにより、質、効率、安全に優れ、患者負担が最小化となるがん医療の実践に役立つ基礎的資料をうることを目的とする。
研究方法
患者の経済的負担の実態を正確に把握し、患者の立場から負担を最小化する方策を検討した。全国のがん診療施設35病院でがん患者を対象に調査を実施した。今年度は経済的負担が特に大きいと考えられる化学療法、造血器腫瘍、粒子線治療の患者、およびサバイバーの経済的負担の実態を調査した。さらに、がん保険を扱う民間保険会社すべてを対象に調査を実施した。
結果と考察
化学療法(回答256名、回答率51.2%)、造血器腫瘍(60名、57.1%)、粒子線治療(143名、71.5%)では、貯蓄の取り崩し、民間保険給付金、親族からの借金などで支払いを行っている患者が少なくない。自己負担の割合が大きい粒子線治療については、保険適用の検討に加え、民間保険の役割の拡大、居住地の近くで治療が受けられる施設整備等が望まれる。サバイバー(フォローアップ939名、回答率36.5%、治療を終えた者871名、47.7%)では、健康食品・民間療法の支出額が大きく、長期にわたる経済的負担感は少なくない。がん保険を扱う民間保険会社(回答20社、回答率41.7%)に対する調査では、がん保険料は年間平均5.5万円であり、高齢になるにつれ高くなる傾向にある。給付対象は入院給付、手術給付、診断給付、通院給付、死亡給付、退院時の給付、生前給付の順に多い。民間保険が提供するがん保険は、入院治療とフォローアップの通院治療が主たる給付対象で、最近の医療技術の進歩や医療制度の変化、患者ニーズの多様化に必ずしも対応したものとはなっていないという課題がある。
結論
患者の自己負担は大きくなっているが、経済的負担に関する医師の説明は依然不十分な状況にあり、データベースの整備など経済面の情報提供システムの構築が不可欠と考えられる。がん医療の進歩を患者にあまねく届けるため、臨床現場、現行制度の運用、制度改革の3つのレベルで、種々の工夫、対策がなされる必要がある。
公開日・更新日
公開日
2007-04-09
更新日
-