癌の新しい診断技術の開発と治療効果予測の研究

文献情報

文献番号
200621015A
報告書区分
総括
研究課題名
癌の新しい診断技術の開発と治療効果予測の研究
課題番号
H16-3次がん-一般-023
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
金子 安比古(埼玉県立がんセンター臨床腫瘍研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 新井 康仁(国立がんセンター研究所)
  • 林 慎一(東北大学医学部)
  • 角 純子(埼玉県立がんセンター臨床腫瘍研究所 )
  • 赤木 究(埼玉県立がんセンター病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
DNAアレイ、蛋白質アレイ、RT-LAMP法など最新の技術を駆使して臨床検体を分析し、腫瘍の分子機構を解明する。その知見に基づき、総合的診断法と治療効果予測法を開発する。小児癌と白血病では難治例の治療前予後予測法、乳癌では内分泌療法の効果予知法、転座型白血病では治療効果の判定法を開発し、臨床応用を図る。
研究方法
ウイルムス腫瘍ではWT1とIGF2遺伝子を、肝芽腫では癌抑制遺伝子RASSF1Aのメチル化を分析した。エストロゲンシグナル応答性GFP(ERE-GFP)を乳癌細胞株や患者の乳癌細胞に導入し、微小環境を評価する系を確立した。癌患者の血清NM23-H1とH2をELISA法で分析した。白血病細胞にNM23-H1を加え増殖能の変化を調べた。蛋白質アレイにより、NM23と結合する蛋白質を同定した。白血病の治療効果判定のために、RT-LAMP法を応用した。
結果と考察
ウイルムス腫瘍を分析し、30%にWT1異常をみとめた。また、IGF2-LOH型25%、IGF2-LOI型34%、IGF2-ROI型41%に分類した。日本の発生頻度は欧米の1/2である。欧米腫瘍ではWT1異常が15%, IGF2-LOIが30から70%にみられるので、母集団に対するWT1異常腫瘍の頻度は日欧間で差はないが、IGF2-LOI型腫瘍の頻度が欧米の半数であると推測された。肝芽腫39例を分析し、RASSF1Aのメチル化を39%に認めた。メチル化腫瘍の予後は不良であったので、予後予知に利用できる。ERE-GFP導入乳癌細胞を用い、癌細胞と間質のホルモン反応性を調べた。乳癌の微小環境は個人差が大きく、癌の臨床病理学的特徴、アロマターゼ阻害剤の効果と関係することが分かった。NM23は白血病細胞の増殖を促進させ、サイトカイン、MAPK・STATシグナル伝達系の活性化を導いた。NM23と結合する21個の蛋白質を同定した。血清NM23高値患者の予後が不良である原因の一部を解明した。白血病細胞total RNAの希釈による半定量的目視判定法を開発した。
結論
日本人にはIGF2-LOIを示すウイルムス腫瘍が欧米人に比べて少ない。乳癌の内分泌療法効果予知の研究とNM23を標的とする治療法の開発を前進させた。慢性骨髄性白血病患者に対するイマチニブの治療効果を判定する迅速で簡便な検査法を開発した。

公開日・更新日

公開日
2007-05-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200621015B
報告書区分
総合
研究課題名
癌の新しい診断技術の開発と治療効果予測の研究
課題番号
H16-3次がん-一般-023
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
金子 安比古(埼玉県立がんセンター臨床腫瘍研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 新井 康仁(国立がんセンター研究所)
  • 林 慎一(東北大学医学部)
  • 角 純子(埼玉県立がんセンター臨床腫瘍研究所 )
  • 赤木 究(埼玉県立がんセンター病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
DNAアレイ、蛋白質アレイ、RT-LAMP法など最新の技術を駆使して臨床検体を分析し、腫瘍の分子機構を解明する。その知見に基づき、総合的診断法と治療効果予測法を開発する。小児癌、白血病、肺癌では難治例の治療前予後予測法、乳癌では内分泌療法の効果予知法、転座型白血病では治療効果の判定法を開発し、臨床応用を図る。
研究方法
ウイルムス腫瘍ではWT1とIGF2遺伝子異常を、肝芽腫では癌抑制遺伝子RASSF1Aのメチル化を分析した。エストロゲンシグナル応答性GFP(ERE-GFP)を乳癌細胞株や新鮮乳癌細胞に導入し、微小環境を評価する系を確立した。癌患者の血清NM23-H1とH2をELISA法で分析した。白血病細胞にNM23-H1を加え増殖能の変化を調べた。白血病の治療効果判定のために、RT-LAMP法を応用した。肺癌の遺伝子変異を分析した。
結果と考察
ウイルムス腫瘍を分析し、30%にWT1異常を認めた。またIGF2-LOH型25%、IGF2-LOI型34%、IGF2-ROI型41%に分類した。日本の発生頻度は欧米の1/2である。欧米腫瘍ではWT1異常が15%, IGF2-LOIが30から70%と報告されているので、IGF2-LOI型腫瘍の母集団に対する発生頻度が欧米の半数であると推測された。肝芽腫39例を分析し、RASSF1Aのメチル化を39%に認めた。メチル化腫瘍の予後は不良であったので、予後予知に利用できる。ERE-GFP導入乳癌細胞を用い、微小環境を評価したところ、個人差が大きく、癌の臨床病理学的特徴、アロマターゼ阻害剤の効果と関係することが分かった。NM23は白血病細胞の増殖を促進させ、サイトカイン、MAPK・ STATシグナル伝達系の活性化を導いた。血清NM23高値患者の予後が不良である原因の一部を解明した。白血病細胞total RNAの希釈による半定量的目視判定法を開発した。肺癌のp53変異とK-ras変異を分析し、両変異が予後に影響することを示した。
結論
日本人にはIGF2-LOIを示すウイルムス腫瘍の発生頻度が欧米人に比べて少ない。乳癌の内分泌療法効果予知の研究とNM23を標的とする癌治療法の開発を前進させた。慢性骨髄性白血病患者に対するイマチニブの治療効果を判定する迅速で簡便な検査法を開発した。p53変異とK-ras変異は肺癌の予後因子である。

公開日・更新日

公開日
2007-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200621015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
様々な小児と成人の癌をSNPアレイ、発現アレイ、蛋白質アレイなどを駆使して臨床検体を分析し、悪性度の指標となる分子マーカーを発見した。ウイルムス腫瘍と肝芽腫では癌抑制遺伝子RASSF1Aのメチル化、乳癌ではHDAC6とEGR3蛋白質の高発現、白血病・悪性リンパ腫では血清NM23蛋白質の高濃度、肺癌ではp53変異とK-ras変異の組み合わせなどである。それぞれユニークな特徴をもつので、今後の研究の発展が期待できる。
臨床的観点からの成果
様々な小児と成人の癌をSNPアレイ、発現アレイ、蛋白質アレイなどを駆使して臨床検体を分析し、悪性度の指標となる分子マーカーを発見した。ウイルムス腫瘍と肝芽腫では癌抑制遺伝子RASSF1Aのメチル化、乳癌ではHDAC6とEGR3蛋白質の高発現、白血病・悪性リンパ腫では血清NM23蛋白質の高濃度、肺癌ではp53変異とK-ras変異の組み合わせなどである。これらのマーカーを治療法の選択に応用できるのではないかと期待している。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
54件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
97件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
1)角純子[NM23蛋白質の測定方法及びそれを用いた悪性腫瘍の診断方法]特許 2)林 慎一[遺伝子導入細胞]特願 3)林 慎一[細胞分析方法]特願
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Satoh,Y., Nakadate,H., Kaneko,Y.,et.al
Genetic and epigenetic alterations on the short arm of chromosome 11 are involved in a majority of sporadic Wilms' tumours.
Br.J.Cancer , 95 , 541-547  (2006)
原著論文2
Sugawara,W., Haruta,M., Kaneko,Y.,et.al
Promoter hypermethylation of the RASSF1A gene predicts the poor outcome of patients with hepatoblastoma.
Pediatr Blood & Cancer, E-pub,  (2006)
原著論文3
Watanabe,N., Nakadate, H., Kaneko,Y.,et.al
Association of 11q loss, trisomy 12 and possible 16q loss with loss of imprinting of insulin-like growth factor-II in wilms tumor.
Genes Chromosomes Cancer , 45 , 592-601  (2006)
原著論文4
Takahashi,K.,Kohno, T., Kaneko,Y.,et.al
Clonal and parallel evolution of primary lung cancers and their metastases revealed by molecular dissection of cancer cells.
Clin. Cancer Res. , 13 , 111-120  (2007)
原著論文5
Zhang,Z.,Yamashita, H., Kaneko,Y.,et.al
HDAC6 expression is correlated with better prognosis in breast cancer.
Clin. Cancer Res. , 10 , 6962-6968  (2004)
原著論文6
Yoshida, N., Omoto, Y.,Kaneko,Y.,et.al
Prediction of prognosis of estrogen receptor-positive breast cancer with combination of selected estrogen-regulated genes.
Cancer Science , 95 , 496-502  (2004)
原著論文7
Saji, S., Kawakami, M., Hayashi, S.,et.al
Significance of HDAC6 regulation via estrogen signaling for cell motility and prognosis in estrogen receptor-positive breast cancer.
Oncogene , 24 , 4531-4539  (2005)
原著論文8
Yamaguchi,Y., Takei,H., Hayashi, S.,et.al
Tumor-stromal interaction through the estrogen- signaling pathway in human breast cancer.
Cancer Res. , 65 , 4653-4662  (2005)
原著論文9
Miki, Y., Suzuki, T., Hayashi, S.,et.al
Aromatase localization in human breast cancer tissues – possible interaction between intratumoral stromal and parenchymal cells.
Cancer Res. , 62 , 3945-3954  (2007)
原著論文10
Niitsu,N.,Nakamine,H., Okabe-Kado,J., et.al
Clinical significance of nm23-H1 proteins expressed in cytoplasm in diffuse large B-cell lymphoma.
Clin. Cancer Res. , 10 , 2482-2490  (2004)
原著論文11
Okabe-Kado,J.,Kasukabe, T., Honma, Y., et.al
Clinical significance of serum NM23-H1 protein in neuro-blastoma.
Cancer Sci. , 96 , 653-660  (2005)
原著論文12
Ishikubo,T., Nishimura, Y., Yamaguchi, K., et.al
The clinical features of rectal cancers with high-frequency microsatellite instability (MSI-H) in Japanese males.
Cancer Let. , 8 (216) , 55-62  (2004)
原著論文13
Akagi K., Uchibori R., Yamaguchi K.,et.al
Characterization of a novel oncogenic K-ras mutation in colon cancer.
Biochem Biophys Res Commun. , 352 , 728-732  (2006)
原著論文14
Kobayashi,K.,Tokuchi,Y.,Tsuchiya, E.,et.al
Molecular markers for reinforcement of histological subclassification of neuroendocrine lung tumors.
Cancer Sci. , 95 , 334-341  (2004)
原著論文15
Satoh, Y., Ishikawa, Y.,Tsuchiya, E.,et.al
Classification of parietal pleural invasion at adhesion sites with surgical specimens of lung cancer and implications for prognosis.
Virchows Arch. , 447 , 984-989  (2005)
原著論文16
Shimmyo,T.,Hashimoto,T.,Tsuchiya, E.
. p53 mutation spectra for squamous cell carcinomas at different levels of human bronchial branches.
Int. J. Cancer , 119 , 501-507  (2006)
原著論文17
Kaneko, Y., Kobayashi, H., Watanabe, N.,
Biology of neuroblastomas that were found by mass screening at 6 months of age in Japan.
Pediatr Blood & Cancer , 46 , 285-291  (2006)
原著論文18
Inoue, A., Omoto, Y., Hayashi S., et.al
Transcription factor EGR3 is involved in the estrogen-signaling pathway in breast cancer cells.
J. Mo. Endocrin. , 32 , 649-661  (2004)
原著論文19
Suzuki, T., Miki, Y.,Hayashi S., et.al
5α-reductase type 1 and aromatase in breast carcinoma as regulators of in situ androgen production.
Int. J. Cancer, , 120 , 285-291  (2006)
原著論文20
Ishikubo T., Akagi K., Kurosumi M.,
Immunohistochemical and mutational analysis of c-kit in gastrointestinal neuroendocrine cell carcinoma.
Jpn. J. Clin. Oncol. , 36 (8) , 494-498  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-09-24
更新日
-