思春期やせ症と思春期の不健康やせの実態把握および対策に関する研究

文献情報

文献番号
200620017A
報告書区分
総括
研究課題名
思春期やせ症と思春期の不健康やせの実態把握および対策に関する研究
課題番号
H16-子ども-一般-031
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 久子(慶應義塾大学医学部 小児科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 福岡 秀興 (東京大学大学院 医学系研究科 )
  • 徳村光昭(慶應義塾大学 保健管理センター )
  • 高橋孝雄(慶應義塾大学医学部 小児科学教室)
  • 長谷川奉延(慶應義塾大学医学部 小児科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,040,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年発育盛りの女子中学高校生に増加する思春期やせ症(anorexia nervosa: 以下AN)は、高い死亡率、心身の発育障害に加え、次世代の育児障害、若年成人病や認知症のハイリスク等、人の生涯だけでなく次世代にわたる深刻なQOL低下を招く慢性疾患である。本研究はANとその予備軍の「不健康やせ」への、予防と早期発見早期治療に力点をおく有効な包括的診療体制を検討する

研究方法
平成18年度の取り組み:1)小児診療の1次、2次ケアの実践ガイドラインのマニュアル作成と生徒用啓発資料の作成、2)包括的診療システムの1次、2次、3次ケアを支える医療者養成プログラムの検討3)国際的検討による本体制の吟味 

結果と考察
1)包括診療システムの1次、2次、3次ケアの要点を以下にまとめたガイドラインを作成。<1次ケア>学校保健ガイドライン:①学校検診で肥満度-15%以下にやせている生徒を抽出し、②成長曲線上体重が1チャンネル以上下がる場合、③保健室にて脈を測り、④徐脈(60/分未満)の場合に病院を紹介する。<2次ケア>小児科診療ガイドライン:①成長曲線、脈等の身体症状による鑑別診断後確定診断し、②治療は安静臥床、栄養摂取、疾病教育を軸とする。<3次ケア>専門集中治療:思春期やせ症集中治療チーム(ANICU)による救命。2)AN治療の践普啓発用ツールを以下に作成した。①「思春期やせ症:小児診療用ガイドライン」2頁ちらし、②50頁マニュアル、③生徒用冊子、④小学生用ポスター、⑤AN英文冊子3)AN治療に取り組む医師養成プログラの検討:医学講義、臨床研修と複数学年にわたるプログラムの成果を明らかにした4)国際交流:第8回国際摂食障害学会にて①ANでは夜間70%以上に徐脈が認められる(福島)、②日本の包括的診療システムを紹介(渡辺)。英文冊子とあわせ日本独自のアプローチが評価された5)ライフサイクルにわたる継続治療の視点長期フォローにより明らかにした。
結論
成長曲線と脈の組み合わせは1,2,3次ケアとその効果判定に有効な共通した身体指標である。親子を含めてすべての人にわかりやすく、かつ医学的根拠のあるエビデンスを用いた包括的診療システムは、日本の健康診断を生かしたユニークなアプローチとして世界的に評価されるだけでなく、全国への普及によりANの削減に有効と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-10-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200620017B
報告書区分
総合
研究課題名
思春期やせ症と思春期の不健康やせの実態把握および対策に関する研究
課題番号
H16-子ども-一般-031
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 久子(慶應義塾大学医学部 小児科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 福岡秀輿(東京大学大学院医学系研究科、発達医科学)
  • 徳村光昭(慶應義塾大学保健管理センター)
  • 高橋孝雄(慶応義塾大学医学部小児科学教室 )
  • 長谷川奉延(慶應義塾大学医学部小児科学教室 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
思春期やせ症(anorexia nervosa: 以下AN)は高い死亡率と重い後遺症をもつ難治性心身症である。近年わが国でも増加し、不妊症、精神障害や育児障害、虐待につながり、高齢化・少子化社会に深刻な影響を与えている。ANは「健やか親子21」全国運動において治りやすい初期に早期発見治療をする他ない。本研究はANの実態把握に基づき、難治化を阻止するためのアプローチを研究し予防、早期発見治療を軸とする包括的診療システムを提案する。
研究方法
包括的診療システムを以下に研究した:疫学調査:ガイドライン作成、成長曲線、徐脈、MRIの解析、医師養成プログラム。早期発見治療実践のためのツール、国際的吟味検討。

結果と考察
1)疫学調査:二次全国調査の結果、高校3年発症が1.03%。その3分の2が未受診であった。2)ガイドラインと実践ツールの作成。「思春期やせ症:診断と治療ガイド」(A4 p140、平17)。ANガイドライン(平18)。「思春期やせ症:小児診療に関わる人のためのガイドライン」(B5版p50,平19)を出版した。本二冊は全国の医療・看護教育機関と公立図書館に配置され、小児科医の取り組みが全国で促進された。学校健診で肥満度-15%以下にやせた生徒は成長曲線を作成し、1チャンネル以上下がれば脈を測り、徐脈(60/分未満)の場合は病院を紹介する。小児科医は成長曲線、脈、その他により鑑別、確定診断をする。次に疾病教育、安静臥床、栄養摂取を軸とする治療を始める。普及啓発のちらし「思春期やせ症:予防・早期発見。初期治療のガイドライン」と、生徒用冊子「思春期やせ症を知っていますか?」、小学生用ポスター、英文冊子も作成した。3)AN診療医養成プログラムにおいては学生講義、臨床研修等を段階的に積み重ねることが有効であった。4)国際学会発表:第7回国際摂食障害学会(平17)に本班の徐脈、ANICU研究を発表し.同夏Lask教授とPike教授らを招き「学校保健におけるANの取り組み」シンポジウムを開いた。第18回同国際学会で、本班のの包括的診療システム、夜間徐脈70%の研究を発表した。
結論
新しい時代のANへの取り組みは小児科医をcoordinatorとした学校・地域保健活動を基盤とする1次、2次、3次ケアの重層構造からなる包括的診療システムの実施が有効である。

公開日・更新日

公開日
2008-10-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200620017C