わが国における新しいリプロダクティブヘルス促進体制構築のための基礎的・臨床的研究

文献情報

文献番号
200620037A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国における新しいリプロダクティブヘルス促進体制構築のための基礎的・臨床的研究
課題番号
H18-子ども-プロ-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
梅澤 明弘(国立成育医療センター研究所 生殖医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 吉村 泰典(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室)
  • 岡部 勝(大阪大学微生物病研究所)
  • 年森 清隆(千葉大学大学院医学研究院)
  • 矢野 哲(東京大学医学部産科婦人科学教室)
  • 大須賀 穣(東京大学医学部産科婦人科学教室)
  • 久慈 直昭(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室)
  • 宮戸 健二(国立成育医療センター研究所 生殖医療研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
9,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 我が国における体外受精を中心とする生殖補助技術の利用は50,000例に達し、また生殖補助技術由来の出生児は全出生の1%以上を占める。この技術が不妊夫婦だけでなくその親族、生まれてくる子供達を含めて国民の多くに関与するようになってきている。本研究では、次世代に悪影響を及ぼさないための品質管理・安全管理に関する技術革新を基礎的、臨床的側面から推進することを目的とする。
研究方法
 生殖年代の女性に頻度が非常に高く、かつ、不妊症の原因として最も重要な疾患のひとつである子宮内膜症について、不妊治療に与える影響の解析と妊娠率向上を目指した新たな子宮内膜症治療に対する基礎研究を行った。また、受精のイメージング系マウス卵を用いて構築することにより、受精前後での細胞膜の動態を経時的に明らかにした。また、わが国でキャリアの多いHTLV-1や、近年抗体保有率が低下しているサイトメガロウイルスについて、またHIV-1のような重篤な感染症の精液中の感染リスク評価と精液からの病原体除去について、基礎的・臨床的検討を行った。
結果と考察
 子宮内膜症は不妊症の原因の大きな割合を占めており、子宮内膜症による不妊治療に手術療法と体外受精は有効であるが、いまだ効果は十分でなく更なる妊娠率向上のためには手術療法の限界まで踏まえた管理が必要である。子宮内膜症卵巣嚢胞の保存手術では約3割の再発があり、再発率をあげる要因として嚢胞の大きさなどがある。今後は再発まで考えた長期管理の指針を検討していく必要がある。また、HIV-1をはじめとする、妻及び子の双方に重篤な影響を及ぼす感染症については、感染を防ぐために精液と女性の接触を防ぐ必要がある。連続密度勾配を応用した本法により男性不妊の合併症例においても精子回収率と洗浄効率を両立させることができると考えられた。
結論
 提供精液を用いた不妊症治療においても、精液を介した感染症制御は大きな問題である。特に胎児病をおこして出生する児に重篤な疾患を生じるおそれのあるサイトメガロウイルスなどの感染症については、男性のスクリーニング検査についてのガイドライン策定が必要である。メトフォルミンは子宮内膜症に対し治療効果をもつ可能性が示唆されたので、より研究をすすめる必要性が認められた。わが国における新しいリプロダクティブヘルス促進体制は、基礎的・臨床的研究を推進することにより構築可能となる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-