要保護年長児童の社会的自立支援に関する研究

文献情報

文献番号
200620015A
報告書区分
総括
研究課題名
要保護年長児童の社会的自立支援に関する研究
課題番号
H16-子ども-一般-021
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
村井 美紀(東京国際大学人間社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 伊智朗(札幌学院大学人文学部)
  • 山田 勝美(長崎純心大学人文学部)
  • 潮谷 恵美(久留米大学文学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度は自立援助ホームを退所した当事者の利用状況に関する追跡調査として、自立援助ホームに対する郵送調査と当事者へのインタビュー調査を行い、要保護年長児童の自立過程を分析し、各施設利用者の社会的自立に対する支援ニーズを探ることで、自立支援内容を検証することとした。
研究方法
退所(児)者調査では平成17年度に実施した「利用者調査」において調査票が回収された310名に関する追加調査項目の記入を自立援助ホーム職員に依頼した。さらに、自立援助ホーム利用者に対するヒヤリング調査と事例研究を行った。方法は、本人インタビューと担当職員へのヒヤリング、記録の閲覧を行い、本人の状況変化と自立援助ホームのかかわりを分析した。
結果と考察
退所者郵送追加調査は269名分の調査票が回収され以下の知見を得た。①ホーム利用の制度的根拠について最も多いのは児童相談所からの「援助措置(児童福祉法27条第7項)」であるが(45.0%)、2割は任意の契約(20.8%)である。補導委託(13.8%)、一時保護(11.9%)もそれぞれ1割強になる。「援助措置」を中心とするが、利用の制度的根拠は多岐にわたり、任意の利用もあった。②19歳以上に任意の契約は多いが、18歳未満でも1割は任意の契約による利用。③支援機関別に見てみると、「養護系(15.6%)」「非行系(18.2%)」のみのものより「養護+非行」系(26.0%)のものが「任意の契約」である比率が高い。これは「援助措置」の比率の違いではなく、一時保護や補導委託の低さを反映している。問題が深刻、複雑であるほど「任意の契約」になりがちな可能性を示唆。④家庭裁判所や児童相談所以外から入所を打診されたものに「任意の契約」が高いが、この両機関から打診を受けたものでも、少数ではあるが「任意の契約」でのホーム利用がある。事例の分析からは利用者は、自立援助ホームにたどり着くまでに、彼らの家族をはじめとしたさまざまな資源から切り離され、孤立した状態で自立援助ホームにたどり着いていた。
結論
本研究結果から自立援助ホーム入所によって、住居と「現住所」、後見人や身元保証人という存在をえて、再び失っていた保健医療や教育、就業に結びつき、自立プロセスが明らかになり、ホームにおける「社会的支援」が具体的で多様にあることが提示できた。さらに家族の負う社会的不利と社会的支援の希薄さが、利用者の困難をより深刻にしている現状において18歳を超えた年齢層に対応できる法制度が必要であり、また現行法制度の適用を前提とした場合でも、ケアに関する公的責任の所在について、検討する必要が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200620015B
報告書区分
総合
研究課題名
要保護年長児童の社会的自立支援に関する研究
課題番号
H16-子ども-一般-021
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
村井 美紀(東京国際大学人間社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 伊智朗(札幌学院大学人文学部)
  • 山田 勝美(長崎純心大学人文学部現代福祉学科)
  • 潮谷 恵美(久留米大学文学部社会福祉学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、虐待等のハイリスクな問題を抱える年長児童のために開設されている自立援助ホーム及び地域小規模児童養護施設における自立支援について、どのような課題を抱える年長児童に対し、どのような内容の支援を行い、そこに解決すべきいかなる課題があるのかを明確にし、要保護年長児童の社会的自立支援の方策を提示することを目的とする。
研究方法
2004年度は「基礎研究」として各自立援助ホームの運営の実態を把握するための訪問ヒヤリング調査、資料収集と分析を行った。さらに、次年度利用者実態との比較検討を行うために、平成10年度利用者調査の分析を行った。
2005年度は、自立援助ホーム、地域小規模児童養護施設の実態把握、支援課題の析出を目的として、自立援助ホームと児童養護施設の小規模養護に関わる文献資料収集、施設訪問、施設運営・援助関係者に対するヒヤリング調査をおこなった。さらに、自立援助ホーム、地域小規模児童養護施設に対して施設利用状況などについて悉皆調査を郵送でおこなった。
2006年度は前年度に実施した自立援助ホーム「利用者調査」において調査票が回収された310名に関する自立援助ホーム退所(児)者調査を行った。さらに、自立援助ホーム利用者に対するヒヤリング調査と事例研究を行った。方法は、本人インタビューと担当職員へのヒヤリング、記録の閲覧を行い、本人の状況変化と自立援助ホームのかかわりの分析を行った。
結果と考察
自立援助ホームに関する調査分析から①利用者の負う社会的不利-貧困と社会的排除、自立の見通しの困難さ、②小さな、あるいは崩壊した家族資源、③自立援助ホームの役割の大きさと限界、④社会的公正と公共の責任、⑤ケアに関する公的責任の所在、が今後の検討課題として明らかにされた。また、地域小規模児童養護施設調査分析から、要保護年長児童受け入れの必要性の認識しながら、実際には受け入れが難しいという認識が強いことが明らかになった。
結論
調査結果と考察から示唆される、要保護年長児童の社会的自立支援に関する当面の政策的課題を以下の4点に整理した。第1に、自立援助ホームの運営基盤を整備すること。第2に、困難の中にある子ども、青年の社会的自立の支援を自立援助ホームのみの課題とするのではなく、これらに関わる諸制度を強化あるいは開発すること。 第3に、18歳を超えて20歳代前半までの年齢層に対応できる法制度をつくること。第4に、子どものケアに関する、一貫した公的責任の所在について検討すること。これは、今後の課題に属する。

公開日・更新日

公開日
2008-04-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200620015C