保育所、学校等関係機関における虐待対応のあり方に関する調査研究

文献情報

文献番号
200620016A
報告書区分
総括
研究課題名
保育所、学校等関係機関における虐待対応のあり方に関する調査研究
課題番号
H16-子ども-一般-029
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
才村 純(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会日本子ども家庭総合研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,032,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
児童虐待問題の深刻化に伴い、学校や保育所等における適切な対応が求められている。このため、本研究では、これらの機関における虐待対応の実態や教職員の意識を把握することにより、必要な施策検討の基礎的資料に資するとともに、各機関の特質や教職員の意識構造等を踏まえた各施設向けの虐待対応ガイドラインを作成する。
研究方法
平成17年度には、全国の幼稚園、小・中学校を対象に、虐待事例への遭遇状況、遭遇事例への対応実態、関係教職員の意識に関する質問紙調査を実施したが、平成18年度は、保育所及び放課後児童健全育成事業を実施している児童館(以下、「児童館」)を対象に同様の調査を実施した(5%の無作為抽出、ただし、児童館は悉皆)。
結果と考察
保育所728ヶ所、児童館1,195ヶ所から回答を得、回答率はそれぞれ63.9%、69.7%であった。過去4年半において虐待事例に遭遇した施設は、保育所の48.4%、児童館の23.0%であり、1施設当りの事例数は、保育所2.5件、児童館2.0件となっている。このほか、虐待種別、発見の経緯、発見後の施設内マネージメント、通告状況などについて尋ねたが、例えば、発見の経緯では、いずれも「子どもの身体的様子」や「子どもの言動」が上位を占めているが、「子ども本人の話」は保育所19.5%であるのに対し、児童館では35.0%と高くなっており、学校も含め高年齢児の施設になるほど「子ども本人の話」から虐待を把握する割合が高くなっている。このことから、高年齢児施設では子ども自身が話しやすい雰囲気づくりと、子どもから打ち明けられた場合の対応についてガイドラインで述べる必要があると考えられた。ただし、児童館は家庭と学校の中間に位置することから、緊急性を要する場合を除き児童館のみで対応するのは適切ではなく、小学校との緊密な連携が特に必要と考えられた。

意識調査では、保育所6,743人、児童館4,533人の職員から回答を得た。過去において虐待事例に関わった経験のある職員は、保育所では32.0%、児童館では28.6%であった。教育系施設より福祉系施設の方が、また、直接子どもに関わる職員よりも管理的な立場にある職員の方が制度の認知状況、通告意識等全般に亘り良好であった。
結論
研究結果を踏まえ、「小学校・中学校教職員及び放課後児童クラブ支援者」及び「保育所・幼稚園保育者」のための虐待対応ガイドラインを作成した。

公開日・更新日

公開日
2008-03-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-02-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200620016B
報告書区分
総合
研究課題名
保育所、学校等関係機関における虐待対応のあり方に関する調査研究
課題番号
H16-子ども-一般-029
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
才村 純(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会日本子ども家庭総合研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
児童虐待問題の深刻化に伴い、学校や保育所等における適切な対応が求められている。このため、本研究では、これらの機関における虐待対応の実態や教職員の意識を把握することにより、必要な施策検討の基礎的資料に資するとともに、各機関の特質や教職員の意識構造等を踏まえた各施設向けの虐待対応ガイドラインを作成する。
研究方法
全国の幼稚園、保育所、小学校、中学校、放課後児童健全育成事業を実施している児童館(以下、「児童館」)を対象に、各施設における対応構造や教職員の意識を明らかにするため、虐待事例への遭遇状況、遭遇事例への対応実態、関係教職員の意識に関する質問紙調査を実施した(5%の無作為抽出、ただし、児童館は悉皆)。
結果と考察
幼稚園351ヶ所、保育所728ヶ所、小学校1,013ヶ所、中学校439ヶ所、児童館1,195ヶ所から回答を得、回答率はそれぞれ50.1%、63.9%、87.5%、85.2%、69.7%であった。過去3年半(保育所、児童館は4年半)における1施設当りの遭遇事例数は、平均2件前後であるが、施設種別により差異が見られた。このほか、虐待種別、発見の経緯、発見後の施設内マネージメント、通告状況などでも施設種別間で差異が認められた。例えば、発見の経緯では、低年齢児施設では「子どもの身体的様子」や「子どもの言動」から虐待が発見される割合が高いが、高年齢になるほど「子ども本人の話」の比率が高くなり、高年齢児施設では子ども自身が話しやすい雰囲気づくりと、子どもから打ち明けられた場合の対応についてガイドラインで述べる必要があると考えられた。
意識調査では、計29,986人の教職員から回答を得た。過去において虐待事例に遭遇した教職員は施設種別間で多寡はあるものの全体では2割-3割であった。制度に関する認知状況では、例えば「虐待かどうか疑わしい場合でも通告義務がある」ことを知らなかった教職員が2割-4割おり、現に虐待を疑った場合、確証がある場合に通告するという回答も多く、ガイドラインにより周知を図る必要があると考えられた。また、虐待問題を学ぶ機会や虐待防止ネットワークに対する評価等について施設種別間や職種、経験等による差異が認められ、これらを踏まえたガイドラインの作成が必要と考えられた。
結論
研究結果を踏まえ、「小学校・中学校教職員及び放課後児童クラブ支援者」及び「保育所・幼稚園保育者」のための虐待対応ガイドラインを作成した。

公開日・更新日

公開日
2008-03-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200620016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
保育所や幼稚園、小学校、中学校、放課後児童健全育成事業を実施する児童館における児童虐待の対応実態、関係教職員の意識について、全国規模かつ施設横断別の総合的なデータを得ることができた。これはわが国では初めてのことである。
臨床的観点からの成果
今回の調査研究結果を踏まえ、対応実態、組織構造、関係教職員の意識構造等、各施設や関係教職員の特性を踏まえたガイドラインを作成したが、このことにより、関係教職員の意識啓発に資することができ、もって各機関における虐待問題への適切な対応が可能となると考えられる。
ガイドライン等の開発
今回の調査研究結果を踏まえ、対応実態、組織構造、関係教職員の意識構造等、各施設や関係教職員の特性を踏またガイドラインを作成した。ガイドラインは「小学校・中学校教職員及び放課後児童クラブ支援者向け」及び「保育所・幼稚園保育者向け」の2種類である。
その他行政的観点からの成果
関係機関における児童虐待の対応実態、関係教職員の意識について、全国規模かつ施設横断別の総合的なデータを得ることができたが、これらの成果は、厚生労働行政、文部科学行政等における政策検討を行う上での基礎的資料として活用し得るものである。
その他のインパクト
平成17年度の研究結果については、「幼稚園や学校の教職員の1/3が通告義務のあることを知らない」等の内容で各紙で取り上げられた。平成18年度の研究結果についても、各施設向けの虐待対応ガイドラインが作成された旨、NHKがニュースで取り上げた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
第54回日本社会福祉学会(2006年新座市)において研究協力者の澁谷らが発表。テーマは「小中学校における子ども虐待対応構造に関する考察-子ども虐待に関する知識の組織内配分と意思決定手続きに注目して」
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
玉井邦夫
学校現場および教育行政における虐待対応の実態と課題
子どもの虐待とネグレクト , 8 (2) , 183-189  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-