QOLの向上をめざしたがん治療法の開発研究

文献情報

文献番号
200621022A
報告書区分
総括
研究課題名
QOLの向上をめざしたがん治療法の開発研究
課題番号
H16-3次がん-一般-031
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 茂昭(国立がんセンター東病院)
研究分担者(所属機関)
  • 林  隆一(国立がんセンター東病院)
  • 井本  滋(国立がんセンター東病院)
  • 名川 弘一(東京大学大学院医学系研究科)
  • 齋藤 典男(国立がんセンター東病院)
  • 松岡 直樹(国立がんセンター中央病院)
  • 内田 淳正(三重大学医学部)
  • 中塚 貴志(埼玉医科大学)
  • 佐々木 寛(東京慈恵会医科大学柏病院)
  • 萩原 明郎(京都府立医科大学大学院医学研究科)
  • 荒井 保明(国立がんセンター中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
65,175,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、がん患者の身体的QOLの障害を最小限にとどめたがん治療法、あるいはQOLの障害を回復するための各種治療法を開発することによって、がん患者の社会的復帰、あるいは日常生活の質の向上に寄与することを目的としている。
研究方法
研究の方向性は二点に収斂される。一つは、根治性を犠牲にせずに機能温存や臓器温存を可能とする治療法の開発であり、他の一つは、がんの治療あるいは病勢進行に伴って損なわれる身体的QOLの障害を軽減するための治療法の開発である。これらは、いずれも日常診療における問題意識や創意工夫を基盤として発想されるいわゆる臨床研究の範疇であり、基本的には薬剤開発に準拠して、前臨床試験、第Ⅰ相試験(feasibility試験)から、第Ⅱ相試験に相当する有効性と安全性の検証試験、更に必要な場合は第Ⅲ相試験に相当する無作為化比較試験へと相別に評価を行う。但し、第Ⅲ相の部分については、当班のみでは人的資源も限られることから、他の研究グループとの共同研究として行う。
結果と考察
本年度は前年度に得られた研究成果の一層の進展が図られ、多くの新たな知見が示されたが、中でも、①T0-1下咽頭がんの内視鏡的切除困難例における一次縫合手術の適応と限界の設定、②N0乳癌に対するラジオ波を用いた局所治療のfeasibility 試験の進展、③進行下部直腸癌(前立腺浸潤例)に対する膀胱温存手術の長期術後評価、④転移再発性頭頚部がんに対する新規induction chemotherapy(TS-1+CDDP+Docetaxel)とそれに続く根治的放射線化学療法の開発、⑤再建プレートを用いた下顎再建術式の開発、⑥乳がんに対する術前化学放射線療法(手術を省略できる可能性)の開発、⑦勃起神経を代替するための自家神経移植術、⑧雑犬における消化管(食道)の再生技術の開発などに新たな展開が得られ、更に、症状緩和を目的としたIVRの開発では、⑨経皮的椎体形成術と経頚部食道胃管挿入術が良好な成績で第Ⅱ相試験を終了した。
結論
現在取り組んでいる研究課題の進捗状況は順調であり、特段の問題点は指摘されない。また、開発的な治療技術については手技の安定化(標準化)と再現性の評価が課題となるが、臨床試験の方法論に準拠することで充分対応可能である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200621022B
報告書区分
総合
研究課題名
QOLの向上をめざしたがん治療法の開発研究
課題番号
H16-3次がん-一般-031
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 茂昭(国立がんセンター東病院)
研究分担者(所属機関)
  • 林 隆一(国立がんセンター東病院)
  • 井本 滋 (国立がんセンター東病院)
  • 名川 弘一(東京大学大学院医学系研究科)
  • 齋藤典男(国立がんセンター東病院)
  • 松岡直樹(国立がんセンター中央病院)
  • 内田淳正(三重大学医学部)
  • 佐々木寛(東京慈恵会医科大学柏病院)
  • 中塚貴志(埼玉医科大学)
  • 山岸久一(京都府立医科大学大学院医学研究科)
  • 萩原明於(京都府立医科大学大学院医学研究科)
  • 荒井保明(国立がんセンター中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、がん患者の身体的QOLの障害を最小限にとどめたがん治療法、あるいはQOLの障害を回復するための各種治療法を開発することによって、がん患者の社会的復帰、あるいは日常生活の質の向上に寄与することを目的としている。
研究方法
研究の方向性は二点に収斂される。一つは、根治性を犠牲にせずに機能温存や臓器温存を可能とする治療法の開発であり、他の一つは、がんの治療あるいは病勢進行に伴って損なわれる身体的QOLの障害を軽減するための治療法の開発である。これらは、いずれも日常診療における問題意識や創意工夫を基盤として発想されるいわゆる臨床研究の範疇であり、基本的には薬剤開発に準拠して、前臨床試験、第Ⅰ相試験(feasibility試験)から、第Ⅱ相試験に相当する有効性と安全性の検証試験、更に必要な場合は第Ⅲ相試験に相当する無作為化比較試験へと相別に評価を行う。但し、第Ⅲ相の部分については、当班のみでは人的資源も限られることから、他の研究グループとの共同研究として行う。
結果と考察
過去三年間に得られた研究成果は多岐にわたり、多くの新たな知見が示された。主要な成果は以下の通りである。①喉頭および咽頭がんに対する機能(発声および嚥下)温存手術法の開発、②N0乳癌に対するラジオ波を用いた局所治療の開発、③下部直腸進行がん(前立腺浸潤例)に対する膀胱・肛門温存手術法の開発と評価、④患肢温存を可能とする集学的手術法の開発、⑤術後リンパ浮腫を防止する婦人科手術法の開発、⑥臓器温存を可能とする根治的放射線化学療法の開発(食道がん、手術不能頭頚部がん、進行乳がん)⑦再建プレートを用いた下顎再建術式の開発、⑧前立腺がん手術により失われる勃起神経を代替する自家神経移植術の開発、⑨神経再生管を用いた神経再生法の開発とその臨床応用(骨盤内神経の再生)、⑩雑犬における消化管(食道)再生技術の開発、⑪症状緩和を目的としたIVRの開発と臨床試験による評価など。
結論
現在取り組んでいる研究課題の進捗状況は順調であり、有効性、安全性についても特段の問題点は指摘されていない。また、開発的な治療技術については手技の安定化(標準化)と再現性の評価が課題となるが、臨床試験の方法論に準拠することで充分対応可能である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200621022C

成果

専門的・学術的観点からの成果
神経や消化管の再生は、がん治療特に外科切除後の脱落症状を軽減し、患者QOLの向上に寄与する。このため、これまで多くの研究者によって開発が試みられているが、本研究班の様なレベルでの成果は得られていない。また、頭頚部がんを対象に開発した新規放射線化学療法(がん巣の完全消失率:95%)では、TS-1中に含まれるCDHPと放射線照射との併用に強い相乗効果の存在することが実験的にも確認され、新たな対がん治療戦略の開発につながる成果となった。
臨床的観点からの成果
これまでがんの根治療法としては外科的切除以外になく、多くのがん患者は術後の脱落症状(QOLの低下)に悩まされていた。しかし、本研究班で開発された様々な機能温存手術や、切らずに治す根治的放射線化学療法(+内科的補助療法)の開発は、可及的に広汎切除を行うとする、これまでのがん治療の考え方を一新した。同時に、失われる機能や形態に対する再建技術の開発は、緩和医療としてのIVRの開発を含め、これまで臨床的に対応困難であった病態の解消(QOLの向上)を可能とした。
ガイドライン等の開発
現在臨床試験中あるいは試験終了となった分野、すなわち、頭頚部がん、食道がん、乳がんに対する放射線化学療法、早期乳がんに対する局所療法、術後のリンパ浮腫防止する婦人科手術法、直腸がんに対する膀胱・肛門温存手術などは、すべてガイドラインの開発を研究の視野に含んでおり、一部は既にガイドラインに反映している。また、喉頭温存手術に関しては、その治療成績をガイドラインとして公表している。
その他行政的観点からの成果
これまでのがん対策は予防と生存に主軸が置かれ、患者QOLについては余り重視されてこなかった。本研究班は先の第二次対がん10か年戦略事業において初めて取り上げられたQOLの分野を更に深化させ、これまで実現困難とされてきた患者QOLの向上と根治性の両立、あるいは緩和医療の質的向上を可能とした点で、今後のがん対策における一つの方向性を明示し得たと思われる。
その他のインパクト
本研究班で得られた研究成果は、いわゆる創造的医療の具体化と言えるものであり、治療成績の向上を図るには更なる医療技術の開発や機器開発が不可欠である。従って、医療経済学的な立場から見れば新規需要の喚起をもたらすものであり、新たな産業分野の構築に繋がる可能性を秘めている。いずれにせよ、本研究成果は疑いなく医療の質の向上に寄与しており、がん医療の環境整備という視点にも強いインパクトを与えるものである。

発表件数

原著論文(和文)
196件
原著論文(英文等)
139件
その他論文(和文)
41件
その他論文(英文等)
38件
学会発表(国内学会)
305件
学会発表(国際学会等)
56件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Imoto S, Wada N, Murakami K, et al.
Prognosis of breast cancer patients treated with sentinel node biopsy in Japan.
Jpn J Clin Oncol , 34 (8) , 452-456  (2004)
原著論文2
Imoto S, Ochiai A, Okumura C, et al.
Impact of isolated tumor cells in sentinel lymph nodes detected by immunohisto- chemical staining.
Eur J Surg Oncol , 32 (10) , 1175-1179  (2006)
原著論文3
Watanabe T, Kiyomatsu T, Nagawa H, et al.
Chemoradiotherapy for rectal cancer: current status and perspectives
Int J Clin Oncol , 9 (6) , 475-483  (2004)
原著論文4
Kinoshita H, Watanabe T, Nagawa H, et al.
Pathological changes of advanced lower-rectal cancer by preoperative radiotherapy
Hepatogastroenterol , 51 (59) , 1362-1366  (2004)
原著論文5
Komuro Y, Watanabe T, Nagawa H, et al.
Prognostic significance of Ku70 protein expression in patients with advanced colorectal cancer
Hepatogastroenterol , 52 (64) , 995-995  (2005)
原著論文6
Konishi T, Watanabe T, Nagawa H, et al.
Elective colon and rectal surgery differ in risk factors for wound infection: results of prospective surveillance
Ann Surg , 244 (5) , 758-763  (2006)
原著論文7
N. Saito, T. Suzuki, M. Sugito,et al.
Bladder-Sparing Extended Resection for Locally Advanced Rectal Cancer Involving the Prostate and Seminal Vesicles.
Surgery Today  (2007)
原著論文8
Tsukino H,Hanaoka T, Sasaki H et al.
Associations between serum levels of selected organochlorine compounds and endometriosis in infertile Japanese women
Environmental Researc , 99 , 118-125  (2005)
原著論文9
Tsuchiya M , Nakao H Sasaki H et al.
Association between endometriosis and genetic polymorphisms of the estradiol-synthesizing enzyme genes HSD17B1 and CYP19
Human Reproduction , 20 , 974-978  (2005)
原著論文10
Tsuchiya M Katoh T , Sasaki H et al.
Analysis of the AhR,ARNT,and AhRR gene polymorphisms
genetic contribution to endometriosis susceptibility and severity , 84 , 454-458  (2005)
原著論文11
Takeishi M, Kojima M Sasaki H et al.
Primary intrapelvic lymphaticovenular anastomosis following lymph node dissection.
Annals of Plastic Surgery , 57 , 300-304  (2006)
原著論文12
Tsukioka H, Hanaoka T, Sasaki H et al.
Fish Intake and serum levels of organochlorines among Japanese women
Sci Total Environ , 15 (359) , 90-100  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-09-24
更新日
-