母親とともに家庭内暴力被害を受けた子どもに被害がおよぼす中中期的影響の調査および支援プログラムの研究

文献情報

文献番号
200620035A
報告書区分
総括
研究課題名
母親とともに家庭内暴力被害を受けた子どもに被害がおよぼす中中期的影響の調査および支援プログラムの研究
課題番号
H17-子ども-一般-017
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
金 吉晴(国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部)
研究分担者(所属機関)
  • 加茂 登志子(東京女子医科大学)
  • 元村 直靖(大阪教育大学)
  • 笠原 麻里(国立成育医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は一時保護施設などを利用後,精神科に通院する母親とその子ども(13組12家族)を対象に,母子双方の精神状態および問題行動が時間経過に伴ってどのように変化するか,そして母子間でどのように影響し合っていくのかを追跡調査を行って検討することを目的とした。
研究方法
一時保護施設などを利用後,精神科に通院する母親とその子どもを対象に質問紙にて調査
結果と考察
その結果,(1)母子の精神状態も生活も時間経過と共に落ち着きを取り戻しつつも,新たな不安や心配に悩まされ,症状も残存・維持されていること,(2)子どもにおいては多動・衝動性といったADHD児のような問題行動を呈しており,身体・精神状態や社会性といった問題が時間経過と共に落ち着いていく一方で,多動・衝動性の問題は時間経過にかかわらず深刻な状態で維持されていること,(3)前年度と同様,DV被害の深刻さと子どもの問題行動の悪化に関連があること,そして(4)母親の精神状態の悪化や生活に対する不安と子どもの問題行動の悪化が相互に関連があること,が示唆された。
結論
本研究の結果から,母親が受けた身体的暴力や性的暴力の被害が大きいほど,子どもの集中力の低下や落ち着きのなさ,衝動性が深刻になることが示され,前年度と同様,母親が受けたDV被害の程度が大きいほど子どもの問題行動は深刻化することが示された。また,母親の侵入症状や過覚醒症状が深刻であればあるほど,生活への不安が増大すればするほど,子どもの問題行動も深刻になることが示され,前年度に比べて母子間の相互作用がより明らかにされた。加害者から避難しても,短期間で母親の後遺症(PTSD症状)が改善され,生活が安全なものになるわけではないことは今年度の結果から示されている。したがって,母親の症状改善と安全確保を目指した早期介入が母親のみならず,子どもにも好影響を及ぼすことが考えられ,この点を踏まえた母子に対するサポート体制の整備は急務といえよう。母子のサポートの一環として、親子ども相互治療法(PCIT)を導入したところである。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
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