新戦略に基づく抗がん剤の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200621019A
報告書区分
総括
研究課題名
新戦略に基づく抗がん剤の開発に関する研究
課題番号
H16-3次がん-一般-028
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
江角 浩安(国立がんセンター東病院臨床開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 百瀬 功(財団法人微生物化学研究会沼津創薬医科学研究所)
  • 北 潔(東京大学大学院医学研究科)
  • 田中 雅嗣(財団法人高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
  • 上野 隆(順天堂大学医学部)
  • 門田 守人(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 松村 保広(国立がんセンター東病院臨床開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
69,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトのがん組織の特徴、特に血管系の機能の特徴に着目し、がん細胞の低酸素・低栄養に対する抵抗性を治療標的とした新しい薬剤の基礎的臨床的開発を行う。また癌組織の脈管の特徴に注目し従来の抗がん剤のポリマーミセル内包によるDDSを目指す。
研究方法
乏血性がん細胞生存メカニズムに関し、培養細胞を用いた生化学的および分子生物学的解析とともに、ヒトの手術材料を用いたメタボロミクス解析を行った。飢餓状態でのオートファギーの意義に関する研究では、培養細胞を用いた研究とともに、大腸癌に関してはヒトの試料も解析した。がん組織の微小環境の解析では、ミトコンドリアの変異に関しては、ヒトの試料の解析を行った。DDSの研究に関しては、動物を用いたモデル実験の後、臨床導入を行った。本研究は、すべて倫理審査委員会においての承認を経ている。遺伝子検査、臨床検体の解析動物実験も同様である。
結果と考察
癌細胞の飢餓状態での生存メカニズムを解析し、新たにLKB1,NDR2、ATMの関与を明らかにした。酵素学的に嫌気的エネルギー産生系の存在を確認した。大腸がん組織は極端な低グルコース、正常アミノ酸濃度であることを明らかにした。放線菌からは、アクチノマイシン、ピエリシジンなど呼吸鎖阻害活性を持つ物質が繰り返し検出され、がんの生存と呼吸鎖酵素の関連が強く疑われた。伝統薬から見いだしたアクチゲニンは毒性も低く臨床導入可能と考えられた。ポリマーミセルシスプラチンは、神経毒性、腎毒性が顕著に抑制され、日英共同研究として臨床第一相に入った。また、SN38内包ミセルが、血管新生が盛んな腫瘍で劇的効果を示し、臨床第一相試験を開始した。栄養欠乏状態になるとオートファギーを活発化するが、ヒトの大腸がん細胞を用いこの反応が生存に関わること、臨床がんでは盛んにオートファギーが起こり診断マーカーに出来ることを見出した。
結論
がん組織の微小環境は、正常組織と大きく違い、がんの微小環境に基づく治療薬の開発が必須でかつ現実的であることが分かった。がん組織の特異な脈管系に基づくDDSがきわめて有効ながんがあることが分かった。臨床導入を開始した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200621019B
報告書区分
総合
研究課題名
新戦略に基づく抗がん剤の開発に関する研究
課題番号
H16-3次がん-一般-028
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
江角 浩安(国立がんセンター東病院臨床開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 國元 節子(財団法人微生物化学研究会微生物化学研究センター沼津創薬医科学研究所)
  • 百瀬 功(財団法人微生物化学研究会微生物化学研究センター沼津創薬医科学研究所)
  • 北 潔(東京大学大学院医学系研究科)
  • 田中 雅嗣(財団法人高齢者研究福祉振興財団東京都老人総合研究所)
  • 上野 隆(順天堂大学医学部)
  • 門田 守人(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 松村 保広(国立がんセンター東病院臨床開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトのがん組織の特徴、特に血管系の機能の特徴に着目し、がん細胞の低酸素・低栄養に対する抵抗性を治療標的とした新しい薬剤の基礎的臨床的開発を行う。また癌組織の脈管の特徴に注目し従来の抗がん剤のポリマーミセル内包によるDDSを目指す。
研究方法
乏血性がん細胞生存メカニズムに関し、培養細胞を用いた生化学的および分子生物学的解析とともに、ヒトの手術材料を用いたメタボロミクス解析を行った。飢餓状態でのオートファギーの意義に関する研究では、培養細胞を用いた研究とともに、大腸癌に関してはヒトの試料も解析した。がん組織の微小環境の解析では、ミトコンドリアの変異に関しては、ヒトの試料の解析を行った。DDSの研究に関しては、動物を用いたモデル実験の後、臨床導入を行った。本研究は、すべて倫理審査委員会においての承認を経ている。遺伝子検査、臨床検体の解析動物実験も同様である。
結果と考察
乏血性の癌細胞の生存メカニズムを解析し、AKT,AMPK,ARK5、LKB1,NDR2、ATMの関与を明らかにした。嫌気的エネルギー産生系の存在を確認した。大腸がん組織は極端な低グルコース、正常アミノ酸濃度であることを明らかにした。放線菌からキガマイシンと、ピエリシジンなど呼吸鎖阻害剤が繰り返し検出され、がんの生存と呼吸鎖酵素の関連が強く疑われた。伝統薬からエンジェルマリン、アクチゲニンを見出した。アクチゲニンは早期の臨床導入を目指す。ポリマーミセルシスプラチンは、神経毒性、腎毒性が顕著に抑制され、日英共同研究として臨床第一相に入った。また、SN38内包ミセルが、血管新生が盛んな腫瘍で劇的効果を示し、臨床第一相試験を開始した。栄養欠乏状態になるとオートファギーを活発化するが、ヒトの大腸がん細胞を用いこの反応が生存に関わること、臨床がんでは盛んにオートファギーが起こり診断マーカーに出来ることを見出した。
結論
がん組織の微小環境は、想像以上に正常と遠いものであった。正常組織の生化学・分子生物学に基づくのではなくがんの微小環境と生物学の解明と、これに基づく治療薬の開発が現実的であることを示すことができた。また、がん組織の特異な脈管系に基づくDDSがきわめて有効ながんがあることを明確に示すことができた。臨床導入に関する画像化を含めた治療法選択のための方法の開発を進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200621019C