低出生体重児の無呼吸発作に対するドキサプラムの安全性・有効性に関する研究

文献情報

文献番号
200616003A
報告書区分
総括
研究課題名
低出生体重児の無呼吸発作に対するドキサプラムの安全性・有効性に関する研究
課題番号
H17-小児-一般-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 俊夫(藤田保健衛生大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 北島博之(大阪府立母子保健総合医療センター新生児科)
  • 入江徹美(熊本大学大学院医学薬学研究部)
  • 畑忠善(藤田保健衛生大学衛生学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 小児疾患臨床研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
早産低出生体重児の予後に悪影響をもたらす原発性無呼吸発作(未熟児無呼吸発作)に対する薬物療法として、現在わが国では適応外医薬品となっているドキサプラムの低用量投与法の安全性および有効性を検討する。同時にドキサプラムの生体に及ぼす影響について、薬物動態力学の面および生化学的、生理学的側面から臨床・基礎研究を行う。
研究方法
静注用アミノフィリンに不応の未熟児無呼吸発作例を対象とし、低用量ドキサプラムがプラセボよりも無呼吸発作抑制に優れることを検証するための多施設共同ランダム化比較試験計画を班会議で検討し、立案し、臨床試験を開始した。また、その安全性については、試験治療期間中の有害事象を調査し評価することとした。同時に、ドキサプラムが投与された患児 74 名を対象に母集団薬動態解析を行った。さらに、生体に及ぼす影響をラットおよびヒト新生児の生体信号をポリグラフで測定、解析し、生理学的に検討した。

結果と考察
前年度の研究結果から、低出生体重児の無呼吸発作に対するドキサプラムの最も安全かつ有効な投与法として、1.5mg/kgの負荷後に0.2mg/kg/hrの維持投与法を設定した。 
具体的な臨床試験計画の作成にあたっては、臨床の場で実際に用いられているのに最も近い方法として、現在わが国で未熟児無呼吸発作に適応がある静注用アミノフィリンに不応の症例に、低用量ドキサプラムないしはプラセボを投与し、time to treatment failureを主要評価項目とした二重盲検無作為比較対照試験を策定した。現在は、全国の8つの新生児医療機関を臨床試験サイトとして、目標被験者数42名で多施設共同試験を開始した。
また、ドキサプラムの副作用として心臓の伝道障害が報告されているため、低用量ドキサプラム投与前後のラットおよびヒト新生児の生体信号を解析したところ、この用量では心臓刺激伝導系を抑制しないことが分かった。また、低用量ドキサプラムの母集団薬物動態解析では、クリアランスは生後週数に伴い上昇し,酸素供給およびメチルキサンチン類との併用の影響を受けて低下することが示された。これらの結果は、今後の臨床試験を遂行する際に安全な治療法として選択できると考えた。
結論
本研究により、低出生体重児の無呼吸発作に対する低用量ドキサプラムの安全性および有効性が適切に検証できると考えられた。その結果、ドキサプラムの安全性・有効性が実証されれば、未熟児無呼吸発作の新たな薬物療法を提案でき、ひいては早産低出生体重児の予後の改善をもたらし、わが国の小児保健医療の向上に大いに寄与するものと思われる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
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