難治性小児がんの臨床的特性の分子情報とその理論を応用した診断・治療法の開発

文献情報

文献番号
200621008A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性小児がんの臨床的特性の分子情報とその理論を応用した診断・治療法の開発
課題番号
H16-3次がん-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
秦 順一(国立成育医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 藤本 純一郎(国立成育医療センター研究所)
  • 大喜多 肇(国立成育医療センター研究所)
  • 宮下 俊之(国立成育医療センター研究所)
  • 副島 英伸(佐賀大学 医学部)
  • 黒田 雅彦(東京医科大学)
  • 大平 美紀(千葉県がんセンター)
  • 熊谷 昌明(国立成育医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
24,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、遺伝子構造異常、遺伝子修飾様式および各種の分子発現様式の詳細な解析を通じて各種難治性小児がんの臨床的特性を明らかにするとともに、分子情報に基づいた新規診断法および治療法を開発する。また、形態学的所見および分子情報に基づいた中央診断システムを確立しつつ、希少疾患である小児がんの検体保存システムの構築を行う。
研究方法
本研究では、1)小児がんにおける遺伝子構造異常の詳細解析と遺伝子標的治療モデルの開発、2)エピジェネティックな遺伝子修飾や臓器形成遺伝子機能の解析、3)再発小児がんの生物学的特異性の解明と早期予知法の開発、4)中央診断システムと検体保存システムの構築による診断法の標準化と臨床研究・基礎研究の推進、を行った。各々の課題における具体的な研究方法の記載は省略する。
結果と考察
1)Ewing肉腫に特異的なキメラ遺伝子EWS/FLI1またはEWS/ERGの機能をヒト骨髄間葉系細胞への導入により解析した。その結果、これらキメラ遺伝子の発現により、間葉系細胞は形態変化のみならず発現遺伝子パターンもEwing肉腫類似のものとなった。Ewing肉腫が間葉系細胞を発生母地としていることが示唆される。 2)Beckwith-Wiedemann症候群44例について、染色体11p15.5のインプリンティングドメインでの遺伝子変異ならびにDNAメチル化の有無を解析した結果、欧米例と比し本邦例ではH19-DMR高メチル化が有意に低く、染色体異常や原因不明が高い傾向にあった。3)肝芽腫80例についてはアレイCGHによるゲノム構造異常解析を行った結果、異常が殆どない群と頻発する群とに分かれた。病態を対比させて結果、予後と相関することが明らかとなった。4)複数の小児がん臨床研究グループと連携し、組織・細胞・遺伝子に関する中央診断体制ならびに検体保存体制を国立成育医療センター内に整備した。
結論
1)Ewing肉腫は未だ発生母地が不明であり、EWS/FLI1等の特異的キメラ遺伝子が高頻度に認められる。今年度の研究で、幼弱な間葉系細胞におけるキメラ遺伝子発現のみでEwing肉腫類似の表現型を獲得させることに成功した。2)腫瘍発生を伴う奇形症候群で本邦例と欧米例で、メチル化状態の差異が腫瘍合併頻度と関連している可能性を示唆する所見を得た。3)本研究では小児がんに対する網羅的遺伝子発現解析ならびに網羅的遺伝子構造解析が進み、小児がんの病態層別化に重要な知見が得られた。4)臨床試験と連携した中央診断と検体保存のシステムは定着した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200621008B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性小児がんの臨床的特性の分子情報とその理論を応用した診断・治療法の開発
課題番号
H16-3次がん-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
秦 順一(国立成育医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 藤本 純一郎(国立成育医療センター 研究所)
  • 大喜多 肇(国立成育医療センター 研究所)
  • 宮下 俊之(国立成育医療センター 研究所)
  • 副島 英伸(佐賀大学 医学部)
  • 黒田 雅彦(東京医科大学)
  • 大平 美紀(千葉県がんセンター)
  • 熊谷 昌明(国立成育医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、遺伝子構造異常、遺伝子修飾様式および各種の分子発現様式の詳細な解析を通じて各種難治性小児がんの臨床的特性を明らかにし、分子情報に基づいた新規診断法を開発し、新規治療法に寄与することを目的とした。さらに、形態学的所見および分子情報に基づいた中央診断システムを確立しつつ、希少疾患である小児がんの検体保存システムの構築を通じて基礎研究、臨床研究を推進することをも目的とした。
研究方法
1)小児がんにおける遺伝子構造異常の詳細解析と遺伝子標的治療モデルの開発、2)エピジェネティックな遺伝子修飾や臓器形成遺伝子機能の解析、3)小児がんの生物学的特性を解明し、且つ病態を層別化できる指標を見いだす、4)中央診断システムと検体保存システムの構築による診断法の標準化と臨床研究・基礎研究の推進
結果と考察
1)Ewing肉腫の90%以上にEWSの再構成に伴うキメラmRNAの発現を認めることが判明した。これら遺伝子は本腫瘍の発生に重要な役割を演じていることが判明した。Ewing肉腫に特異発現するEWSキメラ遺伝子の機能をヒト骨髄間葉系細胞への導入により解析した。2)Beckwith-Wiedemann症候群(BWS)で11p15.5に存在するインプリンティングドメインでのDNAメチル化状態を解析した。本症候群はインプリンティングドメインLIT1-DMRおよびH10-DMRのメチル化状態の異常によって惹き起こされることが明らかになった3)小児がんの内神経芽腫と肝芽腫の病態層別化に有用な指標を新たに見いだした。また、ALL再発の骨髄微量残存腫瘍(MRD)検出法の開発を進め、4カラー解析により10,000分の1の感度で検出できるシステムを構築できた。
4)複数の小児がん臨床試験グループと連携し、組織・細胞・遺伝子に関する中央診断体制ならびに検体保存体制を国立成育医療センター内に整備した。
結論
BWSにおけるエピジェネティックな遺伝子修飾や遺伝子変異を解析が終了した。その結果、人種での差異が明確になった。肝芽腫、ALLで遺伝子異常の網羅的な解析を行ったところ、有用な指標を得た。Ewing肉腫の発生母地が間葉系細胞にであることを示す知見を得た。小児がん研究推進に必須の中央診断と検体保存のシステムが完成し、本格的な運用が始まった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2023-08-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200621008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
難治性小児がんのうちEwing肉腫の発生母地を明らかにした。Beckwith-Wiedemann症候群が11p15.3に存在するインプリンティング遺伝子の異常に基づくことを明らかにするとともに本症候群の成り立ちが人種によって異なることを明確にした。
臨床的観点からの成果
小児がんの病態層別化に有用な指標をアレイCGHやcDNAアレイで明らかにした。また、再発ALLの指標として血液中の残余白血病細胞を検出する方法を鋭敏なフローサイトメータによって確立した。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
2006年1月に東京で公開シンポシウム「小児がんの克服をめざして」を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
11件
原著論文(英文等)
83件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
62件
学会発表(国際学会等)
14件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
MiyauchiJ, Hata J, et al
Unusual chromaffin cell differentiation of a neuroblastoma after chemotherapy and radiotherapy: Report of an autopsy case with immunohistochemical evaluations.
Am.J.Surg. Pathol. , 28 , 548-553  (2004)
原著論文2
Shiozawa,Y, Hata J, et al
Granulocytic sarcoma of the spine in a child without bone marrow involvemen
a case report and literature review , 164 , 616-620  (2005)
原著論文3
Hamazaki,M, Okita, H, Hata, J, et al
Desmoplastic small cell tumor of soft tissue: Molecular variant of EWS-WT1 chimeric fusion.
Pathol Int , 56 , 543-548  (2006)
原著論文4
Watanabe,N, Nakadate,H, Hata, J, et al
Association of 11q loss, trisomy 12 and possible 16q loss with loss of imprinting of insulin-like growth factor in Wilms tumor.
Genes, Chromosome & cancer , 45 , 592-601  (2006)
原著論文5
Kiyokawa N, Sekino T, Fujimoto J.et al
Diagnostic importance of CD179a/b as markers of precursor B-cell lymphoblastic lymphoma
Modern Pathol , 17 , 423-429  (2004)
原著論文6
Sekino T, Kiyokawa N, Fujimoto J.et al
Characterization of a Shiga-toxin 1-resistant stock of Vero cells.
Microbiol Immunol , 48 , 377-387  (2004)
原著論文7
Tang W, Kiyokawa N, Fujimoto J.et al
Development of novel monoclonal antibody 4G8 against swine leukocyte antigen class I α chain.
Hybridoma Hybridom , 23 , 187-191  (2004)
原著論文8
Matsui J, Kiyokawa N,Fujimoto J.et al
Dietary bioflavonoids induce apoptosis in human leukemia cells.
Leukemia Research , 29 , 573-581  (2005)
原著論文9
Morimoto A, Ikushima S,Fujimoto J.et al
Japan Langerhans Cell Histiocytosis Study Group. Improved outcome in the treatment of pediatric multifocal Langerhans cell histiocytosis: Results from the Japan Langerhans Cell Histiocytosis Study Group-96 protocol study.
Cancer , 107 , 613-619  (2006)
原著論文10
Kato I, Manabe A,Fujimoto J.et al
Development of diffuse large B cell lymphoma during the maintenance therapy for B-lineage acute lymphoblastic leukemia.
Pediatr Blood Cancer. ,  (8)  (2006)
原著論文11
Taguchi T, Takenouchi H,Fujimoto J.et al
Involvement of insulin-like growth factor-I and insulin-like growth factor binding proteins in pro-B-cell development.
Exp Hematol. , 34 , 508-518  (2006)
原著論文12
Soejima H, Nakagawachi T, Zhao W, et al
Silencing of imprinted CDKN1C gene expression is associated with loss of CpG and histone H3 lysine 9 methylation at DMR-LIT1 in esophageal cancer.
Oncogene, , 23 (25) , 4380-4388  (2004)
原著論文13
Wang Y, Joh K, Soejima H,et al
Mouse Murr1 gene is imprinted in the adult brain, presumably due to transcriptional interference by the antisense-oriented U2af1-rs1 gene.
Mol Cell Biol , 24 (1) , 270-279  (2004)
原著論文14
Yamada Y, Watanabe H,Soejima H,et al
A comprehensive analysis of allelic methylation status of CpG islands on human chromosome 21q.
Genome Res , 14 (2) , 247-266  (2004)
原著論文15
Soejima H, Wagstaff J
Imprinting, Chromatin Structure, and Disease.
J Cell Biochem , 95 (2) , 226-233  (2005)
原著論文16
Arima T, Kamikihara T, Soejima H,et al
ZAC, LIT1 (KCNQ1OT1) and p57KIP2 (CDKN1C) are in an imprinted gene network that may play a role in Beckwith–Wiedemann syndrome.
Nucleic Acids Res , 33 (8) , 2650-2660  (2005)
原著論文17
Yamasaki Y, Kayashima T, Soejima H,et al
Neuron-specific relaxation of Igf2r imprinting is associated with neuron-specific histone modifications and lack of its antisense transcript Air.
Hum Mol Genet , 14 (17) , 2511-2520  (2005)
原著論文18
Zhang Z, Joh K, Soejima H,et al
Comparative analyses of genomic imprinting and CpG island-methylation in mouse Murr1 and human MURR1 loci revealed a putative imprinting control region in mice.
Gene , 366 (1) , 77-86  (2006)
原著論文19
Higashimoto K, Soejima H, Saito T, et al
Imprinting disruption of the KIP2/LIT1 domain: the molecular mechanism causing Beckwith-Wiedemann syndrome and cancer.
Cytogenet Genome Res , 113 (1) , 306-312  (2006)
原著論文20
Satoh Y, Nakadate H, Soejima H,et al
Genetic and epigenetic alterations on the short arm of chromosome 11 are involved in a majority of sporadic Wilms' tumors.
Brit J Cancer , 95 (4) , 541-547  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-09-18
更新日
-