軽度発達障害児の発見と対応システムおよびそのマニュアル開発に関する研究

文献情報

文献番号
200620014A
報告書区分
総括
研究課題名
軽度発達障害児の発見と対応システムおよびそのマニュアル開発に関する研究
課題番号
H16-子ども-一般-019
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小枝 達也(鳥取大学地域学部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 隆(山口県立大学看護学部)
  • 山下裕史朗(久留米大学医学部)
  • 前垣義弘(鳥取大学医学部)
  • 下泉秀夫(国際医療福祉大学保健学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,304,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今年度は、「軽度発達障害児の気づきと支援のマニュアル」を作成するとともに、発生頻度の算出、予後調査、気づきの時期の検討、費用対効果などを明らかとすることを目的とした。
研究方法
(1)5歳児健診を基盤とした発生頻度調査(分担研究者小枝達也、下泉秀夫)、
(2)予後調査(分担研究者前垣義弘)、
(3)気づきの時期の検討(分担研究者林 隆)
(4)ハイリスク新生児における5歳児健診(分担研究者山下裕史朗)
の4点を定めて研究を実施した。
また、以下の目次項目を作成し、分担研究者で分担しながら、マニュアルの作成を進めた。
第一章 軽度発達障害をめぐる諸問題
第二章 実証的研究成果
第三章 健診・発達相談の実際
第四章 健康診査ツール
第五章 事後相談体制
第六章 症例
とくに専門家の経験のみでマニュアルを執筆するのではなく、これまでの研究成果を示しながらエビデンスベースのマニュアルを目指した。
結果と考察
5歳児健診では、9.6%(127名)という出現頻度であった。5歳児健診での感度は66.7%、特異度は85.2%であることが判明した。5歳児健診に対する保護者の満足度は高く、100点満点で80点以上としたものが71.2%であった。気づきの特徴を考慮すると、健診時期としては3歳児健診では気づかれにくい問題が4歳を境に、いっそう顕著になる5歳児において、集団場面での健康診査や発達相談の実施等が望ましいと判断された。
費用対効果分析では、増分便益費用比は28.7、つまり健診によってかかる費用の増加分の28.7倍便益が多いことが示され、5歳児健診は費用対効果的であると結論づけられた。1QALY獲得に必要な費用は38.5万円であり、非常に安価であった。
 資料も含めて全96ページのマニュアル「軽度発達障害児への気づきと支援のマニュアル」を作成し、厚生労働省のホームページよりダウンロードできるようにした。
(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken07/h7_hajime.html)


結論
3年間の研究活動により、実証されたデータに基づいた軽度発達障害児への気づきと支援のマニュアルを作成し配布することができた。とくに5歳児健診を基盤とすることによって、幼児期に軽度発達障害児の多くを把握することが可能であると判断された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200620014B
報告書区分
総合
研究課題名
軽度発達障害児の発見と対応システムおよびそのマニュアル開発に関する研究
課題番号
H16-子ども-一般-019
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小枝 達也(鳥取大学地域学部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 隆(山口県立大学看護学部)
  • 山下 裕史朗(久留米大学医学部)
  • 前垣 義弘(鳥取大学医学部)
  • 下泉 秀夫(国際医療福祉大学保健学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
いわゆる軽度発達障害に焦点を当てた「気づきの場」をどのように構築するのか、また幼児期に見いだされた軽度発達障害児を母子保健の枠組みの中で、どのように指導・支援したらよいのかという命題に答えるとともに、モデルとなるマニュアル作成を目的とする。
研究方法
(1)3歳児健診にて発見するための手だてに関する検討(分担研究者林 隆)
(2)5歳児健診を基盤とした発生頻度調査(分担研究者小枝達也、下泉秀夫)
(3)構造化された医師の診察法の有効性と予後に関する検討(分担研究者前垣義弘)
(4)行動評価を質問紙法で行った場合の有用性の検討(分担研究者山下裕史朗)
の4点について分担しながら研究を実施した。
結果と考察
(1)3歳児健診での気づき
3歳児の行動を6項目に分けて評価した。ADHDやPDDでは、いずれの項目も平均値は有意に高かったが、多動性や旺盛な好奇心といった項目では、一般の3歳児でも50%を越える高率に出現しており、3歳児健診で軽度発達障害を発見するのは慎重にすべきと思われた。
(2)発生頻度
9.6%という出現頻度であった。
(3)健診の有効性と予後調査
5歳児健診における医師の診察法を構造化し、医師向けインストラクションDVDを作成した。5歳児健診での感度は66.7%、特異度は85.2%であることが判明した。
(4)質問紙法による行動評価
質問紙にて行動評価を行ったが、質問紙のみでは鑑別診断は困難であり、医師による診察や詳細な問診が不可欠であると考えられた。
(5)費用対効果
費用対効果分析では、増分便益費用比は28.7、つまり健診によってかかる費用の増加分の28.7倍便益が多いことが示され、5歳児健診は費用対効果的であると結論づけられた。

以上の実証的研究成果に基づいたマニュアルを作成した。資料も含めて全96ページのマニュアル「軽度発達障害児への気づきと支援のマニュアル」を作成することができた。
第一章軽度発達障害をめぐる諸問題
第二章実証的研究成果
第三章健診・発達相談の実際
第四章健康診査ツール
第五章事後相談体制
第六章症例

厚生労働省のホームページよりダウンロードできるようにした。
(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken07/h7_hajime.html)
結論
軽度発達障害児の早期発見には5歳児健診が有効であり、費用対効果も優れている。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200620014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1)疫学的頻度の提出;発生頻度は10%弱である。
(2)5歳児健診の感度と特異度の算出;感度は66.7%、特異度は85.2%である。
(3)質問票の限界の提示;質問票のみでは軽度発達障害の障害種を特定することは困難であることを示した。

臨床的観点からの成果
(1)診察の構造化とインストラクションDVDの作成;自己研修により一般の小児科医が5歳児健診を担当できるようになった。
(2)気づきと支援のマニュアルの作成;自治体の保健行政に向けた指針と手順などを示した。
(3)費用対効果の試算;5歳児健診による便益費用比は28.7であり、1QALY獲得に必要な費用は38.5万円と非常に安価であることが判明した。
ガイドライン等の開発
5歳児健診等を実施する計画のある自治体にとって具体的な指針を示すものとして作成した。
以下にコンテンツの概略を示す。
-軽度発達障害に対する気づきと支援のマニュアル-
第一章 軽度発達障害をめぐる諸問題
第二章 実証的研究成果
第三章 健康診査・発達相談等の実際
第四章 健康診査ツール
第五章 事後相談体制
第六章 症例集
その他行政的観点からの成果
5件の行政施策等への貢献があった。
(1)文部科学省特別支援教育課への研究協力
(2)国立特殊教育研究所プロジェクト研究「発達障害のある子どもの早期からの総合的支援システムに関する研究」へ資料提供。
(3)文部科学省中央教育審議会幼稚園専門部会への協力。
(4)文部科学省「情動の科学的解明と教育への応用等に関する調査研究会議」への協力
(5)科学技術振興機構 社会技術研究開発センター ミッション研究「日本における子供の認知・行動発達に影響を与える要因の解明」への資料提供。
その他のインパクト
(1)シンポジウムの企画と担当;第53回日本小児保健学会総会(平成18年10月26日-28日、山梨県甲府市)においてシンポジウムを企画、担当した。
(2)講演活動;鳥取県、島根県、三重県、岐阜県、栃木県、福岡県、山口県、京都府、香川県、山梨県、東京都等における小児保健関係の研修会や特別支援教育研修会等において5歳児健診のシステムに関するおける講演活動を行った。 

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
19件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
5件
その他成果(普及・啓発活動)
11件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
小枝達也
軽度発達障害児への対応と小児科医の役割
日本小児科学会誌 , 110 (5) , 639-646  (2006)
原著論文2
林 隆、木戸久美子、中村仁志、他
多動性に着目した幼児行動チェックリストの臨床応用
山口県立大学大学院論集 ,  (7) , 101-107  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-